2026年6月18日
自然電力(福岡県福岡市)は6月11日、再エネアグリゲーション事業を本格的に強化すると発表した。国内ですでに稼働している非FIT電源やFIP電源、FITの買取期間を終えた卒FIT電源、FIP制度への移行を検討している電源オーナーから電気を固定価格で買い取り、グローバル大手企業や脱炭素化を推進する日系大手企業へのPPAを加速させる取り組みを行う。業務提携なども活用し、取り扱い容量の目標を、2030年度までに500MW、2035年に累計1GW規模とする。
日本の再エネ市場は、政府がFIP制度普及を後押しし、企業はRE100、CDPなどの国際イニシアティブへ対応するため再エネ調達ニーズが急増している。その一方で、全国に分散する多様な電源と需要家をつなぐ仕組みが整備されておらず、太陽光発電所オーナーがFIT制度の調達期間満了後やFIP制度への移行を検討する際には、売電先の確保に加え、発電量予測やインバランスへの対応、非化石証書の管理など、さまざまな実務が必要となる。
こうした状況を受け、同社は、2021年12月より展開してきた再エネアグリゲーション・サービスの知見を生かし、それぞれの電源オーナーの事業フェーズに合わせたソリューションの提供を本格的に強化するという。
同事業は、オーナーは発電所(アセット)をそのまま保有していてもらい、そこから生まれる電気と環境価値を、自然電力が固定価格で買い取る形をとる。電源の特性や事業計画に合わせサポートする。たとえば、バーチャルPPAなどの仕組みや、蓄電池の追加設置、設備のバリューアップ(リパワリング)、さらにはFIP制度や非FITにおける煩雑な需給管理・証書管理のワンストップ代行など、柔軟なソリューションを一元的に提供する。
対象は太陽光、風力、バイオマスなど幅広く、沖縄エリアを除く全国の電源に対応する。自社開発か他社電源かによる格差はなく、あくまでオーナーファーストで収益の最大化を目指す。
同社は、GoogleやMicrosoftをはじめとする世界的大手企業に対し、バーチャルPPAを通じて累計100MWを超える電力を供給してきた実績がある。グローバル水準の高度な契約ノウハウに加え、再エネの開発から資産管理、運営保守、エネルギーマネジメントまで、サプライチェーンの全機能を一元的に保有しているのが強みだ。
これらの基盤を駆使し、国内外の巨大需要家や小売電気事業者、電力市場などの中から各案件に最も適した売却ルートを厳選。発電所オーナーが持つアセットの資産価値を極限まで高めていく。
日本の再エネ市場はFIT制度が終了し、FIP制度や非FITなど完全な市場競争へ移行する中、他社でもこうした移行を強力に後押しするサービスを展開している。
FUSOグループのRE100電力(東京都中央区)は4月17日、四国電力管内と東北電力管内のメガソーラー発電事業者に対し、蓄電池の導入設計から一時調整市場への参入、売電戦略の構築、電力需給を統合的に管理するアグリゲーションなどの支援サービスを開始すると発表した。
同サービスでは「メガソーラー × 系統用蓄電池 × 一次調整市場」を組み合わせ、2026年の出力制御ルール変更を見据えた新たな収益モデルとして、発電事業者と共同で取り組みを展開していく。RE100電力は、たとえば、FIT制度で運用していたメガソーラーをFIP制度へ転用し、さらに系統用蓄電池(出力約1.99MW、容量約8MWh)を組み合わせて運用した場合、九州エリアにおいてはFIPと一次調整市場を活用することで、「20年間の累計売上が従来の約9.4億円から約21.7億円に増加する」と試算する。
今回の取り組みでは、FIP制度で運用するメガソーラーに系統用蓄電池を組み合わせることで、出力制御時の余剰電力の有効活用や市場価格に応じた売電最適化を図るとともに、一次調整市場への参入による新たな収益機会の創出を目指す。単なる設備導入にとどまらず、市場環境を前提とした運用設計により、発電事業の価値最大化を実現する。発電事業者とともに次世代型の再エネ運用を推進していく。
また、需要家側の企業が併設型蓄電池運用により、自社運営のメガーソーラーをFIP移行などに対応する事例では、大阪ガス(大阪府大阪市)の100%子会社のDaigasエナジー(同)が保有・運営する鹿児島県鹿屋市の「鹿屋太陽光発電所」で、再エネ併設型蓄電池(約2MW/約6MWh)を設置する取り組みなど。同事業は12月に運用を開始する。
