2025年10月9日
東京都は10月3日、東京都キャップ&トレード制度において、毎年度、事業所から提出されたCO2排出量などの情報を、マップやグラフで「見える化」したダッシュボードの公表を開始した。過去からの推移、都内平均値や他事業所との比較などが一目でわかる仕様で、脱炭素化に積極的な事業所が、投資家や金融機関、取引先などから選ばれ、社会経済的な評価をさらに高めることができる仕組みを提供する。
ダッシュボードの主なポイントとして、都内大規模ビルや工場などのCO2排出量や床面積当たりのエネルギー使用量の推移、東京都内の平均値や上位レベルとの比較、建物用途や床面積の大きさなどが類似する事業所との比較、再生可能エネルギーの利用割合、が表示できることをあげている。
ダッシュボードは、東京都キャップ&トレード制度の対象となっている約1200事業所から毎年度提出されている地球温暖化対策計画書のデータを元にしている。概要シートと比較シートで構成され、概要シートでは、マップ上で事業所のCO2排出量など(CO2排出量の経年変化、床面積当たりのエネルギー使用量の推移、再エネ設備の導入状況など)を見ることができる。比較シートでは、特定の事業所について、都内平均値や他事業所の状況と比較することが可能だ。
なお、一次エネルギー原単位、再生可能エネルギーの利用割合、再エネ設備導入状況、環境認証取得状況は、2026年度からの表示項目となる。
東京都では、都内の温室効果ガス排出量の確実な削減を図るため、2010年度から、大規模事業所(既存建築物)に「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度(東京都キャップ&トレード制度)」を施行している。この制度では、CO2排出量の総量削減を義務付けるとともに、排出量取引を活用して他の事業所の削減量(クレジット)などを取得して義務を履行することができる。対象は約1200事業所(年間のエネルギー使用量が原油換算で1500kl以上の事業所)。
この制度では、毎年度、事業所から提出されたデータや取り組み状況を環境局のウェブサイトで公表してきた。今回、公表のあり方を見直し、事業所が省エネ対策などに取り組んできた実績をわかりやすく伝えるため、CO2排出量などの情報を「見える化」して、環境省のウェブサイトで公表を始めた。
脱炭素社会の実現に向けた国内外の動向として、新築建築物の環境性能だけではなく、既存建築物におけるCO2排出量やエネルギー使用量のパフォーマンスにも注目が集まっている。東京都は、今後も、ダッシュボードに関する意見を踏まえ、継続的に改善を図る。
東京都は3月6日に、キャップ&トレード制度の第3計画期間(2020年度~2024年度)の4年度目(2023年度)における削減実績を発表した。2023年度の対象事業所の排出量は合計1132万トンで、基準排出量から31%削減となった。
【参考】
・東京都-都内大規模ビルのCO2排出実績をマップやグラフでわかりやすく「見える化」しました 「東京都キャップ&トレード制度・ダッシュボード」の公表開始
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2025年10月8日
北海道は10月3日、2025年度「省エネルギー・新エネルギー促進大賞」について、省エネルギー部門で3者、新エネルギー部門で2者の受賞者を決定したと発表した。
省エネルギー部門では、総合設備工事会社の池田煖房工業(札幌市)が、寒冷地「ZEB」の実証施設などの取り組みで、新エネルギー部門では、幌加内町バイオマス有効活用コンソーシアムが、そば殻を原料に用いたバイオマス固体燃料の製造実証業で大賞を受賞した。
北海道省エネルギー・新エネルギー促進大賞は、省エネルギーの促進と新エネルギーの開発・導入の促進に関して、顕著な功績のある個人・団体などを対象とした表彰制度で、2007年から実施している。
受賞企業に対しては、認知度向上や販路拡大など、さらなるステップアップに向けて、「表彰企業等プレミアムパッケージ支援事業」として、北海道が持つネットワークや道有施設を活用し、取り組みや商品のPRを支援する。
池田煖房工業(札幌市)は、省エネルギー部門において、「ZEBと省エネ診断で地域と歩むゼロカーボン」の取り組みで大賞を受賞した。同社は、2022年11月に、移転・新築した本社ビルを寒冷地「ZEB」の実証施設とし、再エネを加えた一次エネルギー消費量の削減量104%を達成し「ZEB」認証を取得している。また、この施設は、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の最高評価である5スターに認証されている。
今回の受賞では、寒冷地における「ZEB」の実現だけではなく、エネルギー使用のモニタリングと運用改善により、設計値を大きく上回るエネルギー削減効果を得るなど、運用改善に力を入れていることも高く評価された。このほか、同社では、地域企業への省エネ診断事業を行い、地域のカーボンニュートラルへの取り組みに大きく貢献している。
幌加内町バイオマス有効活用コンソーシアムは、新エネルギー部門において、「そば殻を原料に用いた低コストバイオコークス製造技術の実証事業」で大賞を受賞した。
日本一のそばの生産地である幌加内町で、地域で発生するそば殻からバイオ燃料を製造する技術と、エネルギー地産地消の取り組みが高く評価された。灯油・重油が主体の農業用の暖房エネルギーを転換できれば北海道のCO2削減への効果は大きいと予想している。
バイオコークスは、近畿大学(大阪府東大阪市)の井田 民男教授が開発したバイオマス固体燃料のこと。北海道幌加内町、きたそらち農業協同組合、エア・ウォーター北海道(札幌市)、JFE条鋼(東京都港区)、巴商会(東京都大田区)によるコンソーシアムでは、2023年に北海道の補助金の採択を受けて、2026年度商用化を前提としたバイオコークス実証事業に取り組んでいる。
YKK AP 北海道支社(札幌市)は、既設住宅の煖房消費エネルギー削減に着目した改修用外窓・玄関ドアの開発と普及で、竹中工務店 北海道支店(同)は、北国の環境文化を取り入れたテナントオフィスの設計で、省エネルギー部門の奨励賞を受賞した。
竹中工務店は、オフィスビル「DーLIFEPLACE 札幌」の設計において、千鳥配置にすることで照度の均一化を図ったLED照明、札幌の冷涼な空気を活用した換気システム、札幌市が推進する地域冷暖房システムの活用など、随所に工夫が施されているが評価された。
北海道ワイン(小樽市)は、「地上太陽光×地下ヒートポンプの垂直統合型エネルギー供給 システムによる持続可能なワインづくり」で、新エネルギー部門の奨励賞を受賞した。太陽光発電で得た電力を用い、地中熱ヒートポンプを稼働させ、施設の暖房を行うとともに、発酵タンクの冷却を行うCO2削減効果の高い取り組みであり、他の食品工場などへの波及も期待できることが評価された。
同社では、太陽光発電や地中熱ヒートポンプなどの再エネを積極的に活用し、LED照明の導入によってエネルギー効率を向上させている。直轄農場「鶴沼ワイナリー」ではCO2の排出量測定にも取り組んでいる。また、いずれ広大な敷地の森林管理ができれば、カーボンマイナスも達成できるのでは、と考えている。
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