2025年11月1日
YKK AP(東京都千代田区)は10月28日、ガラス型ペロブスカイト太陽電池を用いた建材一体型太陽光発電(BIPV)の内窓を系統連系して、実用化・事業化に一段階近づく実装検証を開始した。
自社が入居する「谷町YFビル」(大阪府大阪市)の6・7階の執務エリアに設置されていた既存の内窓を取り外し、新たにBIPV内窓を設置して実装検証を実施する。期間は1年程度を予定している。
YKK APは、2024年5月に関電工(東京都港区)と業務提携し、窓や壁面を活用する建材一体型太陽光発電(BIPV)の開発を進めており、ペロブスカイト太陽電池などを用いた実証実験に取り組んでいる。
これまで、実証実験ハウスを用いた実証や内窓にガラス型ペロブスカイトを貼りつけた実証などを実施。ペロブスカイト太陽電池などを用いたBIPV内窓の、ビルなどに囲まれた環境下における発電の傾向や積雪条件下における垂直設置の有効性、熱線反射ガラス越しの発電性能などを確認してきた。
今回の実装実証では、BIPV内窓を設置する工事と系統連系(商用の送配電網に接続)を実施している。
主な実証項目は、以下の通り。
(1)設置検討から施工・系統連系・運用開始までの一連の作業の確認(既存の内窓の撤去作業も含む)
(2)ペロブスカイト太陽電池を用いた太陽光発電システムとして、パワーコンディショナを使用したシステム設計・通線方法の検証・系統連系対応・消防法適合の確認
(3)熱線反射ガラス越しでの発電性能の確認とビル外観への影響の確認
(4)外窓と内窓の間に生じる熱に対する換気ブレスの有無による発電などへの影響の確認
今回の実装実証で、ガラス型ペロブスカイト太陽電池を用いたBIPV内窓は、高さ・幅にバリエーションがある合計27窓分製作。6階13窓(高さ:903㎜、幅:1008㎜/1121㎜)、7階14窓(高さ843㎜、幅:1008㎜/1121㎜)に設置した。
また、系統連系のため、太陽電池で発電した直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナ1台を導入した。電気工事は関電工が実施した。
YKK APは、建材一体型太陽光発電(BIPV)の開発に向けて、以下の実証などを実施してきた。
・秋葉原での実証実験ハウス(2024年7~10月)
秋葉原駅前広場に既存ビルのミニチュアとして製作した実証実験ハウスを設置し、ペロブスカイト太陽電池を用いたBIPVの日射量や発電量のデータ収集を行う実証実験を実施した。周囲をビルなどに囲まれた環境下におけるデータの傾向も取得した。
・さっぽろ雪まつりでの実証実験ハウス(2025年2月)
さっぽろ雪まつり会場にて、BIPVによる実証実験ハウスを設置・展示。積雪条件下における垂直設置の有効性を確認した。
・羽田イノベーションシティ敷地内での実証実験ラボ(4月~)
羽田イノベーションシティの敷地内に、測定を優先するために一般公開はせず、データ採取に特化した、BIPVの実証実験ラボを設置。過去の実証実験では内窓のみに設置していたペロブスカイト太陽電池を、外窓にも設置し、同じ環境下で内窓と外窓のデータが同時に取得した。
・清水マリンビルでの導入実証(6月~)
清水マリンビル(静岡県静岡市)にガラス型ペロブスカイト太陽電池を設置し、連続使用下での耐久性などを検証。
・東京臨海副都心のテレコムセンタービルでの実装検証(8月~)
テレコムセンタービル(東京都江東区)にフィルム型モジュールの次世代型ソーラーセルを活用した建材一体型太陽光発電内窓を設置し、創エネ効果などを検証。
YKK APは、これらの取り組みにより、これまで進めてきた「窓で断熱」(省エネ)に「窓で発電」(創エネ)を加え、カーボンニュートラルの実現に貢献する。
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2025年10月31日
商船三井(東京都港区)は10月28日、沖縄県久米島町と、同町の脱炭素化や産業ツーリズム事業に関する包括連携協定を締結した。再エネ利用では、海洋温度差発電(OTEC)をはじめ地域資源を活かし、新たな産業振興モデルの構築を図る。
今回の協定に基づき、両者は、主に以下の4つの取り組みで協業を開始する。
・1MW級OTECの実現に向けた取水システムの開発・設計
・直接海洋回収(DOC)に関する実証試験や回収したCO2の活用
・クルーズ事業・旅行会社との連携による観光促進
・外国人人材に関する雇用支援や人材育成、外国人人材トレーニングセンター設立
久米島町は、海洋深層水を地域資源として活用し、エネルギー・水産・観光を連携させた地域循環共生圏「久米島モデル」を構築。2040年までに島内エネルギーの100%を再エネで賄うという目標を掲げる。また、自然・特産品・アクティビティなどの観光資源と海洋深層水を融合させた新たな観光開発にも取り組んでいる。
同町は、今回の協定を契機に、地域資源を最大限に活かし、生活の質向上と地域経済の持続的な発展を目指す。
商船三井は、世界初となるOTECの商用化を目指し、久米島町との連携を一層強化する。また、2031年度内での運営開始を目指すほか、CO2回収事業「DOC」の小規模実証試験の検討も始めるという。さらには、同社が外国人船員育成で培ったノウハウを活かし、島内の人材確保や観光産業の振興にも貢献する。
【参考】
・久米島町―株式会社商船三井との包括的連携協定締結式
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