2026年3月28日
政府は3月24日、大規模送電線・大規模電源の整備の促進による供給力の確保や、電力の卸取引の活性化、太陽電池発電設備の安全性の向上などに関する措置を講じた「電気事業法の一部を改正する法律案」を閣議決定した。現在開会中である第221回国会に提出する予定。
ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化により国際的なエネルギー情勢が変化している。一方、国内ではDXやGXの進展による電力需要の増加が見込まれており、電力の安定供給を確保しエネルギー安全保障を推進することが求められている。
今回の法案は3つの柱で構成される。
1つ目の大規模送電線・大規模電源の整備促進では、経済産業大臣が一般送配電事業者などの地域内送電線などの整備計画や、大規模発電事業者の大規模電源の整備計画を認定し、電力広域的運営推進機関(電力広域機関)が財政投融資などを活用し、整備などに必要な資金の貸付けを行うことを設ける。また、大規模発電事業者が大規模電源を休廃止する際に、一般送配電事業者などと事前に協議を行うことを定める。
2つ目の電気事業の安定的・持続的な発展のための環境整備では、小売電気事業の登録の取消事由として、小売電気事業者が正当な理由がないのに、小売電気事業を一年以上引き続き休止したときなどを追加する。
また、卸電力取引所の多様化を踏まえて、現行の翌日市場(翌日の電力の取引を行う市場)に加えて、今後、安定供給の確保の観点で重要となる中長期市場(翌々日以降の将来の電力の取引を行う市場)や需給調整市場(需給バランスを一致させるために必要な電力(調整力)の取引を行う市場)を開設する各卸電力取引所を経済産業大臣が指定・監督できるものとする。
3つ目の太陽電池発電設備などの安全性の向上では、太陽電池発電設備の設計不備による事故を防止するため、その支持物などについて第三者機関(登録適合性確認機関)による工事前の技術基準への適合性確認の対象とする。
法律案の概要は以下の通り。
1.大規模送電線(地域内送電線・地域間送電線)の整備の促進など
・経済産業大臣が一般送配電事業者などの地域内送電線などの整備計画を認定し、電力広域的運営推進機関(電力広域機関)が整備などに必要な資金の貸付けを行う(財政投融資などを活用)。
・電力広域機関が行っている一般送配電事業者などに対する地域間送電線などの認定計画に基づく整備などに必要な資金の貸付けの原資を拡充し、財政投融資などを活用できるようにする(財政投融資などを活用)。
・広域での電力取引によって生じる資金(値差収益)を国庫納付することとし、電力広域機関への補助を通じた地域間・地域内送電線の整備などに活用する。値差収益は、卸電力取引所において電気を北海道・東京などの供給エリアを越えて売買するときに発生する差額をいう。
2.大規模電源の整備の促進
・経済産業大臣が大規模発電事業者の大規模電源の整備計画を認定し、電力広域機関が整備などに必要な資金の貸付けを行う(財政投融資などを活用)。
・大規模発電事業者が大規模電源を休廃止する際に、一般送配電事業者などと事前に協議を行うことを定める。
1.小売電気事業の事業環境整備
・小売電気事業の適正化のため、小売電気事業者の登録取消事由に一定期間の休止などを追加する。
2. 電力取引の促進
・現行の翌日市場などを開設する短期卸電力取引所に加えて、中長期市場などを開設する中長期卸電力取引所、需給調整市場などを開設する需給調整卸電力取引所について、経済産業大臣の指定などに関する規定を整備する。
1.太陽電池発電設備の設計不備による事故を防止するため、その支持物などについて第三者機関(登録適合性確認機関)による工事前の技術基準への適合性確認の対象とする。これにより強度などの構造の安全性を高める。
2.製品・施工不良など、設置者のみでは原因究明・再発防止などが困難な場合に、製造・輸入販売事業者、工事業者に必要な協力を求める措置を設ける。
この改正法案の提出に先立ち、自民党は3月23日に公式ウェブサイト上で「太陽光発電パネルの飛散により民家を破損するケースや、発電設備の中核であるPCS(パワーコンディショナー)が発火、下草等に引火して延焼を引き起こす等、大きな事故の発生も多数指摘されている」、「出力の小さい設備は設置者が自ら確認することが義務付けられているが、小規模事業者のうち、義務化された構造計画書の提出率は約7割にとどまっている」と指摘し、「大規模太陽光発電事業(メガソーラー)の地域共生・規律強化に向けて法的規制の強化・適正化を求める」と主張している。
なお、太陽光発電設備の「支持物に関する基準」は既に存在しており、経産省の現行技術基準省令・解釈ではJIS C 8955に基づく荷重設計や、架台・基礎・接合部の安全確保が求められている。今後の第三者確認制度でも、こうした既存の国内基準群が中核になる可能性がある。
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2026年3月27日
