2026年8月23日
九州電力(福岡県福岡市)は、インフォメティス(東京都港区)と共同で、ヒートポンプ給湯機「エコキュート」を対象とした家庭向けデマンドレスポンス(DR)実証を9月1日から開始すると発表した。
この実証では、顧客の日常的な給湯利用に支障がない範囲で、エコキュートの運転時間を九州電力が遠隔で制御する。早朝に行われることが多いエコキュートの沸き上げを、太陽光発電が多く稼働する昼間にシフトすることで再エネ有効活用の可能性を検証する。
この家庭向けDR実証は、遠隔制御が可能なパナソニック製とダイキン工業製エコキュートを対象に実施する。実証期間は9月1日~10月31日。
実証パートナーとして参画するインフォメティスは、独自のAI電力データ解析技術を有する。この実証では、エネルギー需給最適化プラットフォーム「BridgeLAB DR」を活用し、九州電力の制御指令に基づき家庭に設置されたエコキュートを遠隔制御し、再エネの余剰発電が発生しやすい時間帯に電力需要を創出する「上げDR」の実現に貢献する。
九州電力は、今回の実証開始に先立ち、制御対象の遠隔制御が可能なパナソニック製とダイキン工業製エコキュートを持ち、実証に協力するモニターの募集を8月3日から開始した。
モニターは、日常的な給湯利用に支障がない範囲での、九州電力によるエコキュートの遠隔制御(沸き上げ時間のシフト)に協力する。実証終了後に、謝礼(5,000円相当のデジタルギフト等)を進呈する。参加条件には以下が挙げられている。
・この実証における制御対象機器が設置されていること
・保有するエコキュートのメーカーが提供する会員サイト(CLUB PanasonicまたはCLUB DAIKIN)の会員であること
・この実証における制御対象機器が設置されている需要場所にて、九州電力と家庭向けの電気料金プランを契約していること
・この実証における制御対象機器が設置されている需要場所にて、蓄電池などの設備(蓄電池やV2H機能を有する設備)が設置されていないこと
・実証規約に同意すること
留意事項として、実証によるエコキュートの運転制御の結果、実証モニターの顧客の電気料金が増加する可能性がある。また、標準的に昼間に沸き上げを行う「おひさまエコキュート」については、この実証の制御対象外となる。
九州電力は5月に、エネルギー利用に関する最適なソリューションを包括的に提供する新ブランド「Enebee(エネビー)」を立ち上げた。そのラインナップの一つとして家庭向けDRサービスの検討を進めている。今回の実証を通じて得られる知見を活用しながら、顧客に新たな価値を感じてもらえるサービスの開発に取り組んでいく。
九州エリアは、全国でも再エネの導入が進展している一方で、その出力制御についても他エリアと比べて多く発生しており、再エネのさらなる有効活用に向けた新たな需給調整手法が求められている。その有効な手段の一つが、家庭内にあるエコキュート、蓄電池、電気自動車(EV)、空調機器などの分散型エネルギーリソースを活用した機器制御DRだ。中でもエコキュートは、生活者の利便性を大きく損なうことなく電力使用時間を調整しやすい機器として、再エネの有効活用に向けた重要なリソースとして期待されている。
これまでも、東京電力エナジーパートナー(東京都中央区)などが家庭用エコキュートを対象としたDRの実証実験を実施している。また、環境省は3月、行動変容型・機器制御型の上げDR実証を実施し、EV・エコキュートの複数制御による電気代削減効果の向上を確認したことを報告している。
インフォメティスは、独自のAI電力データ解析技術を核として、家庭における時間毎の総消費電力データから、消費の内訳を分離・分析する技術を有している。また、DR支援サービスとして、分散型エネルギーリソースを統合制御するプラットフォーム「BridgeLAB DR」を展開している。
インフォメティスはTIS(東京都新宿区)とともに、2024年より中国電力(広島県広島市)が取り組む、エコキュートを活用した家庭向けDRの実証実験を支援してきた。また、同社は4月、中国電力が提供を開始する家庭向けDRサービスに、「BridgeLAB DR」が採用され、商用サービスとして提供を開始したことを報告している。この取り組みで構築された仕組みは、他電力会社・小売電気事業者への横展開を見込んでいる。また、今後、エコキュートに加え、蓄電池・EV・空調機器など制御対象デバイスを拡大し、エネルギー機器を横断的に制御するプラットフォーム事業としての成長を加速していくとしている。
同社は6月、中国電力との協業に続き、関西電力(大阪府大阪市)との技術協業を開始したことを発表している。この協業では、保有するAI電力データ解析技術と需要家側における高度な予測・分析技術に関する知見を関西電力に提供し、次世代のエネルギーマネジメントシステム構築に向けた検討を進める。
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2026年8月22日
環境省は8月3日、2026年度「コスト競争力強化を図る再エネ等由来水素サプライチェーンモデル構築・実証事業」の2次公募を開始した。受付期間は8月28日15時(必着)まで。
同事業は、需要増加に対応したスケールアップや貯蔵・輸送の効率化によってコスト低減を図るとともに、再エネなどの地域資源から水素を製造し、貯蔵・輸送・利用まで一貫した地域水素サプライチェーンモデルの構築に向けた実証を行うもの。
