2025年5月21日
三菱重工業(東京都千代田区)は5月14日、関西電力(大阪府大阪市)の姫路第2発電所(兵庫県姫路市)に新設したCO2回収パイロットプラントが本格稼働開始したと発表した。
アミンなどの溶剤を用いて化学的にCO2を吸収液に吸収・分離する「液体アミン型CO2分離・回収システム」のパイロットプラントで、発電所のガスタービンからの排ガスを用いてCO2を回収する技術の研究開発を行う。回収能力は1日約5t 。
三菱重工業は、1990年から関西電力と共同でCO2回収技術の研究開発に取り組んでいる。このプラントでは、三菱重工業が実施する実証試験に対して、関西電力は助言と試験設備の運転に必要となるエネルギーなどの供給を行う。
三菱重工業は、次世代に向けた革新的なCO2回収技術の実証を通じて、CCUS(CO2回収・有効利用・貯留)事業の競争力強化につなげていく。また、環境規制対策といった温室効果ガス排出削減にとどまらない多様な顧客ニーズに、より高度に対応していく。
さらに三菱重工業は、2022年に米国エクソンモービル(ExxonMobil)と提携しており、エクソンモービルと共同開発中の次世代CO2回収技術を、このパイロットプラントで実証し、環境負荷低減とコスト削減に向けた研究開発を加速させる。さらに、三菱重工のデジタルイノベーションブランドである「ΣSynX(シグマシンクス) Supervision」の遠隔監視システムを実装する。
両社は、1991年から南港発電所(大阪府大阪市)内に液体アミン型CO2分離・回収システムのパイロットスケール試験設備(2t-CO2/日 規模)を設置し、排ガス中のCO2を効率的に分離・回収するアミン吸収液やCO2回収プロセスを共同開発してきた。
また、両社は2024年1月、近年火力発電設備の主流になっている、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインドサイクル発電方式に適応したCO2回収プロセスや、さらに高性能なCO2吸収液の開発を目指して、パイロットスケール試験設備(5t-CO2/日 規模)の設置することで合意、建設を進めてきた。
両社が共同開発したアミン吸収液の「KS-1TM」と、それを改良した「KS-21TM」は一般的なアミン吸収液と比べ、CO2の分離に必要なエネルギー消費量を大幅に抑えることができる。2025年5月現在、これらの技術を用いたプラントを18基納入しており、発電所や化学プラントなど、多種多様な分野で活用されている。
三菱重工グループは、2040年のカーボンニュートラル達成を宣言し、エネルギー需要側・供給側双方の脱炭素化に向け戦略的に取り組んでいる。このうちエネルギー供給側の脱炭素戦略である「エナジートランジション」における柱の一つとして、多種多様なCO2排出源と貯留・利活用をつなげるCCUSバリューチェーンの構築を掲げている。
独自のCO2回収技術を活用したCCUS事業を強力に推進するとともに、ソリューションプロバイダーとして温室効果ガス排出削減に地球規模で貢献し、環境保護に寄与するソリューションの開発をさらに進めていく考えだ。
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2025年5月20日
東京電力ホールディングス(東京都千代田区)とNTTアノードエナジー(同・港区)は5月15日、郡馬県嬬恋村で系統用蓄電所「嬬恋蓄電所」が稼働を開始したと発表した。
同発電所は、両社が2023年11月に共同で設立した嬬恋蓄電所合同会社(東京都千代田区)の運用の下、2025年5月15日に商業運転を開始した。出力2MW、容量9.3MWh。開発は、資源エネルギー庁が取り組む2022年度補正「再生可能エネルギー導入拡大に資する分散型エネルギーリソース導入支援事業費補助金」の採択を受けて進められた。
2050年のカーボンニュートラル実現に向け、再エネの導入・活用が進む中、調整力の確保や電力系統の増強対策など、電力システムに関する課題が顕在化している。 こうした状況を受け、両社は、嬬恋に新たな蓄電所を開所した。
今後は同蓄電所の運用を通じて、蓄電池に関する各種データの収集やバランシング技術による余寿命への影響などの検証を進めるとともに、卸電力市場・需給調整市場・容量市場における取引により電力系統の安定化を図る。将来的には、再エネの大量導入を念頭に、電力系統の混雑緩和に資する蓄電池のユースケースの検証やさらなる蓄電所事業の発展を目指す。
東京電力HDは2023年12月から、NTTデータグループ(東京都江東区)、NTTグローバルデータセンター(同・千代田区)のNTTグループ2社とともに、データセンター(DC)の共同開発を開始している。開発第1弾は、千葉県印西白井エリアのIT機器向けDC施設。容量は50MWで、サービス開始は2026年下半期の予定。
東京電力HDとNTTグループは今後も、首都圏を中心に、順次データセンター開発・運用を共同検討していく考えだ。
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