2026年3月22日
資源エネルギー庁は3月17日、第10回「電力システム改革の検証を踏まえた制度設計ワーキンググループ」を開催し、小売電気事業者に中長期で電力量(kWh)の確保を求める制度について、とりまとめ案を提示した。従来の方向性提示から一歩進み、履行手段や制度運用を前提とした具体的な設計が示された。
とりまとめ案では、確保義務の履行手段や中長期市場との接続、需要算定ルールなどを整理。小売の調達戦略や収益構造に直接影響する制度として、実務レベルでの対応を迫る内容となった。
第9回の会合までは、小売電気事業者に対して「実需給の3年度前に5割、1年度前に7割のkWh確保」を求める枠組みと、その履行を促す措置(追加徴収や指導)を提示する段階にとどまっていた。
第10回では、制度の前提を維持しつつ、実際に制度を動かすための設計が提示された。履行手段としては、当面は「行政措置(B案)」を採用する方向が示された。
B案とは、小売電気事業者が求められるkWhを確保できなかった場合に、電気事業法に基づく指導・勧告(必要に応じて公表)を行い、改善を促す仕組み。未達が継続する場合には、供給能力確保命令の発出も視野に入れる。
当面は採用を見送ったA案は、未達分に応じて容量拠出金の追加徴収を課す経済的措置で、直接的なコスト負担を伴う点でより強い規律となる。これに対し、B案は、行政対応を軸に段階的に是正を促すもので、制度導入初期の負担を抑える設計となる。
今後は、行政裁量の大きさといった課題を踏まえ、透明性と公平性の確保を前提に制度設計の検討を継続する。併せて、小売電気事業者の多様なビジネスモデルへの影響にも配慮する。なお、A案については、本措置の運用状況を見極めつつ、引き続き検討するとした。
需要算定方法については従来から論点となっていたが、今回、恣意性排除と行政コストの観点から「販売実績ベース」を基本とする方向が明確化された。
小売電気事業者に確保を求める量的割合の算出に用いる需要の扱いについては、制度逃れを目的とした恣意的な需要操作を防ぐ必要性が指摘されてきた。このため、実務負担や事業者間の公平性、行政による確認コストなどを踏まえ、
1.国や電力広域的運営推進機関が算定の考え方を示し各事業者が将来需要を見積もる方法
2.直近の販売実績を基に算定する方法
という2つの案が比較検討された。
これまでの議論では、恣意性を排除しやすく行政コストも抑制できることから、販売実績を基にする手法を支持する意見が多数を占めた。一方で、同手法では将来の需要変動を十分に反映できず、需要減少局面では過剰調達、需要増加局面では調達未達が生じる可能性があるとの指摘も出ている。
こうした点を踏まえ、需要は販売実績を基に算定することを基本とし、過剰・過小調達のリスクに対応するための調整措置については、引き続き検討を進める方針とした。
第10回会合では、共同調達についても制度上の位置付けが整理された。小売電気事業者の中には、需要バランシンググループ(BG)を通じて電源調達を行うケースがある実態を考慮し、複数事業者による共同でのkWh調達を容認する方針が明確化された。
具体的には、BGのような枠組みを含め、共同で調達を行う複数の小売電気事業者の需要を合算し、求められるkWhを確保できていれば、グループ全体として供給力確保義務を履行していると評価する。これにより、BG単位での履行評価を制度に組み込む考え方が示された。
今後は、共同調達の実態把握や履行状況の確認手法、二重計上の排除といった技術的課題について、BGの運用実態を踏まえつつ詳細設計を進める。
このほか、供給力の中身に関する論点も明文化された。
再エネ電源で確保したkWhについては、従来から負荷形式や電源種別を問わない方向で議論されてきたが、今回、供給力として算入可能であることが明確化された。一方で、非電気事業者からの調達や小口契約の取り扱いなど、調達見込み量の妥当性をどのように確認するかといった実務面の課題については、引き続き検討する。
また、電力先物の扱いについては、現物を伴わない金融商品であることから供給力としては評価せず、量的な供給力確保はあくまで現物ベースとする原則が示された。ただし、価格安定化への寄与などの側面も踏まえ、具体的な取り扱いは今後の検討課題とされた。
現時点では、2028年度に中長期取引市場での取引開始を想定し、その状況を踏まえ、2029年度中に提出される2030年度供給計画から本措置の運用を開始する方針とした。まずは、量的な供給力確保の状況の確認から着手する。
当面は、2026年度秋頃までに供給計画の様式を見直し、小売電気事業者の供給力確保状況を把握できる体制を整備する。併せて、供給力確保の実態やビジネスモデル、先物取引や共同調達の実態などについて、ヒアリングやアンケートを通じた検証を進め、制度設計に必要な実務論点の具体化を図る。検討の進捗は審議会で随時報告し、議論を深めるとしている。
記事内容へ
2026年3月21日
環境省は3月17日、市場連動型電気料金プランやEVなどを活用した上げDRの実証を実施したと発表した。