同発電所は今後、FIT制度からFIP制度への移行を予定しており、発電および蓄電池からの放電による電力は全量を大阪ガスが買い取る計画。さらに、蓄電池を活用して需給調整市場への参入も見据え、系統安定化への貢献と収益機会の拡大につなげる。
記事内容へ
2026年6月17日
社会課題の解決に取り組む産官学連携組織の一般社団法人プラチナ構想ネットワーク(東京都千代田区)は6月8日、「望ましい営農型太陽光発電」の社会実装に向けた政策提言をとりまとめ公表した。
この提言では、営農型太陽光発電をめぐる制度見直しを踏まえ、営農型太陽光発電を農村地域における再エネの中核的な実装モデルとして位置付けることを求めている。そのために必要な政策措置を提案している。
農林水産省は4月に開催した有識者会議で、営農型太陽光発電の制度見直し案を提示した。この見直しでは、「望ましい営農型太陽光発電」の姿を明確に定義し、営農の継続を大前提としつつ、発電はあくまで付加的な位置付けとする考え方を打ち出している。不適切な案件への厳格な対応を求める一方で、営農と発電が真に両立し、地域活性化に資する取り組みについては推進する方向性を示している。
今回の提言では、有識者会議の議論を踏まえつつ、営農型太陽光発電を農業・農村・地域エネルギー政策を結ぶ前向きな社会実装の基盤と位置付けることを求めた。営農型太陽光発電は、農地において農業と再エネのどちらかを選ぶものではなく、農地の価値を高め、農地利用を拡大しながら農業経営を支え、地域に再エネを供給し、食料安全保障とエネルギー安全保障を同時に強化する仕組みだとした。
不適切案件を排除しつつ、農業者の所得向上、地域のエネルギー自給、遊休農地の再利用、農業の電化・脱炭素化に資する良質な案件については積極的に推進する制度として実装することにより、営農型太陽光発電は、日本の農村の未来を拓く新しい基盤となり得ると考えている。そのために必要な政策措置として、8つを提言している。
概要は以下の通り。
国は「望ましい営農型太陽光発電」の基準を明確化するだけでなく、その基準を満たす案件を積極的に推進する制度を整備すべきである。望ましい案件として、「地域計画において10年後の農業を担う者として位置づけられている生産者とその生産者が営農する農地」など、4つの基準を満たす場合において、農地一時転用許可や設備整備計画認定の予見可能性を高めるとともに、自治体の離農対策・耕作放棄地対策・温対法・地域脱炭素計画などとも連動させるべきである。具体的には、この基準を満たす設備で発電された電気を自治体関連施設で優先的に活用するなどの施策の検討を求める。
営農型太陽光発電の技術では、可動式架台、垂直型設備、細型モジュール、透過型モジュール、ペロブスカイト太陽電池など、従来の遮光率のみでは適切に評価しにくい技術も登場している。市町村が作成する農山漁村再生可能エネルギー法に基づく基本計画でこうした技術革新を事前に想定した運用をすることは困難と考えられることから、対象圃場における単収8割要件と連動し、日射量シミュレーションなどを踏まえた対象圃場における日射量減少率などの新たな指標を導入し、この考え方を国の基本方針の中で明確に位置付け、技術革新を阻害しない運用とすることが必要である。
地域農業は多様であり、特定品目に偏った運用は地域の創意工夫を損ない、営農型太陽光発電の可能性を狭めるおそれがある。単に「何を栽培するか」ではなく、「その作物が地域農業と地域エネルギーにどのような価値をもたらすか」を評価することが必要である。
したがって、品目の可否は、品目名だけで機械的に判断するのではなく、地域での栽培実績、販売ルート、収益性、農業所得への寄与、地域農業政策との整合性、加工・貯蔵・流通との連携可能性を総合的に評価すべきである。特に、乾燥や冷蔵などの電力需要を伴う作物・経営体については、営農型太陽光発電による電力供給と組み合わせることで、農業経営の安定化と脱炭素化を同時に進めることができる。
営農型太陽光発電を通じて農業者がエネルギーコストを抑制できれば、農業経営の安定性は高まる。利益還元を「金銭の移転」だけでなく、「農業経営の強靭化」として捉えることが重要である。
