2026年6月13日
日本の電力市場は、脱炭素社会の実現に向けた大きな転換期を迎えている。2026年3月には再生可能エネルギーの調整力を売買する需給調整市場が「30分単位入札・24時間運用」に移行した。福岡から全国へ展開を加速させるENEFORWARD(エネフォワード)は、次世代系統用蓄電池システム「ENE FORCE(エネフォース)」を軸に、AIと電力が融合する新しい社会インフラの構築に挑む。
代表取締役の簑下祐一氏に系統用蓄電池事業を含むエネルギーの未来像を聞いた
エネフォワードの代表取締役である簑下氏は現在42歳。26歳のころから再生可能エネルギー関連事業に携わってきた。簑下氏の原動力は、日本のエネルギー自立に対する強い危機感と使命感にある。「日本は自国にエネルギーがない。エネルギーこそが国防であり、豊かな国の礎である」という認識のもと、2020年に同社を設立した。
当初は太陽光発電所の開発を中心に手がけていたが、太陽光が持つ「不安定電源」という課題を克服するため、蓄電池併設型へのシフトを早期から模索。需給調整市場の拡大を予見し、2022年頃から系統用蓄電池事業への「全振り」を決断した。同社の経営理念の根底には「信頼持ちはお金持ち」という言葉があり、社会に信頼されるインフラ企業として100億円規模の事業展開を目指している。
エネフォワードは福岡市に本社を置く。九州を拠点としたのは、簑下氏自身が熊本県出身ということに加え、「九州が日本における再生可能エネルギー導入の最先端であり、出力制御などの課題と直接向き合う必要がある」(簑下氏)と考えたためである。
一方で事業の急成長に伴い、2026年には福岡本社を移転し、さらに東京支社を開設した。東京への進出は、100億円を超える規模のプロジェクトを支えるための金融機関との連携強化や、高度な専門人材の確保を目的としている。
エネフォワードの最大の特徴は、用地選定から設計・施工(EPC)、データ分析、資金調達支援、運用・保守(O&M)、メンテナンスまでを自社グループおよび独自のネットワークで完結させる「一気通貫体制」にある。
単なる仲介ではなく、案件の成立可能性を高めるための実効性のあるプレイヤーとの強固なネットワークを構築。「金融商品取引業(二種)を取得し、今後は金融・投資支援にも注力します。多額の電力工事負担金を一時的に肩代わりする『接続権利ファンド』や投資家向けの『インカムファンド』の組成が可能になります」(簑下氏)
すでに系統用蓄電池の契約済み案件は42件に上り、これまでに系統接続済みの案件は九州などを中心に7件。 2026年度内には計20件の連系を予定するなど、業界内でも大きな実績がある。
2026年3月の制度改正により、電力市場は「止まらない運用」が収益を左右する構造へと変化した。入札頻度が激増するため、わずかなシステム停止が大きな機会損失やペナルティに直結するからだ。
エネフォワードは、2026年から2027年初旬を、最も高い単価で稼働できる「ゴールデンタイム」と位置づけている。経済産業省が公開した一次調整力オフライン単価などの追い風もあり、インフラ投資としては異例の「3年以内」の投資回収を目指せる好機が到来していると分析する。
さらに、一定条件を満たせば「特定生産性向上設備等投資促進税制」による即時償却も可能であり、初年度のキャッシュインパクトを最大化できる点も投資家にとっての大きな魅力となっている。
市場制度の変化に対応するために開発されたのが、自社ブランドの系統用蓄電池システム「ENE FORCE(エネフォース)」だ。コンセプトは「止めない。待たせない。」。機械、設備、システムの一部が故障しても全体の機能を維持できるよう、同じ機能を持つ要素を用意し、ペナルティゼロを実現する「冗長設計」が特徴だ。パワーコンディショナ(PCS)を分散配置し、バックアップシステムを標準装備することで、一部の故障が全体の停止に繋がらない設計になっている。
故障時に数週間を要する海外メーカーの課題を解決するため、重要部品を国内に常時在庫。万一の際も48時間以内に現場へ急行する保守体制を完備している。蓄電池本体だけでなく、PCS、EMS、キュービクルまでを一体で管理・保証し、長期20年の延長保証にも対応する。大規模向けの「高圧コンテナ型」から、敷地形状に合わせやすい「高圧キャビネット型」まで、プロジェクト規模に応じた柔軟な提案が可能だという。
同社は、高圧領域での実績を基盤に、今後は「低圧系統用蓄電池」領域への進出も計画している。低圧領域は管理コストが高いものの、よりきめ細やかなアグリゲーションを行うことで、住宅やマンション単位でのエネルギー最適化を狙う。
簑下氏が見据える最終ビジョンは、AIと電力をつなぐ「OS(オペレーティング・システム)」の構築である。生成AIの急速な進化に伴い、爆発的に増加する電力消費を支えるためには、蓄電池による供給・調整力が不可欠となる。「AIは電力を大量に消費するが、同時にAIは電力の需給予測や取引を最適化する。この両者を統合し、自動運転EVのバッテリー管理やライドシェア、データセンター運用までを一つの生態系として結びつけたい」と簑下氏は語る。
エネフォワードは、単なる系統用蓄電池の販売会社ではないと自負している。目指すのは、緻密な市場分析に基づいてインフラとしての安定性と投資としての収益性を両立させ、日本のエネルギー自給率向上に貢献する「未来のエネルギー企業」。2026年の市場激変を好機と捉え、同社が構築しようとする「AI×電力」のプラットフォームは、持続可能な社会を実現するための強力な基盤となる可能性を秘めている。
同社は、高圧領域での実績を基盤に、今後は「低圧系統用蓄電池」領域への進出も計画している。低圧領域は管理コストが高いものの、よりきめ細やかなアグリゲーションを行うことで、住宅やマンション単位でのエネルギー最適化を狙う。