一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII/東京都中央区)は3月24日、2025年度(補正)として実施する需要家側エネルギーリソースの活用のための環境整備に向けた実証事業(DR補助金)など3事業の募集を開始した。募集締め切りは未定。
対象は以下の3事業。
・業務産業用蓄電システム導入支援事業(対象:PCS合計出力100kW未満の小規模業務産業用蓄電池)
・デマンドリスポンスの拡大に向けたIoT化推進事業
・家庭用蓄電システム導入支援事業
同事業は、DRに活用可能なリソースとしての小規模業務産業用蓄電システム新規導入を対象としたもの。
小規模業務産業用蓄電システムは、以下の要件をすべて満たす蓄電システムであることが求められる。
・事業の実施のために新規で導入される蓄電システム。セル、モジュールなどの一部を更新するものは対象外
・火災予防条例で定める安全基準の対象(20kWhを超える)となる設備
・蓄電池PCSの合計出力が100kW未満の設備
・各種法令などに準拠した設備
・DRに対応可能な設備。なおIoT化関連機器を新たに設置する場合、外部と通信を行うための機器においては「セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度」における★1(レベル1)取得が必須
・高圧以上の需要側(工場・ビルなど)に設置される設備
・リユース蓄電池を用いる場合は、電動車などの駆動用に使用されたモジュールであること
・蓄電システム購入価格と工事費の合計が目標価格以下であること。2025年度目標価格(設備費+工事費・据付費、税抜)11.9万円/kWh(蓄電容量)
・採用予定の蓄電システムのBMSのメーカーは(過去5年間の実績を含め)国際的に受け入れられた基準等に反していないこと、開発供給の適切性が確保されていることを確認できること
・セキュリティ対策として証憑・説明資料を提出できる設備であること
また蓄電池種別ごとに要求事項も別途ある。
実際の補助額は以下のうち最も低い金額が交付される。
・補助金基準額「蓄電容量(kWh)当たり3.75万円」+「評価による補助増額」で算出される金額
・設計費・設備費・工事費の合計金額に補助率(33%)を乗じた金額
・1申請当たりの補助上限金額1500万円
上記のうち「評価による補助増額」については、以下2点を満たせば、それぞれ蓄電容量(kWh)当たりの金額が0.1万円増額される。
・故障や自然災害など有事の際のレジリエンス確保の観点から以下の2点をともに満たしていること
蓄電システムの早期復旧や原因解明が可能な体制が整えられている
蓄電システムに異常が見つかった場合に備えて、代替する電池システムの主要部品(電池セルなど)を迅速に供給できる拠点が整えられている
・採用予定の蓄電システムの製造、加工、販売等の事業を行う者が、廃棄物処理法上の広域認定において蓄電池関連製品での認定を取得していること
DR拡大に向けたIoT化事業は、電力需給の逼迫や再エネの出力制御といった課題に対応するため、需要家の機器をIoT技術で制御し、電力消費パターンを柔軟に変化させる「デマンドレスポンス(DR)」の実証が主な目的。
対象設備は、高圧以上の需要家側に設置されている蓄電池・空調設備・自家発電設備・生産設備など既存リソースをDR対応可能とするための通信設備やセンサー、EMSといったIoT化関連機器。DRアグリゲーターなどと通信を行うための機器は、「セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度(JC-STAR制度)」における★1(レベル1)を取得していることが確認できる設備であることが求められる。
補助率は50%、上限額は2000万円。
一般家庭向けの家庭用蓄電システムの普及拡大とDR活用を目的として実施されたもので、一般家庭が住宅用太陽光発電システムと組み合わせて家庭用蓄電システムを導入し、アグリゲーターと連携してDR信号に応答できるものが対象。
令和6年度補正予算の同事業では、家庭用蓄電システムの機器費・工事費などが補助の対象で、個人が単独で申請するのではなく、アグリゲーターや販売事業者などを通じた申請スキームが採用されている。補助額は初期実効容量kWh当たり3.7万円の定額か、設備費と工事費の合計金額の33%を補助する仕組みだった。
なお同事業は2025年7月2日時点で延べ12,586件(約60億円)に対し補助金を交付したことで予算上限に達し、早期終了している。
現在、各事業の公募説明会(東京会場)のエントリーを受け付けている。日程はいずれも3月31日(エントリー締め切りは30日16時)、時間帯を分けてTKPガーデンシティPREMIUM京橋ANNEXホールで行う。
なお今後は名古屋・大阪・福岡での開催も予定している。
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