2026年8月27日
大阪大学(大阪府吹田市)、東京大学(東京都文京区)、青山学院大学(同・渋谷区)、artience(同・中央区)らの共同研究グループは8月4日、人の目に見えない近赤外光を利用して発電できる無色透明な有機太陽電池の開発に成功したと発表した。
この成果は、建物や自動車の窓ガラスに、景観・視認性・採光性を損なうことなく発電機能を付与する技術につながる。また、近赤外光の一部を吸収して発電に利用できるため、遮熱効果や空調に必要な電力消費の低減も期待される。
柔軟で軽量な有機太陽電池(OSC)は、次世代エネルギー技術として期待される一方、従来は可視光を吸収して発電するため着色して見え、採光性や意匠性が求められる場所への導入が課題となっていた。
研究グループは今回、可視光をほとんど吸収せず、近赤外光のみを吸収する有機半導体の設計技術と、近赤外光エネルギーを電力へ変換する技術を確立。目に見える可視光は透過し、目に見えない近赤外光を発電に利用する「無色透明性」と「発電機能」を両立した新しい有機太陽電池の開発に成功した。
また、開発した無色透明な有機光電変換デバイスにより、近赤外光を用いた脈拍検出にも成功しており、目立たず装着できるヘルスケア用ウェアラブル端末や、環境光で駆動する自己電力供給型センサーへの展開も見込まれるという。
研究グループの大阪大学産業科学研究所 家裕 隆教授は、「近赤外光は可視光に比べてエネルギーが低く、太陽電池に利用することは容易ではない。今回の研究では、精密な分子設計により、無色透明性と発電機能の両立を実現した。この研究成果が、次世代の無色透明な有機太陽電池や、ヘルスケア用ウェアラブルデバイスの開発につながることを期待している」とコメントした。
さらなる太陽電池の導入拡大に向けて、建物や自動車の窓、農業用ハウスなど、これまで十分に利用されてこなかった身近な空間を発電場所として活用することが求められている。
有機半導体材料を発電層に用いる有機太陽電池や、ペロブスカイト太陽電池は、軽い、薄い、曲げられるなどの特徴を有し、これまで設置が難しかった耐荷重性の低い屋根や建物の壁面などへの導入を可能とする次世代太陽電池として期待されている。
シリコン太陽電池やペロブスカイト太陽電池は高い発電性能を持つ一方、特定の波長の光を選択して利用することは容易ではない。これに対し、有機太陽電池は、有機半導体の設計によって吸収する光の波長を制御できる。
ただし、従来の有機太陽電池は主に可視光を吸収するため、透過光や反射光の色のバランスが変化し、着色して見える。採光性や意匠性が求められる場所への導入に向けて、可視光を透過し、近赤外光を利用して発電する、無色透明性と発電機能を両立した有機太陽電池の開発が求められていた。
研究グループはこれまでに、有機半導体材料の構造と電子状態を精密に制御することで、可視光をほとんど吸収せず、近赤外光を選択的に吸収する、無色透明な有機分子の設計と開発に成功している。
今回の研究では、この設計指針をもとに、強い分子内相互作用を誘起する新規ユニットを設計し、これを分子内に組み込むことで、可視光を透過しながら近赤外光を吸収する新しい材料を開発した。この薄膜は、近赤外光を効率よく吸収する一方で、高い可視光透過性を示し、肉眼ではほぼ無色透明に見えることがわかった。
また、開発した分子は、近赤外光を吸収した後に電荷を生じやすく、さらに生じた電荷が効率よく薄膜内を輸送できることを明らかにした。その結果、この分子を発電層に組み込んだ太陽電池は、高い可視光透明性を保ったまま動作し、近赤外光領域で最大20%を超える外部量子効率を示した。外部量子効率は、太陽電池に入射した光子の数に対して、外部回路に電流として取り出された電荷の数の割合をいう。値が高いほど、入射した光を効率よく電気に変換できていることを示す。
今回の研究グループには、大阪大学産業科学研究所(横山創一助教、家裕隆教授)、大阪大学院工学研究科、東京大学物性研究所、青山学院大学理工学部、artienceらが参加している。artienceは、ファインケミカル素材の開発・提案を行う化学メーカーだ。色材・機能材、ポリマー・塗加工、パッケージ、印刷・情報の4つのセグメントで事業を展開し、エネルギー、エレクトロニクス、バイオ・ヘルスケア分野などに領域を広げている。
今回の研究成果は、米国科学誌「Journal of the American Chemical Society」(オンライン)に8月4日付で掲載された。また、この研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の研究開発とSociety 5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE)「温暖化により生産力が著しく低下している施設生産の暑熱対策技術の開発」など、複数の研究費・助成制度から支援を受けて実施された。
早稲田大学は2025年10月、桐蔭横浜大学(神奈川県横浜市)と、太陽光の中に含まれる近赤外光を、電気エネルギーに変換する技術を開発したと発表した。この技術をペロブスカイト太陽電池に組み込むことで、従来の鉛系ペロブスカイト素子では利用できなかった近赤外光の利用が可能になるという。
記事内容へ





2026.09.21
自動車部品メーカーの愛三工業(愛知県大府市)と中部電力ミライズ(同・名古屋市)は9月1日、太陽光発電所を活用したオフサイト型バーチャルPPA(VPPA)に関する契約を締結したと発表した。 愛三工業は、契約期間である約7年…続きを読む
2026.09.20
JA三井リースアセット(東京都中央区)は9月1日、浜田(大阪府高槻市)と、使用済み太陽光パネルのリユース・リサイクルを一体で進める資源循環体制の構築に向け、業務提携契約を締結したと発表した。太陽光パネルリサイクル推進法へ…続きを読む
2026.09.19
経済産業省は8月31日、2027年度(令和9年度)の概算要求を公表した。経産省関係の要求額は7兆7859億円。資源エネルギー・GX分野に1兆9838億円を求め、系統用蓄電池、水素、持続可能な航空燃料(SAF)、GXサプラ…続きを読む