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2026年5月10日

中部電力のバイオマス発電PPA、2社に導入 年3,085tのCO2削減へ

中部電力ミライズ(愛知県名古屋市)は5月1日、同社のオフサイト型バーチャルPPAサービスを通じ、日本トムソン(東京都港区)とすかいらーくホールディングス(同・武蔵野市)への環境価値の提供を開始した。岐阜県美濃加茂市のバイオマス発電所由来の環境価値を活用し、日本トムソンは年間約2,055t、すかいらーくHDは中部エリア12店舗で年間約1,030tのCO2削減を見込む。

 

日本トムソン、地産地消の環境価値で年間2,000t超のCO2削減へ

ニードルベアリングや直動案内機器を手がける国内大手の日本トムソン(東京都港区)は、美濃加茂バイオマス発電所(岐阜県美濃加茂市)から創出される「環境価値」を17年間にわたり長期調達し、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを加速させる。この取り組みでは、同発電所が地域の未利用間伐材などを燃料に発電した電気の環境価値(非化石証書)を、中部電力ミライズを通じて日本トムソンが調達する。

日本トムソンは今回の契約により、年間約50GWh相当の環境価値を約17年間にわたって安定的に取得する計画だ。これにより、同社グループ全体で年間約2055tのCO2排出削減が可能となる見込み。同社の2022年度実績に対して排出量を約6.4%削減し、使用電力の再エネ化率を約8.1ポイント上げる効果がある。

 

「追加性」ある再エネと森林保全への貢献

日本トムソンが今回、バイオマス発電を選択した背景には、環境負荷低減への強いこだわりがある。同社は経営理念に「社会に貢献する技術開発型企業」を掲げ、単なる排出量削減にとどまらない、社会に新たな再エネ設備を増やす効果を重視した調達を推進している。

燃料として活用される未利用間伐材は、製材に適さない細い木や枝葉など本来は廃棄される予定の木材。これらを燃料チップとして有効活用することにより、森林整備の促進や森林保全に直結するとみている。

日本トムソンは岐阜県内に主要な国内生産拠点を構えており、同県内の資源を活用した「地産地消型」の環境価値利用を実現した点も、地域林業の活性化を後押しする狙いがある。

 

エネルギー・製品両面で推進する脱炭素

日本トムソンは2030年度までにスコープ1・2の温室効果ガス排出量を42%以上削減(2022年度比)し、グループ全体の使用電力の約50%を再エネ化するという目標を掲げている。

同社はエネルギー調達の変革に加え、製品開発においても脱炭素を追求している。同社はすでに、植物由来原料を用いたバイオマス度90%のグリースを封入した直動案内機器などの「エコプロダクツ」を市場投入している。

従来のバイオマス潤滑剤は耐久性が課題とされていたが、同社は合成炭化水素油を基油とすることで、従来品と同等の2万km以上の走行距離を実現し、製品ライフサイクル全体での環境負荷低減を図っている。

今回のバーチャルPPA導入によって、エネルギー源のクリーン化という側面からも環境経営の基盤を強固にする狙いがある。日本トムソンは今後も再生可能エネルギーを軸とした調達と環境配慮型の製品開発によって、地域社会と共生する持続可能な社会の実現を目指す。

 

すかいらーくHD、中部エリアの12店舗に導入

一方、すかいらーくホールディングスは、中部エリアの12店舗に導入した。対象店舗では電力のCO2排出量が実質ゼロとなり、年間約1,030tのCO2削減を見込む。同社は、電気・ガスのCO2排出量を実質ゼロでの店舗運営にも乗り出しており、同社の「環境配慮型店舗」は計13店舗に拡大した。

今回の「美濃加茂バイオマス発電所」を活用したPPAでは、環境価値(非化石証書)を調達し、再エネの普及と、地域の再エネに由来する環境価値の活用を通じた地域社会への貢献を目指す。

 

すかいらーくグループ、2024年からオフサイトPPA導入拡大

すかいらーくは近年、オフサイトPPAの仕組みを活用した再エネ導入を拡大している。

2024年11月に東北エリア84店舗で、2025年4月には関西エリア85店舗で、9月11日からは関東エリア24店舗への導入を開始。さらに12月12日には、CDエナジーダイレクト(東京都中央区)が提供する太陽光発電を活用したオフサイトPPAサービスを関東エリア34店舗に導入した。この取り組みにより、年間約1407MWhの電力が再エネで賄われ、CO2排出量は年間約453t削減できる見込み。

 

2023年にCO2排出量実質ゼロのファレスをオープン

すかいらーくホールディングスは2023年8月、環境配慮モデル店舗として、CO2排出量実質ゼロのファミリーレストラン「ガスト東村山市役所前店」をオープンした。

同店舗では、太陽光発電設備とCO2フリー電力を導入し電力を100%再エネ化。また、カーボンニュートラル都市ガスを導入し、年間約88tのCO2削減を実現する。CO2フリー電力には、CDエナジーダイレクト提供の実質再エネ100%メニューを活用している。

 

2023年10月に運転を開始した「美濃加茂バイオマス発電所」

中部電力(愛知県名古屋市)と三菱HCキャピタル(東京都千代田区)は2021年5月12日、佐合木材(岐阜県美濃加茂市)が設立した「合同会社美濃加茂バイオマス発電所」への出資と「美濃加茂バイオマス発電所」の開発に合意したと発表した。岐阜県美濃加茂市において、主に岐阜県産の未利用間伐材等を燃料とする、発電出力7,100kWの木質専焼のバイオマス発電所を建設。2023年10月に運転を開始し、年間約50GWhを発電している。

