2026年8月28日
東急不動産(東京都渋谷区)は8月4日、埼玉県熊谷市において、耕作放棄地が点在していた農地を集約し、麦の圃場として国内最大規模の営農型太陽光発電所を開発・竣工したと発表した。また、埼玉県東松山市において、運営する地域共生型施設「TENOHA東松山」に隣接する水田にて営農型太陽光発電所を開発・竣工した。
両発電所では、藤棚式の架台を採用し農業と発電を両立する。発電した電力は、オフサイトPPAにより同社保有施設へ供給し、売電収入の一部は農業協力金として営農家へ還元する。
麦を生育する圃場として、国内最大規模となる営農型太陽光発電所「リエネソーラーファーム熊谷」は、地域の農業法人である埼玉福興(埼玉県熊谷市)と開発・竣工し、4月1日より運転を開始した。発電出力は、DCが2,625kW、ACが1,990kW。
この発電所が立地する地域には、一部エリアで、すでに耕作放棄地が存在していた。他の農地においても後継者不足による耕作放棄地の将来的な増加が懸念されており、地権者からも土地の効果的な活用を求める声が多く上がっていた。こうした状況を受け、埼玉福興と連携し、耕作放棄地を含む35筆(約4ha)に細かく分散していた農地を一団の土地に集約した。農地を大区画で整形することで、中長期的な農地保全だけでなく、機械作業の容易化による農作業の効率化・生産性向上も同時に実現した。
この発電所では藤棚式を採用し、農業機械の十分な作業空間を確保することで、パネル下部でも麦の適切な生育を実現し、日本の食料自給率の向上に貢献する。また発電した電力は、東急不動産保有のオフィスビルや商業施設にオフサイトPPAを活用して供給する。また、売電収入の一部は埼玉福興に営農協力金として還元を行うほか、地域の自治会費として収めることで、農業経営や地域社会の安定化を後押しする。
さらに、この発電所では、埼玉福興による障がい者や就労困難者の就労支援と農業を融合させた農福連携モデルを組み合わせることで、再エネの導入拡大に加え、地域農業・地域コミュニティの持続可能性向上を目指す。
東急不動産は、東松山市において、2022年に「リエネソーラーファーム東松山」を開業し、営農型太陽光発電の実証実験を開始した。11社とともに共同実証にも取り組んできた。実証を通じて、発電した電力の自社保有施設への供給、売電収入の一部を農業協力金として営農家へ還元、収穫した農作物の近隣施設への提供による地産地消など、エネルギーと食・農業の課題を一体的に解決するモデルを構築してきた。
また、この敷地内にて、地域共生型施設「TENOHA東松山」を運営している。この施設では、カフェやコワーキングスペースのほか、同社の環境先進の取り組みや営農型太陽光発電の説明・展示スペースを備え、多くの視察者の受け入れ拠点として活用してきた。カフェでは近隣農家が収穫した農作物を使ったメニューを提供している。
今回、この施設に隣接する水田に、TERRA(千葉県匝瑳市)と協業し、営農型太陽光発電所「リエネソーラーファームTENOHA東松山太陽光発電所」を開発・竣工し、5月1日より運転を開始した。発電出力はDCが60.6kW、ACが50kW。
この発電所の施工は、営農型太陽光発電の豊富な開発実績を持つTERRAが担った。農作物の生育に適した設備設計により安定的な収量の確保を目指すとともに、通常のパネルと細型のパネルを併用し、農地に到達する日射条件の違いが作物の生育に与える影響を評価することで、今後の事業展開につなげる。また、太陽光パネル下部での営農については水稲の生育実績が豊富な地域の農家が担い、営農を通して採れた農作物は「TENOHA東松山」や近隣の「森林ホテル」に提供する予定。農作物の地産地消を行い地域への還元に取り組む。
この発電所の竣工を機に、5月には同社社員を対象とした田植え体験イベントを開催し、営農型太陽光発電事業や農業への理解を深める取り組みを行った。今後は、この発電所と一体となり、地域共生に向けた取り組みをさらに深めるとともに、営農型太陽光発電事業の発信拠点としての役割を強化していく。
TERRAは、営農型太陽光発電事業を展開する市民エネルギーちば(千葉県匝瑳市)のグループ会社で、営農型太陽光発電に特化して自社発電事業・EPC・コンサルティングなどを手がけている。
世界的にカーボンニュートラルの実現が求められるなか、再エネの導入拡大は社会共通の重要課題となっている。一方で農業分野においても、農業従事者の高齢化や後継者不足を背景とした耕作放棄地の増加が深刻化しており、エネルギー自給率と食料自給率がともに低い日本において、これら2つの課題を同時に解決する手段として「営農型太陽光発電」への注目が集まっている。
そこで、東急不動産は、農地を守りながら再エネを生み出し、地域と調和した持続可能な社会の実現に向けて営農型太陽光事業の拡大を進めている。
東急不動産は、「ReENE(リエネ)」という事業ブランドのもと、開発中事業を含め全国173件、定格容量2,082MW(2026年6月末現在)に及ぶ再生可能エネルギー事業を展開している。また、再エネ発電所や蓄電所の開発・AM・O&Mから電力供給・アグリゲーションまで、グループ一体で事業を推進している。今後の再エネ事業を取り巻く市況変化に迅速かつ戦略的に対応し、グループにおいて不動産事業と並ぶ新たな収益の柱として確立することを目指している。
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2026年8月27日
