2025年10月2日
「その土地を購入して本当に大丈夫ですか」
2025年9月24日に開催された、経産省の総合資源エネルギー調査会、電力・ガス事業分科会、再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会、次世代電力系統ワーキンググループの資料によると、2025年6月末時点で、東北電力管内では累計で56.6GWの系統用蓄電池の接続検討申込がされ、中国電力管内18.2GW、九州電力管内16.8GW、東京電力管内16.5GWがこれに続いている。日本全国で累計143GWの系統用蓄電池の接続検討申込がされていることになる。
500kW以上の発電等設備で見ると、2022年度の系統用蓄電池の接続検討申込が約6GW、2023年度が約16GW、2024年度が95GWとここ数年で急激に増加している。これはもはや異常な過熱状態と言わざるを得ない。実際に系統用蓄電池で接続契約申込まで進んだものは18GWのみである。系統用蓄電池の接続検討申込が急激に伸びた煽りをうけて、他の電源の接続検討回答に遅れが生じ、系統連系までの時間が延びている。
これは2012年から2015年にかけての、いわゆる利潤配慮期間の高額FIT(40円、36円、32円/kWh)の太陽光発電バブルを彷彿とさせる事態である。地元の不動産会社や建設会社等、自分自身では系統用蓄電池の開発をする意図がない者が、土地所有権/利用権と系統接続契約の地位をセットとして、権利売買の形で実際の系統用蓄電池の開発事業者に売却するビジネスを行っている。
系統接続契約の地位だけで、1MW当たり1000万円で取引されるような事例もみられるので、一般送配電事業者に支払う接続検討申込の費用の22万円とその他の技術的書類作成経費を考慮にいれても、権利売買は大きな儲けが期待できる。さらに地方の辺鄙な土地であれば、1平方メートルあたり数千円で購入ができ、それに系統接続契約の地位をセットとして、土地の価格にプレミアムをつけて売却することもできる。条件次第ではあるが、2MWの系統接続契約の地位と2MW用の土地とセットとし、5000万円で売却している事例もみられる。
また、連系地点の⼯事費負担⾦は、⼀般送配電事業者が保有する系統設備を踏まえて必要になる設備構成から⾒積もられるため、接続検討の申請前に予測することは不可能であり、接続検討の回答書が提⽰されることで明らかになる。蓄電池事業者、蓄電システムメーカー、⼀般送配電事業者らへのヒアリングからは、「系統連系⼿続の規定上、⼤量に接続検討を⾏うことについて何も制約がない。いかに多額の接続検討費⽤が⽣じても、それに⾒合った安価な⼯事費負担⾦の連系地点が⾒つかれば接続検討に要した費⽤は回収可能となる」という声が聞かれた。
そのため、「事業者による連系地点の検討が不⼗分であったとしても⼤量に接続検討を⾏う⾏動が促され、結果的に案件確度が低い接続検討が⼤量に発⽣することになる」(蓄電池事業者、蓄電システムメーカー、⼀般送配電事業者)という。系統用蓄電池の接続をめぐる問題点が浮かび上がってきた。
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2025年10月1日
東北電力(宮城県仙台市)は9月24日より、東北6県・新潟県におけるサステナブル(持続可能)な農業の実現に貢献するため、農業由来カーボンクレジットを購入・活用を開始すると発表した。
この取り組みより、生産者は新たな収入源が確保され、就農者の確保や設備導入などにつながる。地域の生産者が創出したクレジットを地域企業が活用することで、農業の活性化を支援するとともに脱炭素を推進する。
今回の取り組みでは、東北・新潟の生産者がJ-クレジット制度の「水稲栽培における中干し期間の延長」という方法論に基づき、温室効果ガス(メタン:CH4)の排出削減量として認証を受けたクレジットを同社が購入する。
購入したクレジットは、同社が主催・協賛するイベントや同社事業所の一部から排出される温室効果ガスのオフセットに活用する。また、顧客ニーズに応じた販売などを通じて、東北・新潟内で有効活用・循環を図ることで、経済的安定性と境保全性の両面から、サステナブルな農業の実現に貢献する。
この取り組みにあたっては、農業由来カーボンクレジットの生成から販売までを一貫して手がけるフェイガー(東京都千代田区)と連携する。クレジット創出を希望する地域・生産者は、東北電力がフェイガーに取り次ぎ、同社のプロジェクトに参加することになる。すでに秋田県の大潟村農業協同組合から賛同を得ており、同農協は2026年度からフェイガーのプロジェクトに参加し、クレジット創出に取り組む予定。
フェイガーは、「東北エリアにおけるカーボンクレジット地産地消推進協議体」を発足、東北銀行(岩手県盛岡市)とも連携した取り組みも進めている。
東北電力グループは創立以来、「地域社会との共栄」を経営理念に掲げている。東北・新潟において、農業は地域経済の根幹を担う重要な産業のひとつで、東北電力は、兼ねてより、事業と地域農業の共存を図る取り組みを進めてきた。たとえば、十和田発電所(⻘森県)では、十和田湖の⽔を活⽤して発電を⾏っており、発電後の⽔はかんがい⽤⽔として活⽤されている。
農業では、近年、収益性の低下、就農者の高齢化・後継者不足、異常気象による高温障害・生育不良などさまざまな課題が深刻化しており、サステナブルな農業の実現が求められている。東北電力では、その実現に向けた取り組みとして7月、エネルギー事業で培った知見をシイタケ栽培に活かすため、農事組合法人のENEX de AGRI(秋田県美郷町)と共同で、新会社「Agri-e」(同)を設立している。また、8月には営農型太陽光発電事業を展開するため、千葉エコ・エネルギー(千葉県千葉市)、Cyrinx(東京都渋谷区)と業務提携した。今回は新たな取り組みとして、農業由来カーボンクレジットの活用を開始する。この取り組みを推進するとともに、その社会的意義を発信していく。
J-クレジット制度は、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用、適切な森林管理、農業での取り組みなどによって削減または吸収された温室効果ガスの量を、「クレジット」として国が認証する制度。
「水稲栽培における中干し期間の延長」では、出穂前に一度、水田の水を抜いて田面を乾かす中干し(水抜き)の期間を過去2カ年の平均より7日間以上延長することで、メタンの排出量を3割削減し、その削減量分を「クレジット」として認証を受けることができる。
同方法論によるJークレジット創出では、Green Carbon(東京都港区)は2023年4月に稲作コンソーシアムを発足させ、取り組んでいる。農家、農業関連機関、企業、自治体など参画者は保有する水田を、このコンソーシアムに登録すると、まとめてJ-クレジットに申請するもので、個々では登録・申請までの申請書作成や手続きなどの簡素化を図ることができる。なお、このコンソーシアムには、2024年5月時点で、合計4万ha以上の農家と、フェイガーを含む約300社以上の企業が参画している。
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