 

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2026年5月9日

キリン、スコープ3削減へ約20億円を投資 農作物由来の削減目標も新設

キリンホールディングス(東京都中野区)は4月30日、SBTイニシアチブ(SBTi)による「SBTネットゼロ認定」を再取得し、農作物生産活動由来のGHG排出削減目標である「FLAG目標」を新たに設定したと発表した。

農作物由来の排出量を2030年までに33%削減することを掲げ、スコープ1・3の両面からネットゼロの実現を目指す。スコープ3の削減計画では、2030年時点までに約20億円の投資を見込む。

 

農作物生産活動由来の排出の取り組みを強化

森林・土地利用・農業の頭文字からなる「FLAG」目標は、SBTiが定めた農業・林業・そのほかの土地利用からの科学的根拠に基づくGHG排出削減目標のこと。

キリングループでは、主に酒類事業と飲料・ヘルスサイエンス事業で、多くの商品が農産物を原料としている。新設したFLAG目標では、GHG排出量を2030年に基準年(2019年)比33%削減を目指す。このFLAG目標は、スコープ3に加えスコープ1も対象としており、エネルギー由来の排出への取り組みを継続しつつ、森林・土地利用・農業を対象としたFLAGについても、取り組みを強化していく。

 

新規施策の抽出から実行判断まで迅速化

スコープ3対策では、アルミ缶、PETボトル、麦芽などのサプライチェーン上流での排出削減にサプライヤーと協働で取り組む。これらはコスト増加を伴うため、今まで以上の投資や費用を見込んでいる。財務目標と非財務目標の同時達成を目指すため、施策実行判断の新たな仕組みが求められる。そこで、GHG削減の費用対効果や財務インパクトをシミュレーションし、経営全体で施策の優先順位を明確化するスキームを構築・運用を開始した。現時点で実現可能な施策を試算すると、スコープ3移行計画による財務インパクトは、2030年時点で約20億円を見積もっている。

また、2024年4月から開始した「キリンサプライチェーン環境プログラム」では、進捗をグループCSV委員会や傘下会議体のグループ環境会議で審議・意見交換することで、経営層の関与を強化している。新規施策の抽出から実行判断までを迅速化する仕組みを構築し、財務インパクトを都度確認するプロセスを組み込むことで、持続可能で経済合理性の高い環境経営を推進していく。

 

圃場でバイオ炭の施用などを試験

スコープ1の排出対策としては、同社が保有する圃場において、土壌改良資材であるバイオ炭の施用などのGHG排出削減に向けた取り組みを試験している。

具体的には、長野県上田市のシャトー・メルシャン椀子ヴィンヤードにおいて、農研機構の協力を得て、気候変動の緩和策である炭素貯留効果を評価する共同研究を2024年3月から開始した。

この共同研究では、ヴィンヤードのブドウの剪定残渣(剪定したブドウの枝)などを活用したバイオ炭による炭素貯留効果を評価している。また、このヴィンヤードでは一般的にGHG排出の削減につながるとされている、土壌を耕さずに作物を栽培する農法「不耕起栽培」・カバークロップ・化学肥料の適切な管理などを定常運用している。

カバークロップは、主作物の栽培期間外や畑の空いている部分に被覆植物を栽培する農法をいう。土壌表面を植物で覆うことにより、土壌有機物量の維持や土壌侵食の抑制を通じて、条件によってはGHG排出量の低減につながる可能性があるとされている。

 

社会的価値と経済的利益を両立、CSV経営を推進

キリンホールディングスは、事業を通じて社会課題を解決し、社会的価値と経済的利益を両立させる「CSV(共有価値の創造)」を経営の中心に据えている。「世界のCSV先進企業となる」ことを目指し、2020年に「キリングループ環境ビジョン2050」でバリューチェーン全体のGHG排出量のネットゼロを目指すことを宣言した。さらに、目標達成に向けたロードマップを策定して、2022年1月より運用を開始している。

一方、キリングループにとって重要な農産物を持続可能に生産・調達するために、農産物生産活動由来のGHG排出削減にも取り組むことが重要になってきた。そこで、キリングループの事業ポートフォリオ変革や、外部環境の変化に伴うSBTiガイドラインの改定を踏まえ、2022年7月に世界の食品企業として初めて取得した「SBTネットゼロ認定」を3月に再取得し、FLAG目標を新設した。

 

工業的農法がGHG排出の要因に

農業分野におけるGHG排出量が地球全体の排出量に対して一定規模を占めるため、近年、その対策が求められるようになってきた。農産物の生産方法は品種によってもさまざまだが、中でも大量生産を前提とした、工業的農業と呼ばれる農法がGHG排出の大きな要因となっている。

工業的農業では、一般的に、収量を最大化するために大量の化学肥料を使用し、土壌を反転・攪拌して作物の生育を整える耕起や、単一作物などの大規模栽培を行う。これらの手法は、温室効果の高いN2O(亜酸化窒素)の排出を引き起こし、土壌に蓄積された炭素を大気中へ放出させる原因となる。また、GHG排出だけではなく、土壌や水などの環境にも負の影響を及ぼしている。

 

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