2026年8月5日
東京都は7月23日、「次世代再生可能エネルギー技術社会実装推進事業」の2026年度採択事業として、カルコパイライト太陽電池や、「フラクタル型」の太陽光発電設備、バイオガス発電設備に関する3件の実証事業を採択した。
代表事業者はソフトバンク(東京都港区)。同社が筆頭株主であるPXP(神奈川県相模原市)が開発した、超軽量・薄型で曲げられるカルコパイライト太陽電池を、東京都の島しょ部にある通信基地局へ設置する。
強風や塩害にさらされ、かつ通信アクセスに制限のある離島において、発電性能、施工性、耐久性、接着工法の有用性、効率的な保守方法などを検証する。発電した電力は基地局で使用する。
設置場所は、基地局の鉄塔、周辺のフェンス、倉庫の壁面・屋根、地面の計4カ所。設置は東京ガス(東京都港区)が協力し、同社独自の接着工法で設置面に穴を開けずに施工する。実証期間は2027年5月から2028年12月まで(予定)。
カルコパイライト太陽電池は、銅やインジウムなどで構成される化合物半導体を用いた太陽電池。軽量性や柔軟性を生かし、従来型パネルの設置が難しい耐荷重の低い設備、曲面や突起物のある壁面などへの展開が期待されている。
PXP製のカルコパイライト太陽電池についてはこれまでにも当メディアでも紹介したとおり、以下のような取り組みがある。
PXP(神奈川県相模原市)は7月9日、シリーズBラウンドにおいて、これまでに総額15.6億円を調達したと発表した。同社は現在、相模原市内でカルコパイライト太陽電池を年間25MW生産する初の量産工場の建設を進めている。調達した資金を設備投資に充て、2027年度の操業開始を目指す。
また、神奈川県は6月17日、2050年の脱炭素社会実現に資する研究開発プロジェクト3件を採択したと発表した。このうちの1件が、東京ガス(東京都港区)とPXPによる次世代太陽電池の実用化に向けた研究開発である。
東急不動産(東京都渋谷区)は5月26日、人工光型植物工場「テクノファームけいはんな」(京都府木津川市)において、PXP製カルコパイライト太陽電池を建物壁面に設置する国内初の実証実験に取り組むと発表した。
新潟県妙高市では5月1日、カルコパイライト太陽電池を活用した自治体向けPPA事業として国内初の取り組みが始動した。JFEエンジニアリング(東京都千代田区)と、同社が出資する新電力会社・アーバンエナジー(神奈川県横浜市)、東京センチュリー(東京都千代田区)の3社が、妙高市向けに太陽光PPAサービスを提供する。
代表事業者は一般社団法人日本データサイエンス研究所(JDSC/東京都文京区)。
AI・データサイエンスを活用したソリューションを提供するJDSCは、同社の技術をエネルギー分野に応用し、IoTセンサーを用いて「フラクタル型」の太陽光発電設備の性能や冷却効果、耐久性を検証する。空間や景観上の制約がある都市部への再エネ導入拡大と、都市ヒートアイランド緩和の可能性を探る。
具体的には、東京都内のオフィスビル敷地内の駐車場や歩道など、複数の場所にフラクタル型太陽光発電設備を設置。IoTセンサーでデータを収集し、主に以下について検証する。
・パネル同士が影をつくる相互遮光条件下での発電性能
・空間や路面の冷却効果
・パネルやコネクターなどの耐久性
効率的な光合成のため進化してきた植物の枝・葉など、全体と一部分に似た形が繰り返し現れるフラクタル構造の採用は、バイオミミクリーの一種として様々な研究・取り組みが進められているが、太陽光パネルにおいては3次元配置時の集光効率・自己冷却効果の向上、配線(電極)の短縮化などを目指す先行研究がある。
JDSCはこれまでにも、東急不動産(東京都渋谷区)らが運営する営農型太陽光発電の実証施設で実施した共同実証において、営農手法確立に向けた環境や育成データの高度活用などで協業している。
代表事業者は八千代エンジニヤリング(東京都台東区)。紙コップなど、プラスチックラミネート加工により通常の紙リサイクルが難しい「難処理紙」を対象に、亜臨界水処理技術を用いたバイオガス化発電の有効性を検証する。
東京都内の紙類リサイクル施設に、分別せずに処理できる独自の粉砕機と、ハイドロライザーと呼ばれる加水分解装置を導入する予定。主に以下の項目を検証する。
・ハイドロライザー(加水分解装置)の前処理性能(有機物分解率・対応廃棄物種類)
・メタン発酵効率(バイオガス発生量・メタン濃度・発酵安定性)
・発電性能(発電出力・設備利用率)
・残渣・環境(消化液成分・CO2削減量)
亜臨界水処理技術は、高温・高圧状態の水を利用し、有機廃棄物を加水分解によって短時間で低分子化する技術。当メディアでは同技術を活用した資源循環の取り組みを紹介している。
日本郵船(東京都千代田区)は2022年8月、サステイナブルエネルギー開発(宮城県仙台市)に出資し、船上廃棄物をエネルギーに転換し船上で利用することに向け共同検討を開始したと発表した。サステイナブルエネルギー開発は、可燃ごみなどの有機物を亜臨界水処理技術で分解して最終的にバイオ燃料などのグリーンエネルギー製品を生成するISOPシステムを展開する企業。現在、この取り組みは、2025年12月26日付で日本海事協会(ClassNK)より基本設計承認(AiP)を取得し社会実装へと歩を進めている。
