2026年9月9日
環境省は8月25日、風力発電所や地熱発電所、火力発電所の建て替えにおける環境影響評価法(アセス法)上の手続き見直しなどを盛り込んだ法施行令の一部改正政令案等を公表し、パブリックコメント(意見募集)を開始した。募集期間は9月23日まで。
今回の政令案などは、2025年6月に成立した「環境影響評価法の一部を改正する法律(令和7年法律第73号)」の施行に向けたもの。施行予定は2027年4月1日。改正法では、既存工作物を除却または廃止し、同種の工作物を同一または近接した区域に新設する「建替事業」を対象に、環境影響評価手続の最初の段階である配慮書手続の見直しを規定している。
実務上の主な変更点は、新設される「建替事業に係る配慮書(建替配慮書)」において、事業実施想定区域の周囲の概況に関する調査を不要とする点だ。
一方で、既存事業の環境影響に関する調査結果や知見を踏まえ、新設する工作物についての環境保全のための配慮内容を記載することが義務付けられる。これにより、長期間の操業実績がある建替案件において、重複する手続の簡素化を図る。
なお、太陽光発電所は環境影響評価法の対象事業だが、今回の政令案では建替配慮書の適用要件が設けられていない。環境省の技術検討会が2025年3月末までに評価書が確定した案件を整理したところ、建替えが実施されたと考えられるのは火力24件、風力19件、地熱3件だった。このため検討会は、建替実績があり、今後も建替えが想定されるこの3種類について、距離や規模などの適用要件を検討した。太陽光発電所は2020年4月に法対象へ追加されているが、今回の政令案には含まれておらず、法対象規模の事業には従来のアセス手続が引き続き適用される。
一方、単独の系統用蓄電所などは環境影響評価法が列挙する法アセス対象の発電所には含まれておらず、今回の建替配慮書制度の対象でもない。蓄電所には電気事業法に基づく保安規制や手続が別途及ぶが、今回の制度見直しはそれらを変更するものではない。
また、道路、ダム、鉄道、飛行場、廃棄物最終処分場など、発電事業以外の工作物も今回の特例対象には含まれない。
改正法は「建替事業」の対象となり得る既存工作物を広く規定しているが、今回の政令案で、建替配慮書の適用に必要な距離・規模要件が定められたのは、火力、地熱、風力の各発電所に限られる。
建替配慮書の対象となるには、次の条件をすべて満たす必要がある。
・既存の火力発電所、地熱発電所、風力発電所またはその発電設備を除却するか、使用を廃止すること
・既存設備と同種の発電所または発電設備を新設すること
・既存設備が設置されている区域内、またはその区域の境界から300m以内の近接区域に新設すること
・新設する事業が、環境影響評価法上、アセス手続が必須となる「第一種事業」に該当すること
・新設する発電所または発電設備の出力が、事業区分ごとに定められた上限を超えないこと
上記のうち事業区分ごとの出力要件は以下の通り。
・火力発電所:新設設備の出力が、既存設備の出力の2.0倍以下
・地熱発電所:新設設備の出力が、既存設備の出力の1.3倍以下
・風力発電所:新設設備の出力が、既存設備の出力の1.1倍以下
発電所全体を廃止して建て替える場合だけでなく、既存発電所の一部の発電設備や号機を廃止し、同種の設備へ更新する場合も対象になりうる。
なお、建替配慮書の制度は、アセス手続全体を免除するものではないことに注意が必要だ。あくまで既存設備の稼働時に蓄積された環境調査データなどを活用し、手続の最初の段階である配慮書の記載・調査方法を合理化するもので、方法書、準備書、評価書などの後続手続は引き続き必要となる。
同じ政令案には、一定規模以上のダム改築を、環境影響評価法上の第一種事業または第二種事業として位置付ける規定も盛り込まれている。ただし、これはダムを「建替配慮書」の対象に加える改正ではなく、大規模なダム改築に通常の環境影響評価手続を適用するための別の改正である。
対象となるダムには、水力発電機能を持たない治水・利水用ダムだけでなく、水力発電所の設備となっているダムも含まれ得る。河川管理者、水道事業者、工業用水道事業者、土地改良事業者などが行う場合は、主に河川に関するダム改築事業として扱われる。一方、発電事業者が一定規模以上の水力発電所の設備として行う場合は、河川事業との重複を避け、水力発電所の設置または変更工事として扱う仕組みとなっている。
河川に関するダム改築事業の基本的な規模要件は、改築後の貯水面積が100ha以上で、かつ貯水面積が50ha以上増加する場合を第一種事業とし、改築後の貯水面積が75ha以上で、かつ37.5ha以上増加する場合を第二種事業とするもの。ただし、実際の事業区分や手続は、ダムの用途、事業主体、水力発電所の出力などによって異なる。
告示改正案では、建替配慮書を作成する際の調査・予測・評価の進め方も示した。事業者は、既存設備の稼働中に蓄積した調査データや、国・自治体が保有する資料をできる限り活用する。専門家への聞き取りなどを行っても必要な情報が得られない場合に限り、現地調査を実施する。
評価では、建替え前後で環境への影響がどう変わるかを比較する。可能な場合は数値で示し、難しい場合は定性的に整理した上で、環境影響を回避・低減できているか、国や自治体の環境基準・目標と整合しているかを確認する。
アセス法は1997年の施行から25年以上が経過し、風力発電所やダムなどの大規模工作物が建替え時期を迎えつつある。現行法では、位置や規模に大きな変更がない建替えであっても新規事業と同様の手続を求めており、事業の迅速な更新を阻害する要因との指摘があった。今回の改正は、これまでの環境影響評価の蓄積を活かし、手続を合理化することで、環境配慮と事業の円滑な進展の両立を目指すものである。
今回のパブリックコメントの対象には、建替事業のほか環境影響評価に関する書類(アセス図書)の継続公開制度に関する規定も含まれている。意見募集は電子政府の総合窓口(e-Gov)を通じて行われる。環境省は、寄せられた意見を踏まえて政令および告示の策定を進める方針だ。
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