2026年6月24日
日本産業標準調査会(JISC)は6月18日、第41回総会を開催し同会の活動状況、日本型標準加速化モデルの進捗、公共調達におけるJIS規格活用、国内認証機関の強化などについて報告した。
環境対策に関連する分野では、各種新技術の標準化戦略、公共調達におけるJIS規格の活用、GX-ETSやサステナビリティ情報開示を背景とした国内認証機関の強化などが取り上げられた。
特定分野において進められている戦略的標準化については、パイロット5分野として、量子、水素・アンモニア、バイオものづくり、データ連携基盤、ペロブスカイト太陽電池が示されている。
これまで、量子、水素・アンモニア、バイオものづくり、データ連携基盤については分野全体の標準化戦略を策定。
ペロブスカイト太陽電池については、そこから一歩進み規格開発・活用に向けた取り組みが進められている。これまでに、性能評価に関する新業務項目提案(NP)がIECで承認されたことをうけ、産総研を中心に検討会が立ち上げられ、2026年度中の技術仕様書(IEC/TS)の発行に向けて作業が進められている。また、耐久性・信頼性評価についても業界団体の検討会にて議論され、2026年3月25日には今後の規格策定を見据えた業界ガイドラインが日本電機工業会(JEMA)から公表された。
水素・アンモニア分野では、欧州等の戦略、技術成熟度、各国の標準化動向、日本の技術競争力に関する情報などを踏まえ、日本で対応を進めるべき標準化項目が特定されている。資料では、水素では水電解装置関連技術等、アンモニアでは大型ボイラ等が例示されている。
資料では、パイロット5分野から得られた取り組みの「型」を他の戦略分野にも展開し、新たにAI・ロボット、マテリアル分野に関する標準戦略の策定を進める方針も示された。
AI・ロボット分野では、AIロボティクスの社会実装において、技術導入と制度・規格・安全性確保の設計が不可分と整理。プライバシー、セーフティ、セキュリティの確保や、ロボットと人との協働を両立する観点から、必要な技術要件・基準の検証・整備、安全性認証制度や安全規制の在り方を検討するとしている。
マテリアル分野では、複合新素材の開発の社会実装・環境整備を例に、データの取扱いに係る基本的なルールの整備や、開発された複合新素材の品質を客観的に立証するために必要な国際標準化等を検討するとした。
総会では、特許庁が同日発表した「標準戦略対応審査」についても言及があった。標準化の進捗と特許審査のタイミングがずれる課題に対応する制度として紹介された。
先端技術の市場化に向けて、研究開発段階から知財・標準化の取り組みを進める必要がある一方、標準化と特許審査のプロセスは独立しており、これまでは企業等がそのタイミングを調整することは困難だった。このため、標準開発の進捗に合わせた柔軟な特許審査を可能とし、標準策定の迅速化を図る方針だ。
公共調達におけるJIS規格活用については、2026年4月に策定された「JIS規格の公共調達引用ガイダンス(Ver.1.0)」を踏まえた取り組みが報告された。同ガイダンスは、各府省庁の公共調達担当者が、物品・サービスなどの発注仕様書を作成する際に、JIS規格をどのように引用し、調達要件として位置付けるかを整理した実務資料。
会議資料では、公共調達で求める品質、安全性、性能、試験方法などの目的に対し、JIS規格が活用できる場合があると説明している。ガイダンスでは、JIS規格の種類や効能、調達仕様書における引用方法、既存の公共調達引用事例などを示し、調達時に達成したい目的とJIS規格との対応関係を整理した。
第18回基本政策部会の委員意見としては、「JIS規格の公共調達引用ガイダンスができたことは標準・基準認証政策上、画期的」との意見が紹介された。
委員からは、公共調達における標準化戦略の例として、グリーンスチールに関する発言もあった。鉄鋼業界がグリーンスチールに力を入れていることに触れ、価格が高くてもCO2が少ない材料を公共事業の公共調達で調達していくことは、標準化戦略の「型」の一つになり得るとの指摘があった。
国内認証機関の強化については、「日本型標準加速化モデル2025」の中で、特定分野における国主導の戦略的標準化と並ぶ新たな取り組みとして位置付けられている。
会議資料では、欧州の電池規則などで認証の対象が最終製品からサプライチェーン全体に拡大していることや、認証機関が取り扱う情報の機微性が高まっていることを背景として示した。国外規制対応で国外認証機関に依存した場合、日本企業の機微データが国外流出する恐れがあるとも説明している。
会議では、国内認証機関強化に関係する領域として、GX-ETS、サステナビリティ情報開示、EU電池規則、大型パワーコンディショナ、SAF燃料認証などが挙げられた。経産省では、2025年度に「認証産業活用の在り方検討会」を3回開催しており、認証機関、認定機関、産業界からの報告を踏まえて、第二次中間整理を公表したところだ。
また、同会では2025年度のJIS制定・改正の実績として、標準第一部会では、電気・電子・情報分野以外のJISについて、42件の制定、214件の改正、54件の廃止、1,503件の確認を審議・議決した。標準第二部会では、電気・電子・情報分野のJISについて、16件の制定、31件の改正、7件の廃止を審議・議決した。
環境・防災・エネルギー関連の主な制定・改正例としては、以下が示された。
| 規格番号 | 規格名 | 制定・改正 | 公示日 |
|---|---|---|---|
| JIS Q 14067 | 温室効果ガス-製品のカーボンフットプリント-定量化のための要求事項及び指針 | 制定 | 令和8年3月23日 |
| JIS C 61215-1 | 地上設置の太陽電池(PV)モジュール-設計適格性確認及び型式認証-第1部:試験要求事項 | 改正 | 令和7年8月20日 |
| JIS C 62623 | パーソナルコンピュータの消費電力測定方法 | 改正 | 令和7年11月20日 |
| JIS A 6932 | 屋根用応急シート-ポリエチレンクロス・ラミネートシート | 制定 | 令和8年2月20日 |
| JIS Z 9098 | 災害種別避難誘導標識システム | 改正 | 令和8年3月23日 |
太陽電池モジュールに関するJIS C 61215-1の改正では、対応する国際規格との乖離を解消し、フレキシブルPVモジュールや両面受光PVモジュールの評価の扱いなどを追加した。資料では、太陽電池モジュールの性能値をより信頼性の高いものにすることが可能になるとしている。
屋根用応急シートに関するJIS A 6932は、災害時の応急処置を目的とするブルーシートの品質や基本的な製品仕様等を規定したもの。資料では、自治体や施工業者等が適切に製品を選択できる環境が整備され、信頼性の高いブルーシート市場が形成されることで、災害対策の強化等の推進に資することが期待されるとしている。
総会では、日本産業標準調査会運営規程の改正についても審議した。経産省は、日本型標準加速化モデル2025を踏まえ、JISの制定・改正手続を迅速化するため、認定産業標準作成機関制度の活用拡大を進めている。
認定産業標準作成機関制度は、主務大臣の認定を受けた機関が作成したJIS案について、JISCの審議を経ずに制定等を行う仕組み。資料では、令和7年度末時点でJIS総数11,011件のうち3,866件、35.1%を認定産業標準作成機関が担当しており、今後5年間で7割程度に拡大することを目指すとした。
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