2026年9月18日
パワーエックス(岡山県玉野市)は8月31日、カーボンゼロ農業モデルの実証実験において、太陽光発電設備と蓄電システムを活用した夏いちごの初収穫に成功するとともに、農園では空調需要が高まる夏季の使用電力の約6割を再エネで賄うことができたと発表した。
この実証は、日本航空(JAL/東京都品川区)、JALグループの農業法人であるJAL Agriport(千葉県成田市)とともに、JAL Agriportの農園「JAL FARM」で取り組んでいるもの。農業経営の収益性の向上と環境負荷の低減の両立を目指している。
3社は2025年4月に環境事業における業務提携を発表し、同年7月より「JAL FARM」で夏いちご栽培の実証を進めてきた。
この実証では、夏場のいちご栽培で、空調に必要な電力を蓄電池と太陽光による再エネで賄うことで、収益性の向上と環境負荷の低減の両立を目指している。
いちごは通常、冬から春にかけて生産されるため、夏場は流通量が減少し単価が高くなる。流通の少ない夏場にも出荷できる周年栽培が実現すれば、農業経営の収益性向上につながる。一方、近年の夏季の気温上昇もあり、夏の栽培にはハウス内の温湿度をいちごの生育に適した状態に保つ空調が不可欠で、その電力コストとCO2排出が課題だった。
2025年12月には、パワーエックスの蓄電システム「PowerX Cube」が運転を開始。現在はパワーエックスのエネルギーマネジメントシステム「PowerOS」による遠隔監視のもと、太陽光で発電した電力を蓄えてハウスの空調などに活用する運用を行っている。この取り組みを通じて環境負荷を抑えながら、夏でもいちごの生育に適した環境を維持する「カーボンゼロ農業」の実現に取り組んでいる。
2026年は、太陽光発電とPowerX Cubeを組み合わせた電力システムのもとで迎えた初めての夏となった。この実証では、JALと連携協定を結ぶ農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構/茨城県つくば市)が開発した品種「よつぼし」を栽培しており、6月より収穫を開始した。収穫した夏いちごは、成田地区のスーパーマーケットや関東近郊のパティスリーなどで展開される。
2026年度の実証の結果として、太陽光発電による直接給電とPowerX Cubeによる充放電制御(余剰電力の蓄電、電力使用ピーク時間帯の放電)を組み合わせることで、空調需要が高まる2026年6月〜7月の2カ月間において、農園の使用電力の約6割を再エネで賄った。
PowerX Cubeは、太陽光発電の余剰電力を蓄え、空調需要が高まる時間帯に放電することで、農園の再エネ活用と系統電力購入の抑制を支える。これにより、7月は系統からの購入電力を約11,500kWh削減した。
パワーエックスは、電気料金に換算して月あたり約28万円、CO2排出量にして約4.9tの削減に相当し、これは一般的な乗用車2台分の年間排出量にあたると試算している。
3社は、引き続き蓄電システム制御の最適化を進め、太陽光発電の自家消費率のさらなる向上を図る。また、この実証で見えた施設園芸特有の需要変動を踏まえ、蓄電リソースを電力市場の調整力として運用するなど、季節の波に合わせた新しい蓄電池の活用モデルを構築する。
気候変動への対応とエネルギーコストの上昇は、農業全体に共通する課題である。3社は、この実証で得られた知見をもとに、カーボンゼロ農業モデルの他地域への展開など、収益性の向上と環境負荷の低減を両立する農業領域の事業モデルの策定に取り組んでいく。
今回の実証で導入した中型産業用蓄電システム「PowerX Cube」は、パワーエックスが自社開発し、岡山県玉野市で製造している。蓄電容量は約30世帯分の1日当たりの電力消費量に相当する358kWh(公称値)。商業施設や工場などにおける電力のピークカットやオンサイト太陽光発電による自家消費に加え、災害時にはBCP(事業継続計画)対応の電源としても活用できる。
JAL Agriportは、JALが成田を拠点に農業に挑戦するために2018年に設立。成田空港の近郊に位置する広大な農地を生かした農業生産を行うほか、地元産品を利用した料理を提供する古民家風レストランを運営する。JALグループの国際的なネットワークやノウハウを生かし、栽培したいちごを海外へ輸出する事業にも力を入れている。農研機構とも連携し、日本の農作物の価値向上を目指している。
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