2025年9月14日
三井住友建設(東京都中央区)は9月9日、中国電力(広島県広島市)および中電技術コンサルタント(同)と、「浮体式洋上太陽光発電システムの研究開発」を共同提案し、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業に採択されたと発表した。波浪の進入がある海域に設置し、同システムの性能を検証する。
三井住友建設は、これまでも水上太陽光発電開発を推進し、ため池などで8件の運用実績がある。
今回のモデルは、海上に設置可能な仕様としたもので、太陽光パネルの出力は約50kW。国内初の取り組みとして、波浪が進入する広島県大崎上島の近海に設置し、波風・潮位変動・塩害などに対して安全かつ安定した発電が可能であることを確認するとともに、事業性を評価する。
事業期間は、2025年度下期から2028年度末までで、今後は浮体式洋上太陽光発電システムの設計などの研究開発を進めた上で、2027年度上期に洋上設置を終える予定。
なお、三井住友建設は、東京湾で同発電システムの実証を行っており、洋上での波浪に対する浮体の安定性などを確認している。
三井住友建設らのプロジェクトは今回、NEDOが2025年度に開始した「太陽光発電導入拡大等技術開発事業」として採択された。
同事業では、6つの技術テーマの下、太陽光発電に関するさまざまな技術開発が進められており、浮体式システムは「設置場所に応じた太陽光発電システム」の枠組みで選出された。
そのほかのテーマおよび採択された24事業は以下の通り。
設置場所に応じた太陽光発電システム技術開発
・シースルー型有機薄膜太陽電池モジュールシステムの開発:麗光(京都府京都市)、中国電力(広島県広島市)
・多様な設置場所に応用可能な薄膜太陽電池のシート状架台による施工方法の開発:日揮(神奈川県横浜市)
・農業ハウスに搭載して快適な農業と収穫量向上に貢献する太陽光発電技術の研究開発:DIC(東京都中央区)、 MORESCO(兵庫県神戸市)、アイテム(大阪府大阪市)
・商用車用太陽光発電システムの研究開発:システック(神奈川県川崎市)、パワーエックス(東京都港区)、セブン‐イレブン・ジャパン(同・千代田区)
次世代型太陽電池技術開発
・高効率高耐久性多接合太陽電池モジュールの開発:カネカ(東京都港区)
・次世代型太陽電池の総発電量向上と長寿命化技術の開発:東芝エネルギーシステムズ(神奈川県川崎市)、京セラ(京都府京都市)
・ペロブスカイトCIS軽量タンデム太陽電池モジュールの開発:PXP(神奈川県相模原市)
発電設備の長期安定電源化技術開発
・太陽光発電の安全性向上および導入拡大のための設計・施工・リパワリング技術の基盤整備およびガイドライン策定:産業技術総合研究所(産総研)、一般社団法人構造耐力評価機構(大阪府大阪市)、大成建設(東京都新宿区)、SOMPOリスクマネジメント(同)、太陽光発電技術研究組合(同・港区)、一般社団法人太陽光発電協会(JPEA/同)、愛知工業大学、中部大学
・発電量高度予測に向けた日射量高精度予測技術開発:一般社団法人日本気象協会(東京都豊島区)、一般社団法人電力中央研究所(同・千代田区)、産業技術総合研究所(産総研)、東京理科大学
循環型社会構築リサイクル技術開発
・ガラス剥離技術を用いた建材一体型ペロブスカイト太陽電池モジュールの資源循環技術開発:パナソニック ホールディングス(大阪府門真市)
・ペロブスカイト太陽電池の大量導入を見据えたマテリアルリサイクル技術の開発:東京大学
共通基盤技術開発
・壁面設置型BIPV用日射熱取得率高精度評価技術開発:太陽光発電技術研究組合
・多用途・多形状に対応する新用途太陽電池モジュールの評価・測定技術の研究開発:宮崎大学
・新型太陽電池の発電性能・信頼性評価基盤技術の開発:産業技術総合研究所
・高耐久・高効率ペロブスカイトCIS軽量タンデム太陽電池の研究開発:東京科学大学、産業技術総合研究所
・化合物3接合型太陽電池の革新的作製プロセス技術開発:産業技術総合研究所、東京大学
・高耐久ワイドギャップ太陽電池の開発:東京大学
・高効率・高耐久ペロブスカイト太陽電池の開発とタンデムへの展開:東京大学
・界面材料化学を基軸とする高性能オールペロブスカイトタンデム型太陽電池の研究開発:京都大学
動向調査研究
・太陽光発電の技術・産業・市場動向に関する総合調査:資源総合システム(東京都中央区)
・太陽光発電システムにおける国際技術協力プログラムに関する総合調査:資源総合システム
・太陽電池モジュールのリサイクルに関する動向調査:みずほリサーチ&テクノロジーズ(東京都千代田区)、三菱総合研究所(同)、早稲田大学
・ペロブスカイト太陽電池の社会実装に係わる標準化等に関する動向調査:三菱総合研究所
【参考】
・新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)―太陽光発電の導入拡大への課題解決に向けたテーマ24件を採択しました
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2025年9月13日
中部電力ミライズ(愛知県名古屋市)は9月8日、名古屋市の新体育館「IGアリーナ」を運営する愛知国際アリーナ(同)と、リユースパネルを活用した太陽光発電所によるオフサイトPPA導入に関する合意書を締結した。アリーナにある3つの大型ディスプレイの年間消費電力に相当する電力量を再エネで賄う。
再エネを供給するIGアリーナ専用の太陽光発電所は、使用するすべての太陽光パネルに、品質検査をクリアしたリユースパネルを採用した。出力は約90kW、年間想定発電量は約75MWhで、アリーナに設置されたセンターハングビジョン・リングビジョン・リボンビジョンの3つの機材の使用電力として、再エネ由来の電力を供給する。発電所の運転開始は2025年度内の予定。
なお、再利用パネルを活用した太陽光由来の電力を、オフサイトPPAの仕組みを用いて供給するのは、国内では初めて。
IGアリーナは7月に、中部電力ミライズ提供のCO2フリー電気「Greenでんき」を導入し、再エネ化を進めてきた。今回電力の一部を、リユース発電所由来の電力に切り替えることで、再エネの追加性を高めるとしている。
2012年にFIT制度が始まり、国内では太陽光発電設備の設置が急速に進んだ。これにより、太陽光パネルの寿命が尽き始める2030年代後半以降には、パネルの廃棄問題が顕在化すると予測されている。
両社は今後、リユースパネルを活用した太陽光発電所由来電力を使用することで、再エネ拡大とともに、資源循環促進につなげていきたい考えだ。
IGアリーナは、屋根上に設置した太陽光パネルによる発電や全館空調の効率化などを行い、建築物環境配慮制度「CASBEE」のSランクを取得済み。このほか、館内の飲食店舗では、ペットボトルをリサイクルし再利用する取り組みなども展開している。
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