2026年3月18日
野村證券(東京都中央区)と野村キャピタル・インベストメント(同)は3月13日、台湾の再エネ事業者HD Renewable Energy(HDRE)が札幌市で開発する系統用蓄電池プロジェクト(日本・北海道Helios 50MW蓄電所)を対象に、54億円のグリーンプロジェクトボンドの組成を支援したと発表した。
系統用蓄電池事業を裏付けとするグリーンプロジェクトボンドの組成は国内初で、電力市場収益に依存する「マーチャント型」案件を対象とした長期資金調達のモデルケースとなり得る。
系統用蓄電池事業は、太陽光や風力の導入拡大に伴い、需給調整や系統安定化の調整力として重要性が高まっている。
一方で、金融面では、収益が市場価格に連動していることやFITなどの固定収入がない点、収益源が複数市場に分散するといった構造的弱点があると指摘されている。
従来のプロジェクトファイナンス市場では、FIT太陽光など長期固定収入を持つ案件が主流であり、マーチャント型蓄電池は金融機関から「難易度の高い資産クラス」とみなされてきた。今回の案件も、卸電力市場(JEPX)・需給調整市場・容量市場での取引収益のみで成立する完全マーチャント型モデルである。
マーチャント型蓄電池事業には、事業者にとって以下のリスクがあるとされる。
・市場価格変動リスク:JEPX価格・調整力価格・容量市場収入の3要素が収益を左右する。市場制度変更や価格低下が起きると、キャッシュフローが大きく変動する
・長期ファイナンスの難易度:金融機関は通常、長期固定契約や最低収入保証などを求めるため、マーチャント案件はデット調達が困難となる
・蓄電池事業収益モデルの制度変動リスク:日本の系統用蓄電池はまだ市場形成段階で、収益スタッキングの実績不足や市場制度変更といった不確実性が大きい
野村證券と野村キャピタル・インベストメントは今回、収益変動を前提とした資金構造を組み込むことで、ボンド満期20年の長期資金調達を実現した。
格付投資情報センター(R&I/東京都千代田区)は、信用格付およびグリーンボンド格付を付与するとともに、グリーンボンド原則への適合性評価を実施している。
今回の案件は、系統用蓄電池の資金調達に関して次の3点を示唆する。
・マーチャント型でもプロジェクトボンド化が可能
・収益スタッキングを前提としたキャッシュフロー管理が不可欠
・グリーンボンド化による機関投資家資金の活用
今後、数GW規模の系統用蓄電池導入が見込まれる中、市場収益型事業を支える資金調達スキームの一例となる。
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2026年3月17日
産業界・自治体・研究機関などが参画する政策提言組織の一般社団法人 プラチナ構想ネットワーク(東京都港区)は2月18日、再エネの普及拡大に向けた「2050エネルギービジョン」をとりまとめ、公表した。
ビジョンでは、国内資源である再エネを中心としたエネルギー供給構造への転換を掲げ、2050年には国内電力需要の約8割を再エネで賄う構想を提示。再エネ電源の導入拡大を前提に、蓄電池や水素貯蔵などの需給調整技術の拡充も提案しており、再エネ事業者にとって長期的な市場拡大を示唆する内容となっている。
プラチナ構想ネットワークは、電化の進展を前提に2050年のエネルギー需要を再試算した。2050年の電力需要は1999~2092TWhと見込み、2023年の電力需要(862TWh)の約2.3~2.4倍に拡大するとした。一方、化石燃料を含む現在の最終エネルギー需要と比べると、エネルギー効率化により総需要は約30%減少するとの見方を示した。
電源構成については、2050年の電力需要のうち約1636TWh(約8割)を国内の再エネで供給する想定だ。電源別の年間発電量は以下の通りとしている。
・太陽光:728TWh
・風力:640TWh
・水力:126TWh
・地熱:90TWh
・バイオマス:53TWh
残る約2割は、原子力とCCS付き天然ガス火力で補う構成を描く。太陽光では建物設置型や営農型太陽光、風力では洋上風力(着床式・浮体式・EEZ)への期待が大きいと指摘する。
この構想は、日本政府が2025年2月にまとめた中長期エネルギー戦略「エネルギー基本計画(第7次)」と比べても、再エネ導入の水準が高い。
エネルギー基本計画では、将来的な電源構成として再エネの比率を4~5割程度とする方向性が示されている。一方、今回のビジョンは再エネ8割という水準を掲げており、再エネ主体のエネルギーシステムへの転換をより強く打ち出している点が特徴となっている。
また政府計画では、原子力や水素・アンモニア火力なども含めた多様な電源の活用を前提としているのに対し、同ビジョンは国内の再エネを中心としたエネルギー自給の実現を重視する。輸入化石燃料への依存脱却やエネルギー安全保障の強化という観点を強く打ち出している。
再エネ比率が高まると、供給過多による出力制御の増加が課題となる。需給調整では、2033年をターゲットに上げDR(需要増加型デマンドレスポンス)の可能性も検討した。
同ビジョンでは、余剰電力を有効活用するための需給安定化策として、次の技術を挙げている。
・揚水発電
・大規模蓄電池
・デマンドレスポンス(DR)
・水素変換・貯蔵
特に、再エネ余剰電力を水素に変換して貯蔵する仕組みについては、電化が難しい産業分野の高温熱需要への対応にも活用できると指摘する。
同ビジョンでは、技術だけでなく、社会的合意形成や制度整備の重要性についても指摘した。
中でも営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)は、複数省庁にまたがる制度面の課題があることから、社会実装に向けたコンソーシアムを立ち上げる予定だ。再エネ導入拡大に向け、規制緩和や政策提言も進めていく方針としている。
今回のビジョンを策定したプラチナ構想ネットワークは、産業界・自治体・研究機関などが参加する政策提言型のネットワーク組織。同ビジョンは、2025年に同会が立ち上げた「再生可能エネルギー産業イニシアティブ」の活動の一環として策定した。
同イニシアティブには、電力会社や建設会社、メーカー、金融機関など60社以上の企業と複数の自治体が参加している。NTT(東京都千代田区)、住友商事(同)、三井不動産(同・中央区)、清水建設(同)、中部電力(愛知県名古屋市)など幅広い企業が参画し、「需要」「供給」「需給安定化」「コンセンサス」の4分科会で検討を進めてきた。
同ネットワークは今後、営農型太陽光などの実証プロジェクトを通じ、再エネ産業の社会実装を段階的に進めていく方針だ。
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