再エネ導入の拡大により生じる昼間の余剰電力を有効に活用し、脱炭素につながるライフスタイル転換を促進することを目的とした実証で、自動制御による上げDR効果の安定的な発現や、EV・エコキュートの複数制御による電気代削減効果の向上を確認した。今回の結果を踏まえ、上げDRの社会実装に向けた検討を進める。
この実証事業は、2050年ネットゼロの実現に向けて推進している「デコ活」(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)の一環として、Looop(東京都台東区)、ボストン コンサルティング グループ(同・中央区)とともに実施したもの。
上げDRとは、太陽光発電の増加で電気が余る昼間などに電気の消費を促して需要を増やす取り組みのこと。今回、アプリを通じてDR行動のレコメンドやインセンティブ提供を行う行動変容型DRと、EV・エコキュートを自動制御する機器制御型DRの2つの実証を行った。
行動変容型DRでは、レコメンドを提供したグループにおいて上げDRの傾向が確認された。機器制御型DRでは、市場価格が安い時間帯に自動制御を実施した結果、自動制御による上げDR効果が安定して発現することが確認された。
環境省とLooopが2つの実証内容と結果について報告している。概要は以下の通り。
Looopの市場連動型電気料金プランの契約者に対し、アプリを通じてユーザー特性に応じたDR行動のレコメンドやインセンティブ提供を行い、DR量の定量的評価とユーザーの受容性と行動変容の実態把握を行った。
実証期間中、行動変容型DRに参加した利用者群において、DRが観測された日数について着目すると、レコメンドを提供したグループにおいて上げDRの傾向が確認され、過半数の参加者がDR行動をとったことが確認された。この結果は、レコメンデーションにより継続して行動変容を実施するハードルを低減する効果があることを示唆している。
ユーザーの受容性と行動変容の実態把握では、DR行動の促進要因としては、「稼働時間帯をシフト可能な設備の保有」「家庭内の協力」などが挙げられた。DR行動を実施できなかった理由としては「昼間の外出」「稼働時間帯をシフト可能な設備をあまり保有していない」などが挙げられた。
また、インセンティブを提供したグループでは、推奨されるタスクを参加者に提示し、達成量が多いほどランクが上昇するインセンティブプログラムを提供した。このグループにおけるDR量は、一般的なDRグループとレコメンデーション提供グループよりも少ない結果となった。しかし、アプリログイン頻度、再エネ余剰に対する認知と参加意欲が比較的高かったことから、インセンティブの提供が関心の醸成に寄与し得ることが示唆された。
Looopは今後、個別最適化された行動提案、効果の見える化と次アクション提示、予約運転・自動制御などを組み合わせ、上げDRの安定性・再現性を高める設計が重要だとしている。
・期間:2025年10月30日~同年11月19日
・サンプル数:約9,000世帯(一般的なDRグループ、レコメンデーション提供グループ、インセンティブプログラム提供グループの3群を用意し、それぞれ約3,000世帯を割り当て)
Looopの市場連動型電気料金プランの契約者で、対象のEVとエコキュートを有する需要家を対象に、電気代が安い時間帯にEVプラグインを促すメッセージを送信する「EVレコメンド」と、電気代が安い時間帯にEV充電とエコキュート沸き上げの自動制御を実施。電気削除効果とDR量の変化の検証と、ユーザーの受容性と行動変容の実態把握を行った。
EVとエコキュートの複数機器制御においては、エコキュートでは自宅の太陽光発電余剰電力を優先的に利用する制御ロジック、複数機器で大量に電気を使うことで契約電力(ピーク)を超過しないようにする制御ロジック(ピークカット)を組み込んだ。
市場価格が安い時間帯に自動制御を実施した結果、自動制御による上げDR効果が安定して発現することが確認された。また、EVとエコキュートの複数機器制御とEV単独制御を比較した際に、相対的に電気代削減効果とDRの絶対量が増加することも確認された。
一方で、電気代の安い時間にEV充電を促すレコメンドによる電気代削減効果とDR量の定量的な差は確認されなかった。しかし、レコメンドを参考にする旨の意見も多くみられ、一定の行動変容を促す結果となった。
ユーザーの受容性については、実証期間中、EVの充電制御・エコキュート沸き上げ制御ともに、手動での充電や沸き上げをほとんど使用せず自動制御を利用しており、肯定的な評価も多かったことから、一定の受容性を確認できた。
また、EV制御においては特に追加機器なしで、エコキュート制御においてもHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)と無線通信用の機器を追加することで、多くの需要家が昼の再エネ余剰にあわせた自動制御実証を利用できることを確認した。
・期間:
機器制御型DR(EV制御)2025年10月1日~2026年1月31日
機器制御型DR(エコキュート制御) 2026年11月1日~同年12月25日
・サンプル数:124世帯(内訳)複数機器制御10名(※)、EV単独制御52名(※)、エコキュート単独制御62名
※「EVレコメンド」施策を、EV単独制御の実証参加者には約半数に、複数機器制御の実証参加者には全員に実施
記事内容へ