今回の2次公募では、水素大動脈構想の具体化も見据え、実証事業を「地域間連携型」、「地域需要拡大型」、「拠点需給連携型」の3モデルに類型化。モデルごとの特性に応じた実証を募集する。
2次公募は、以下のA~Cモデルのいずれかに該当し、かつ共通要件を満たす事業を実施する事業者を対象とする。
「(A)地域間連携型モデル」は、再エネの供給ポテンシャルが高い地域と水素需要の高い地域を結び、複数地域の連携による需給最適化や効率的な水素供給を実証するもの。
「(B)地域需要拡大型モデル」は、民生部門をはじめとした地域での水素需要の創出・拡大と、複数需要家への効率的な供給方法の有効性や事業性を検証する。
「(C)拠点需給連携型モデル」は、既存の水素供給設備や関連インフラを活用し、供給拠点と需要拠点間の輸送・供給の最適化を図る実証だ。
応募できるのは民間企業・地方公共団体・団体などで、3モデル共通で以下の要件をすべて満たすことが求められる。
・国内における実証事業であること
・実証対象の技術・システムが開発済みで、導入実証が可能な成熟度にあること
・製造、貯蔵、輸送、供給、利用まで一貫した水素サプライチェーンの低コスト化に資する実証であること
・需要増加に伴うスケールアップや貯蔵・輸送効率の最適化など、コスト削減に向けた工夫が講じられていること
・事業開始時点で実証地域がおおむね定まっており、当該地域の自治体との連携について合意が得られていること
・水素の製造・供給において、再エネなどの地域資源を活用すること
・高いCO2削減効果や他地域への波及効果が見込まれること
経費は、実証に必要な人件費や外注費、設備利用費などに加え、一定の管理費が対象となる。
採択初年度の予算上限は、「(A)地域間連携型」と「(B)地域需要拡大型」がそれぞれ4億円。「(C)拠点需給連携型」は既存の水素供給設備や関連インフラを活用する実証を想定していることから、予算上限を1億円となっている。事業期間は原則4年度以内で、毎年度、中間評価を実施し、事業継続の可否を審査する。
2026年度の1次公募ではスパークス・グリーンエナジー&テクノロジー(東京都港区)が採択された。事業名は「北海道を世界の水素アイランドへ、輸送貯蔵一体型のマルチ圧力帯水素供給モデル実証事業」。実証では輸送と貯蔵を一体化したモデルを構築し、複数の圧力帯に対応した供給システムを検証する。
2025年度は、「コスト競争力強化を図る再エネ等由来水素サプライチェーンモデル構築・実証事業」と本格着手前に多角的な調査・分析を行う同FS事業」で、それぞれ2件・合計4件の事業を採択した。
実証事業に採択されたのは、愛知県庁の「愛知県知多市における低炭素水素モデルタウン実証事業」と山口県産業技術センター(山口県宇部市)の「副生・再エネ水素による低コスト集中型(配管活用)/分散型サプライチェーン実証」の2事業。
| 実証事業/事業実施者 | 共同事業者(順不同) | 事業名 |
|---|---|---|
| 愛知県 | 日本環境技研 知多市役所 知多髙圧ガス 東亞合成 明治電機工業 三菱HCキャピタル リンナイ 大林組 コベルコ建機 宮本工業所 土谷製作所 |
愛知県知多市における低炭素水素モデルタウン実証事業 |
| 山口県産業技術センター | トクヤマ 長州産業 NFデバイステクノロジー テクノバ 山口県 |
副生・再エネ水素による低コスト集中型(配管活用)/分散型サプライチェーン実証 |
愛知県の低炭素モデルタウン実証は、11企業などとともに取り組んだ。2024年度FS事業に採択され、知多市の「知多水素ステーション」周辺エリアをモデルケースとし、商用車など運輸部門に加えて、燃料電池・給湯器・ボイラーなど業務・家庭部門における地域での新たな水素需要の創出可能性と、水素ステーションを起点として低炭素水素を地域に供給するシステムの実現可能性を調査した。
低炭素水素については、オンサイトで太陽光発電を用いた水電解装置により製造する水素など、幅広い調達可能性を検討。既存インフラである知多水素ステーションと太陽光発電や地域の廃棄物発電・FIT切れ再エネ発電などの電力、水素の新型輸送容器、将来的な海外水素などの活用によりサプライチェーンの低コスト化を掲げた。
山口県産業技術センターの実証事業は、トクヤマ(山口県周南市)、長州産業(同・山陽小野田市)、山口県などとともに、副生水素による集中型サプライチェーンと、グリーン水素による分散型サプライチェーンを目指すもの。
具体的には、苛性ソーダ工場の副生水素を水素配管により商業施設へ輸送し冷温水機で利用することや、再エネ水素をガスボンベ配送網で輸送しボイラーなどで利用することなどによる、コスト競争力を図る水素供給サプライチェーン構築に向けた実証を実施している。
長州産業は、太陽光・蓄電池を主力事業とし、再エネを利用したオンサイト型水素ステーション、燃料電池発電機などの水素応用システムの製造にも携わっている。
FS事業では、日本環境技研(東京都文京区)らによる愛媛県今治市における水素サプライチェーン構築に関する調査と、一般社団法人FCyFINE PLUS(山梨県甲府市)らによる内陸地域におけるグリーン水素の普及に向けた調査が採択された。
FCyFINE PLUSは、山梨が起点となり、水素・燃料電池が地域社会に溶け込むモデルを実現する活動に取り組むため、2021年に設立された。約30団体・個人が会員として、山梨県、山梨大学、やまなし産業支援機構がアドバイザーとして参画している。
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