2025年5月7日
エナリス(東京都千代田区)は4月24日、J-クレジットのモニタリング・報告・検証等の業務の効率化に資する「MRV支援システム」の実運用を2025年度に開始すると発表した。太陽光発電設備を導入する法人などに対してJークレジットの発行業務の効率化を支援する同社オリジナルのシステムで、環境省事業のMRV支援システム運営者の1社として採択されて開始する。
エナリスが運用するMRV支援システム「eneGX MRV’S(エネジーエックス マーブス)」は、ブロックチェーン技術と環境省が主導する実証への参画などを通じて得た知見をもとに構築したものだ。
このMRV支援システムは、「太陽光発電設備の導入(EN-R-002)」を対象としたJ-クレジットの検証に必要な一連の工程業務(測定・報告・検証から管理まで)の効率化を支援する。国のJ-クレジット登録簿システム等と連携しており、創出されたクレジットに関する情報をブロックチェーンに記録し、創出後のJ-クレジット情報の管理も行う。
エナリスは今後、審査機関との協議を経て、「eneGX MRV’S」をエナリスが登録するJ-クレジットプロジェクト「エナリスPV価値創出プロジェクト」に活用していく計画だ。
エナリスは、「eneGX MRV’S」の今後の展開に向けて、さらなる効率化を支援できるシステムへと機能拡充に取り組んでいく。また、国の検討結果を踏まえながら、「太陽光発電設備の導入(EN-R-002)」以外の方法論にも対応するシステムへの拡充を検討していく。将来的なJ-クレジットの事業の展開としては、J-クレジットの創出支援だけでなく販売・買取のサービスも充実させていく計画だ。
J-クレジット制度は、温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度。「省エネ設備の導入」や「再生可能エネルギーの導入」など、温室効果ガス削減・吸収につながるさまざまな取り組みからJ-クレジットを創出することができる。
一方、J-クレジット制度におけるプロジェクト登録からクレジット取引までの各段階における手続は、人手の少ない中小企業や家庭にとっては、コストと時間がかかる上、自らの削減活動ではクレジット発行量が小さいため単独で参加することが難しいという課題がある。
そこで、環境省は2020年から、ブロックチェーンを活用したJ-クレジット創出プロセスのデジタル化について検討を進め、J-クレジット創出に向けた測定・報告等の一連の検証工程業務の効率化を支援、かつJ-クレジット登録簿システムと連携するシステム環境(MRV支援システム)の構築を目指してきた。
2024年度事業では、太陽光発電方法論を対象に、MRV支援システムの実運用に向けて、エナリス、富士通(神奈川県川崎市)、IHI(東京都江東区)、日立製作所(同・千代田区)、日本電気(NEC/東京都港区)の5社が採択され、J-クレジット登録簿システムと連携したMRV支援システム環境の構築に取り組んだ。
また、MRV支援システム運営者としてエナリスのほか、富士通、IHI、日立製作所の4社を採択している。
2023年に東京証券取引所(東京都中央区)がカーボン・クレジット市場を設立、2025年3月には東京都が自治体初のカーボン・クレジット取引システムの運営を開始。さらに2026年度には排出量取引制度(GX-ETS)の開始が予定されるなど、企業が排出するCO2に価格をつけることにより、CO2排出を抑えるように誘導する「カーボンプライシング」の導入が拡大しつつある。こうした流れを受けて、今後特にJ-クレジットの需要が高まると想定されている。
なお、エナリスは、J-クレジット制度における方法論「太陽光設備の導入(EN-R-002)」では、次の条件のすべてを満たす場合にプロジェクト登録をすることができるとして、紹介している。
条件1:太陽光発電設備を設置すること。又は設置済みの太陽光発電設備に対して追加的な設備投資を実施すること
条件2:原則として、太陽光発電設備で発電した電力の全部又は一部を、自家消費すること
条件3:太陽光発電設備で発電した電力が、系統電力等を代替するものであること
【参考】
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2025年5月6日
田中鉄工(佐賀県基山町)は4月21日、佐賀県佐賀市に対し、「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)」の寄付を行ったと発表した。佐賀市は企業版ふるさと納税を活用し、家庭などから発生する使用済み食用油のリサイクルの実施費用に充てる。
同市は2016年12月に、清掃工場を核にごみ焼却由来のCO2を用いる「持続可能な脱炭素・資源循環まちづくりプロジェクト」を開始。食品ロス削減や未利用バイオマスの活用、再エネや未利用エネルギーの普及などを通じて、「廃棄物であったものがエネルギーや資源として価値を生み出しながら循環するまち」を目指している。
家庭系廃食油のリサイクルもこの一環であり、市内に設置された回収BOXは101カ所(2024年4月時点)に及ぶ。廃食油は佐賀市の清掃工場でバイオディーゼル燃料として精製して市内のごみ収集車や市営バスの燃料に活用している。
なお、このプロジェクトでは今後、脱炭素施策に対する市民の行動変容分析・効果測定、家庭系廃食油回収を軸とした脱炭素施策・啓蒙活動などを行う予定だ。
田中鉄工は、地域の家庭や飲食店などから発生した廃食油を、アスファルト合材の製造に使用する重油代替燃料として、その地域の誰もが利用する道路や歩道に還元するスキームを構築。このスキームを官民一体型の取り組み、「Roa(d)cal SDGs Project」として、北海道小樽市や佐賀県多久市など全国各地で展開している。
このほか、気候変動対策では、4月16日、事業構想大学院大学(東京都港区)、茨城県土浦市と、土浦市域において新規事業創出と人材育成を目的とするプロジェクトを開始すると明かした。この取り組みでも、企業版ふるさと納税を活用する。
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