2025年8月25日
関西電力(大阪府大阪市)、BIPROGY(東京都江東区)、川崎重工業(同・港区)の3社は8月22日から、兵庫県姫路市の「姫路第二発電所」にて、水素製造・調達・発電から電力供給までの一連のプロセスで水素をトラッキングし、環境価値を管理する実証を開始する。水素製造のエネルギー源や製造時間・場所など、由来が明らかな電気の提供を目指す。
同実証では、姫路第二発電所エリア内で製造した低炭素水素に加え、福井県で製造された原子力由来の低炭素水素や、山梨県で製造された再エネ由来のグリーン水素に対しても、個別に30分単位でCO2排出量の算定と水素のトラッキングを行う。
その上で、水素混焼によって発電された電力が、低炭素水素やグリーン水素由来であることの識別が可能であるかを検証する。また、ノルウェーの第三者認証機関DNVの支援の下、トラッキング方法が国際規格に則していることを検証する。
3社は、この実証を通じて水素発電における環境価値管理モデル構築を起点とし、低炭素水素の価値向上・利用拡大に向けた取り組みを推進する。さらに、今後の事業化に向けた共同検討も進めることで、水素サプライチェーンの確立につなげる考えだ。
関西電力は6月6日に、姫路第二発電所で、日本初となる事業用大型ガスタービンを活用した水素混焼発電に成功した。 同実証は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のGI基金を受け、水素発電の運転・保守・安全対策など、水素発電の運用技術確立を目指す目的で進められている。
川崎重工業は「水素プラットフォーム」(水素流通を一元管理し、国内外の水素取引を支援するデジタル管理システム)の開発に取り組み、大林組が取り組む「大分県九重町 地熱由来水素利活用事業」において2024年4月より開始した実証試験により、2025年2月に同プラットフォームを用いた算定方法が国際規格に則していることを検証した。2025年中に同プラットフォームの設計・開発を完了させ、2028年頃の商用化を目指す。
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2025年8月24日
住友化学(東京都中央区)は8月19日、JFEエンジニアリング(同・千代田区)および川崎市と共同で、住友化学独自の膜技術を用いたCO2分離回収の実証試験を実施すると発表した。実証場所は、川崎市環境局が管理・運営するごみ焼却処理施設「川崎市浮島処理センター」で、2026年3月に始める。
同実証において、住友化学は、OOYOO(ウーユー/京都府京都市)と共同で開発したCO2分離膜を使用した膜モジュールの組み立て加工や分離プロセスの基礎設計を行う。使用するCO2分離回収システムは、ごみ燃焼排ガスのような10%以下の低濃度のCO2を含む排ガスから低エネルギーで分離回収する。
JFEエンジニアリングは、分離回収プロセスの詳細設計に加え、システム構築に向け、分離回収試験設備の設計・据付・運用を担当する。同社は2024年3月には、川崎市と、廃棄物処理におけるCO2分離回収・利活用システムの共同研究の実施に関する協定を締結。川崎市浮島処理センターを活用し、ごみ焼却による排ガスからCO2を分離回収する技術の検討を進めてきたが、今回その一環として膜分離法を用いた実証を開始することが決まった。
住友化学らによると、中規模排出源であるごみ焼却処理施設や小規模工場への導入に向けては、設備の小型化や低コスト化が課題だという。
住友化学は2022年5月から、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からプロジェクトを受託。OOYOOとともに、共同で分離膜を用いた低圧・低濃度のCO2分離回収の低コスト化技術開発を進め、これまでに実機サイズの分離膜エレメントの製造や、複数のエレメントを組み合わせたモジュール製造に成功している。2025年4月には、JFEエンジニアリングも事業に加わった。
今回のごみ焼却処理施設の排ガスから膜分離法を用いてCO2を回収する試みは、国内初の取り組みであり、各者は世界に先駆けて、安価による低圧・低濃度の CO2分離回収の実現を目指す。
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