大阪大学(大阪府吹田市)、東京大学(東京都文京区)、青山学院大学(同・渋谷区)、artience(同・中央区)らの共同研究グループは8月4日、人の目に見えない近赤外光を利用して発電できる無色透明な有機太陽電池の開発に成功したと発表した。
この成果は、建物や自動車の窓ガラスに、景観・視認性・採光性を損なうことなく発電機能を付与する技術につながる。また、近赤外光の一部を吸収して発電に利用できるため、遮熱効果や空調に必要な電力消費の低減も期待される。
柔軟で軽量な有機太陽電池(OSC)は、次世代エネルギー技術として期待される一方、従来は可視光を吸収して発電するため着色して見え、採光性や意匠性が求められる場所への導入が課題となっていた。
研究グループは今回、可視光をほとんど吸収せず、近赤外光のみを吸収する有機半導体の設計技術と、近赤外光エネルギーを電力へ変換する技術を確立。目に見える可視光は透過し、目に見えない近赤外光を発電に利用する「無色透明性」と「発電機能」を両立した新しい有機太陽電池の開発に成功した。
また、開発した無色透明な有機光電変換デバイスにより、近赤外光を用いた脈拍検出にも成功しており、目立たず装着できるヘルスケア用ウェアラブル端末や、環境光で駆動する自己電力供給型センサーへの展開も見込まれるという。
研究グループの大阪大学産業科学研究所 家裕 隆教授は、「近赤外光は可視光に比べてエネルギーが低く、太陽電池に利用することは容易ではない。今回の研究では、精密な分子設計により、無色透明性と発電機能の両立を実現した。この研究成果が、次世代の無色透明な有機太陽電池や、ヘルスケア用ウェアラブルデバイスの開発につながることを期待している」とコメントした。
さらなる太陽電池の導入拡大に向けて、建物や自動車の窓、農業用ハウスなど、これまで十分に利用されてこなかった身近な空間を発電場所として活用することが求められている。
有機半導体材料を発電層に用いる有機太陽電池や、ペロブスカイト太陽電池は、軽い、薄い、曲げられるなどの特徴を有し、これまで設置が難しかった耐荷重性の低い屋根や建物の壁面などへの導入を可能とする次世代太陽電池として期待されている。
シリコン太陽電池やペロブスカイト太陽電池は高い発電性能を持つ一方、特定の波長の光を選択して利用することは容易ではない。これに対し、有機太陽電池は、有機半導体の設計によって吸収する光の波長を制御できる。
ただし、従来の有機太陽電池は主に可視光を吸収するため、透過光や反射光の色のバランスが変化し、着色して見える。採光性や意匠性が求められる場所への導入に向けて、可視光を透過し、近赤外光を利用して発電する、無色透明性と発電機能を両立した有機太陽電池の開発が求められていた。
研究グループはこれまでに、有機半導体材料の構造と電子状態を精密に制御することで、可視光をほとんど吸収せず、近赤外光を選択的に吸収する、無色透明な有機分子の設計と開発に成功している。
今回の研究では、この設計指針をもとに、強い分子内相互作用を誘起する新規ユニットを設計し、これを分子内に組み込むことで、可視光を透過しながら近赤外光を吸収する新しい材料を開発した。この薄膜は、近赤外光を効率よく吸収する一方で、高い可視光透過性を示し、肉眼ではほぼ無色透明に見えることがわかった。
また、開発した分子は、近赤外光を吸収した後に電荷を生じやすく、さらに生じた電荷が効率よく薄膜内を輸送できることを明らかにした。その結果、この分子を発電層に組み込んだ太陽電池は、高い可視光透明性を保ったまま動作し、近赤外光領域で最大20%を超える外部量子効率を示した。外部量子効率は、太陽電池に入射した光子の数に対して、外部回路に電流として取り出された電荷の数の割合をいう。値が高いほど、入射した光を効率よく電気に変換できていることを示す。
今回の研究グループには、大阪大学産業科学研究所(横山創一助教、家裕隆教授)、大阪大学院工学研究科、東京大学物性研究所、青山学院大学理工学部、artienceらが参加している。artienceは、ファインケミカル素材の開発・提案を行う化学メーカーだ。色材・機能材、ポリマー・塗加工、パッケージ、印刷・情報の4つのセグメントで事業を展開し、エネルギー、エレクトロニクス、バイオ・ヘルスケア分野などに領域を広げている。
今回の研究成果は、米国科学誌「Journal of the American Chemical Society」(オンライン)に8月4日付で掲載された。また、この研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の研究開発とSociety 5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE)「温暖化により生産力が著しく低下している施設生産の暑熱対策技術の開発」など、複数の研究費・助成制度から支援を受けて実施された。
早稲田大学は2025年10月、桐蔭横浜大学(神奈川県横浜市)と、太陽光の中に含まれる近赤外光を、電気エネルギーに変換する技術を開発したと発表した。この技術をペロブスカイト太陽電池に組み込むことで、従来の鉛系ペロブスカイト素子では利用できなかった近赤外光の利用が可能になるという。
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