東京都の助成事業「次世代再生可能エネルギー技術社会実装推進事業」は、都内を実証フィールドとして、発電性能や耐久性、施工性など、次世代再エネ技術の社会実装に向けた実証実験を支援するもの。助成対象は、太陽光、風力、バイオマス、水力、地熱などを活用した発電システムのうち、研究開発段階を脱し、社会実装に向けた課題解決に取り組む事業。ただし、ペロブスカイト太陽電池を用いる「Airソーラー」は対象外とされる。
事業期間は採択後から2029年3月31日まで。助成限度額は1件あたり1億円で、助成率は対象経費の3分の2以内。2026年度の応募数は5件だった。
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2026年8月4日
電力広域的運営推進機関(OCCTO)は7月21日、容量市場「長期脱炭素電源オークション(応札年度:2026年度)」について、募集要綱案と容量確保契約約款案を公表し、意見募集を開始した。
今回の改定は、第3回オークション(2025年度)の結果や国の審議会での議論を踏まえたもので、長期エネルギー貯蔵システム(LDES)やLNG専焼火力の供給力提供開始期限を延長するほか、水素・アンモニア案件や蓄電池案件の参加要件、洋上風力の取り扱いなどを見直した。
これまでの実施から大きな変更点となるのが、各電源の供給力提供開始期限の延長だ。
供給力提供開始期限は、容量確保契約を締結した事業者が実際に運転を開始し、供給力を提供しなければならない期限を定めたもの。大型設備では建設や調達期間の長期化が進み、制度と実態との間にずれが生じていた。
長期エネルギー貯蔵システム(LDES)は、大型蓄電設備では設計・実証・建設まで長期間を要する案件も多いことを踏まえ、従来の4年から7年へ延長する。
LNG専焼火力は、2024~2025年度の8年から11年へ延長となる。環境アセスメントをすでに完了している、または不要な案件は7年とした。一方、太陽光(5年)、風力・地熱(8年)、水力(12年)、蓄電池(4年)、原子力(17年)の期限は変更しない。
2026年度オークションでは、脱炭素電源500万kW、LNG専焼火力600万kWを募集する。
脱炭素電源種別毎の募集上限は下記の通り。
・脱炭素火力:50万kW
・リチウムイオン蓄電池:40万kW
・非リチウムイオン蓄電池:40万kW
・揚水式水力・LDES:40万kW
・洋上風力:50万kW
・既設原子力の安全対策投資:150万kW
LNG専焼火力は制度開始当初、2023~2025年度の3年間限定で募集する予定だった。しかし、初回オークションで募集量の大半が落札されたことを受け、募集を継続する方針へ転換した。
広域機関の「将来の電力需給シナリオに関する検討会」では2040年の需要増加が見込まれており、LNG専焼火力の継続募集が必要と整理されている。
制度面では、水素・アンモニア案件に関する見直しも行う。
第4回オークションからは、水素社会推進法に基づく計画認定制度との整合を図るため、入札対象を「低炭素水素・アンモニア」に限定する。制度開始当初は市場形成の初期段階であることを踏まえ、「グレー水素・アンモニア」も対象としていたが、今回は対象外となる。
また、燃料サプライチェーンに関する事前審査を導入し、チェックリスト方式で適合性を確認する。さらに、水素・アンモニア、CCS、LNG専焼火力を対象とする案件では、2050年に向けた脱炭素化ロードマップの作成を求めることも明確化した。
洋上風力では、一定条件を満たす第2・第3ラウンドのゼロプレミアム案件について、長期脱炭素電源オークションへの参加を認める。これは、第1ラウンドの公募選定案件がすべて事業者撤退となるなど、洋上風力を取り巻く環境変化が変化したことが要因とみられる。一方で、プレミアム発生の可能性を完全に排除するため、公募占用計画における供給価格を0円/kWhへ変更するとともに、FIP制度の全支援期間にわたりバランシングコスト相当分のFIP交付金の受領を放棄することを条件とした。
蓄電池では、安全保障の観点を踏まえた見直しも実施する。第3回オークションで導入したセル製造国30%制限ルールに代わり、経済安全保障推進法に基づく供給確保計画の認定を受けたメーカー(株式・持分50%超の子会社・孫会社を含む)が製造したセルを使用するリチウムイオン蓄電池を優先的に約定する方針を盛り込んだ。
資本コストについては、応札価格に算入できる資本コスト上限を従来より0.5ポイント引き上げ、4.5%、5.5%、6.5%へ見直す。
LNG専焼火力ではLNG基地の整備の有無に応じた上限価格を設定するほか、一般水力・新設揚水・原子力については上限価格算定倍率を従来の1.5倍から2倍へ引き上げる。
制度適用期間は原則20年間としつつ、一般水力・新設揚水・原子力・LNG専焼火力は最長30年、それ以外の火力電源や蓄電池などは最長40年とする。
OCCTOは今後、8月3日まで意見を募集し、2027年1月に第4回長期脱炭素電源オークションを実施する予定だ。
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