発電事業から営農者への利益還元について、単なる地代や協力金に限定されるべきではない。重要なのは、その還元が農業経営の強化、地域農業の維持、農地の価値向上に結びつくこと。具体的には、発電収益の一部を、農業機械やハウス、鳥獣害対策、地域の共同利用施設などに充てることなどが考えられる。また、農業用電力としての自家消費や低廉供給を、営農型太陽光発電事業からの利益還元の一形態として明確に評価すべきである。
営農型太陽光発電は、農業の電化・脱炭素化・エネルギー自給を支える政策手段として明確に位置付けるべきである。特に、農業機械の自動化、農業用ヒートポンプ、電動農機、灌水ポンプ、畜舎・園芸施設、ライスセンター、冷蔵・冷凍施設、加工施設などと組み合わせた案件、また、太陽光発電で生み出されるタイミングと消費されるタイミングのズレを解消するための蓄電池システムについては、重点的な支援対象とすべきである。こうした技術開発への支援も必要である。食料安全保障とエネルギー安全保障を同時に強化する観点からも、農業用電力としての活用を制度上高く評価する必要がある。
新たな制度では、農山漁村再生可能エネルギー法に基づく基本計画の作成や設備整備計画の認定において、市町村の役割が重要になる。しかし、多くの市町村では、営農型太陽光発電に関する技術的知見、作物別の栽培影響、発電設備の構造、安全性、金融・撤去費用、電力契約、地域合意の進め方に関する専門人材が不足している。制度上、市町村の役割を重くするだけでは、地域によって審査の質やスピードに大きな差が生じてしまう。また、市町村において農山漁村再生可能エネルギー法に基づく基本計画が作成されなければ、地域の農業の特徴・特色を活かした営農型太陽光発電事業ができないことになるため、市町村による迅速な計画策定・整備も不可欠である。
したがって、国は全国共通の審査票、協議会運営マニュアル、遮光率・日射量の計算方法、地域計画における協議に際してのガイドラインやマニュアル、地域説明資料のひな形などを整備すべきである。併せて、都道府県単位で営農型太陽光発電の相談窓口または支援センターを設置し、市町村、農業委員会、農業者、事業者に対して技術的助言を行う体制を整えるべきである。
営農型太陽光発電の制度運用を高度化するには、データに基づく評価が必要であり、また、データに基づく制度運用が、営農型太陽光発電への社会的信頼を高める土台となる。
国は、作物別、地域別、設備形式別の営農型太陽光発電データベースを整備すべきである。また、都道府県の農業試験場、大学、農研機構、民間事業者による実証研究を広く支援し、稲・麦・大豆以外の地域作物、条件不利地での営農、可動式・垂直型・透過型・ペロブスカイトなどの新技術、農業用電力としての自家消費モデルについて科学的知見を蓄積すべきである。
新たな基準を導入する場合、すでに事業化に着手している事業について、その予見可能性を損なわない移行措置が必要である。今後は国の基本方針に加えて市町村の基本計画に沿った形での事業化が求められることから、発電事業を計画する側にはそれに適応する準備期間も必要となる。これらを踏まえ、最低でも農山漁村再生可能エネルギー法に関する省令改正から一時転用許可の要件化までは、最低でも2年以上の移行期間を確保するべきである。
プラチナ構想ネットワークは、持続可能な地域社会の実現に向けて、理念の形成から普及活動、人財育成から社会実装に至る活動を行っている産官学連携組織だ。2月に、再エネの普及拡大に向けた「2050エネルギービジョン」をとりまとめ、公表している。
今回の提言は、「プラチナ再生可能エネルギー産業イニシアティブ」の社会実装活動の第1弾として、4月に立ち上げた「営農型太陽光発電社会実装推進コンソーシアム」の一環として、取りまとめた。このコンソーシアムは、千葉エコ・エネルギー(千葉県千葉市)がリーダーを務め、2026年5月現在、コアメンバーを含め法人33社、自治体9団体で構成されている。営農型太陽光発電の健全な普及拡大を目指し、農業者に加えて農業機械メーカー・エネルギー・金融・流通・大学・研究機関・自治体などが協働し、地域ごとの最適解を導く「横断型プラットフォーム」として活動していく。
なお、自然エネルギー財団(東京都港区)も3月5日、農林水産省が進める営農型太陽光発電の新たな規制強化の動きに対し、柔軟な制度運用を求める提言を発表している。
記事内容へ