2025年7月21日
スタートアップ企業のPXP(神奈川県相模原市)は7月16日、同社が開発を進める次世代太陽電池に関して、2つの事業が神奈川県の2025年度「神奈川県カーボンニュートラル研究開発プロジェクト推進事業」に採択されたと発表した。
1つは、東京ガス(東京都港区)と取り組む耐荷重の低い産業屋根でも設置可能なフィルム型次世代太陽電池の実用化に向けた開発。もう1つは、東プレ(同・中央区)と共同で提案した、低温物流向け次世代太陽電池システムの開発および実証。
東京ガスとは、1m2当たりの重さが1kg以下のフィルム型カルコパイライト太陽電池を、東京ガスの信頼性の高い施工法を組み合わせ、耐荷重が低いスレート屋根に設置する実証を行う。これまで設置が難しいとされてきた低耐重屋根への適用を図ることで、国内の太陽光発電導入量拡大につなげる狙いがあると見られる。
実証では、耐久性・安全性を確認しながら、太陽光パネルの性能を担う重要な要素であるパネル構造と施工法を確立させる。今後は検証結果を踏まえ、2026年度中のサービス化を目指す。
国内では、さまざまな分野でGHG排出量削減の取り組みが進んでいる。中でも、排出量が多い運輸部門の脱炭素化が課題となっている。
今回の東プレとの共同事業は、低温物流に焦点を当てた脱炭素化技術。カルコパイライト太陽電池とペロブスカイト太陽電池を重ねた「タンデム型」太陽電池を、高断熱省エネ低温システムと組み合わせ、低温物流の脱炭素化を加速させる。
この取り組みは2024年度にも行われており、年間を通した発電量の確認とともに、高温や火災、風圧、振動、摩耗などに対する安全性や耐久性などを確認した。205年度は、低温物流車による市街地走行の実証を行い、実環境での効果を確認する予定だ。
両社は、高断熱省エネ低温システム開発をさらに進め、クリーンエネルギー利用率の最大化を図る。
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2025年7月20日
大和ハウス工業(大阪府大阪市)は7月15日、同社グループのフジタ(東京都渋谷区)らが建設を進めていた、リン吸着バイオ炭によるリン回収および炭素貯留技術実証研究の実証研究施設が完成したと発表した。同施設では、木質バイオマスガス化発電の副生炭や下水汚泥炭化物を原料に製造する「リン吸着バイオ炭」を用いて、脱水ろ液からリンを回収し、安定的かつ経済的な下水汚泥資源の肥料利用を図る技術を実証する。
同施設は、フジタ・住友重機械エンバイロメント(東京都品川区)・東北大学・国際農林水産業研究センター・福山市共同研究体が共同開発したもので、国土交通省の2023年度「補正下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」に採択されたことを受けて実現した。
完成した実証施設は、リン回収建屋と炭化装置建屋の2棟で構成される。リン回収建屋では、製造したリン吸着バイオ炭を用いて、下水汚泥の脱水ろ液からリンを回収し、「リン含有バイオ炭」を生産する。炭化装置建屋では、汚泥炭化装置により、脱水汚泥を乾燥・炭化させ、リン吸着バイオ炭の原料としての実用性を検証する。
「リン含有バイオ炭」とは、肥料効果のほか、土壌改良や炭素貯留などの多様な機能を持つ炭のこと。汚泥処分費の縮減や土壌改良材兼肥料として活用することで収益改善などが見込まれる。また、汚泥消化設備を有さない自治体への適用が可能で、地域の未利用資源を使った新たな産業モデル創出も期待できる。
2024年度は、実証施設の整備や各装置の動作確認を実施した。2025年度は、季節変動が装置の性能や製品の品質に与える影響を評価する。また、生産した肥料を農地に適用し、作物の生育やGHG抑制効果なども検証する予定だ。
日本国内では、食料安全保障上の課題として、現在輸入に依存している肥料の国内資源への代替転換が求められている。中でも、下水資源には希少なリンが多く含まれるが、施設整備コストなどを理由に普及拡大には至っていない。
フジタらは今後、同実証研究をきっかけに派生する取り組みを、福山市を含めた備後圏域の7市2町で展開する。将来的には、成功モデルを日本全国や世界に拡大させたい考えだ。
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