簑下氏が見据える最終ビジョンは、AIと電力をつなぐ「OS(オペレーティング・システム)」の構築である。生成AIの急速な進化に伴い、爆発的に増加する電力消費を支えるためには、蓄電池による供給・調整力が不可欠となる。「AIは電力を大量に消費するが、同時にAIは電力の需給予測や取引を最適化する。この両者を統合し、自動運転EVのバッテリー管理やライドシェア、データセンター運用までを一つの生態系として結びつけたい」と簑下氏は語る。
エネフォワードは、単なる系統用蓄電池の販売会社ではないと自負している。目指すのは、緻密な市場分析に基づいてインフラとしての安定性と投資としての収益性を両立させ、日本のエネルギー自給率向上に貢献する「未来のエネルギー企業」。2026年の市場激変を好機と捉え、同社が構築しようとする「AI×電力」のプラットフォームは、持続可能な社会を実現するための強力な基盤となる可能性を秘めている。
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2026年6月12日
セコム(東京都渋谷区)は6月3日、東芝(神奈川県川崎市)と、再エネの環境価値を取引するバーチャルPPAを締結したと発表した。10月に運転開始予定の屋根置き太陽光発電による環境価値を活用する。セコムグループは2045年までに事業活動で使用する電力を再エネ由来に100%転換する目標を掲げており、今回の取り組みをその達成に向けた調達の一環と位置づける。
今回、東芝がアグリゲーターとして、発電事業者が新設する屋根置き太陽光発電の環境価値をセコムに供給する。対象となる設備は物流倉庫の屋根に設置される太陽光発電で、定格出力はAC換算700kW。発電した再エネ電力のうち、自家消費後の電力に由来する環境価値を、非FIT非化石証書として長期間にわたりセコムへ提供する。
バーチャルPPAは、需要家が敷地外の再エネ発電所から、電力そのものではなく環境価値を仮想的に調達する仕組み。従来の電力契約を継続しながら、地域をまたいで非FIT非化石証書を調達できる点が特徴となる。セコムが調達する非FIT非化石証書は、同社の事業所向け電力に用いられる予定で、使用電力の再エネ比率向上につなげる。
東芝は、対象となる屋根置き太陽光の再エネ電力について、発電量の予測や発電計画の作成・提出を担う。計画と実績の差を調整するインバランス費用も負担し、買い取った再エネ電力は、卸電力市場に売電し環境価値をセコムに供給する。
セコムグループは2045年までに事業活動で使用する電力を再エネ由来に100%転換することを掲げ、RE100に加盟。また、その達成に向けて追加性のある再エネの利用を重視、自社施設の拠点以外からの再エネ調達も積極的に進めてきた。
2023年には豊田通商(愛知県名古屋市)と、警備業界で初めてバーチャルPPAを締結し、2024年3月から新設の太陽光発電所を活用したバーチャルPPAスキームを活用した再エネの利用を開始した。
2025年12月には、コスモエコパワー(東京都品川区)とバーチャルPPAを締結し、追加性のある陸上風力発電によるバーチャルPPAスキームの活用した再エネを導入した。多様な再エネ電源を確保することを狙いとしている。
また、データセンターを運営するグループ会社のアット東京(東京都江東区)では、2024年4月から、東京都内にある自社のデータセンターでの使用電力について、実質再エネの使用を標準仕様とした。さらに、2024年7月から、アット東京 第3センターにおいて、フィジカルPPAにより、実質再エネを使用しつつ、供給される電力の一部を、追加性のある生グリーン電力としている。
セコムグループは、「再生可能エネルギー調達原則」において、RE100などの国際基準に準拠していること、社会全体の再エネ比率向上に貢献すること、地域社会に貢献できる電源を活用すること、生物多様性に配慮し、山林を切り拓く開発は行わないこと、などを掲げている。
追加性を有した再エネとは、社会全体に対して新しい再エネを生み出すこと、新たな再エネ設備に対する投資を促す効果があることを表している。昨今では、需要家が再エネを調達する際の判断基準として、追加性の重要度が高まっている。
セコムは、今後も引き続き新設の再エネ発電所を活用しながら、長期安定的な再エネの利用を拡大しつつ、自社の排出削減のみならず、社会全体の再エネ比率の向上に貢献していく。
セコムグループでは、温室効果ガス排出削減のために再エネ由来のグリーン電力の調達などを進めるとともに、創エネのために自社施設への太陽光発電設備を設置している。2024年度は、日本国内において186,705MWh、海外では6,287MWhの再エネ電力を利用し、計192,992MWhの再エネ電力を利用した。また、自社施設においては235MWhを発電した。現在、セコムの再エネ導入率は100%、グループ全体では65%まで向上している。
セコムグループは、温室効果ガス削減目標(スコープ1+2)として、2045年までに排出ゼロを目指すとともに、その通過点である2030年度までに2018年度比で45%削減することを掲げている。サプライチェーン全体(スコープ3)においても、2050年までに排出ゼロを目指すとともに、2030年度までに2018年度比で40%削減する目標を掲げている。
この温室効果ガス削減目標は、世界の気温上昇抑制に向けた妥当なものであるとして「SBTイニシアチブ」から認められ、2021年に警備業界初となる「SBT」認定を取得している。また、2021年にRE100に加盟している。
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