2025年11月5日
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は10月30日、日本気象協会(東京都豊島区)、産業技術総合研究所(産総研/茨城県つくば市)と共同で、日射量予測が大幅に外れる「大外し」を低減する予測技術を開発したと発表した。
日本気象協会は、現在一般送配電事業者などへ提供中の日射量予測と信頼度予測サービスに、この予測技術を2026年秋ごろから実装し、予測サービスのさらなる高精度化を図る。
太陽光発電は、日射量などの気象条件によって発電量が変動する。そのため、太陽光発電量を精度良く予測するためには、日射量予測の高精度化が不可欠となる。今回、共同開発した予測技術で「大外し」の低減効果を検証した結果、従来手法と比べ「大外し」が23%低減することを確認した。
再生可能エネルギー変動対応に関わる調整力調達コストは2025年度見込みで300億円程度とされており、さらなるコストの低減が求められている。今回開発した技術の早期実用化により、一般送配電事業者は、調整力の確保量を抑えられることで電力の安定供給や需給運用のコスト削減が見込める。
また、太陽光発電事業者や太陽光発電を取り扱う小売電気事業者は、日々の発電計画や電力の調達計画の際に、より高精度な予測情報を活用することで計画と実績の差が小さくなり、収益の安定化やインバランスリスクの低減が期待される。
この技術開発は、日本気象協会と産総研が、NEDOの委託事業(2021年度~2024年度)において、太陽光発電の導入拡大と電力系統の安定化への貢献を目的に実施した。
具体的には、太陽光発電において課題となっている「需給運用の複雑化」や「電力の安定供給」の解決に必要となる「翌日・翌々日程度先を対象とした日射量予測技術の高度化および『大外し』の低減」に取り組んだ。
この中で、日本気象協会は、以下の3つの技術開発を実施。また産総研は、気象庁予報データを活用し、「大外し」事例の要因分析などを実施した。
1.日射量予測に特化した気象モデルに係る技術開発
2.複数機関の気象モデル予測値の統合に係る技術開発
3.アンサンブル予報(※)に基づく信頼度予測に係る技術開発
※アンサンブル予報は、わずかに異なる大気の状態(初期値)から多数の予測を行い、その平均やばらつきの程度といった統計的な性質から、最も起こりやすい現象を予測する方法をいう。
特に(2)では、複数の気象モデルの予測値を統合し、発生頻度が少ない「大外し」予測をターゲットに機械学習を活用することで、日射量予測の「大外し」」を低減する補正手法を開発した。
今回開発した3つの技術を組み合わせて「大外し」の低減効果を検証した。その結果、予測手法の高度化と誤差の大小を事前に分類する手法の高度化により、信頼度が低いと予測した日を含むすべての日の「大外し」は従来手法と比べて13%低減、信頼度が高いと予測した日の「大外し」は23%低減することを確認した。この結果は、従来手法では正確な予測が困難であった事例についても、(1)と(2)により予測誤差を低減し、(3)により「大外し」の可能性を判断することで、より高い精度の日射量予測情報が利用可能となることを示している。
太陽光発電量を予測するの日射量予測が大きく外れる、いわゆる「大外し」が発生すると、電力システムへ甚大な影響を与える。
たとえば、「大外し」により、グループ内でインバランスの融通、電源調達を行うバランシンググループや、一般送配電事業者などで生じるインバランス量(計画した需要量と発電量の差)が増大し、それに対応する調整力の確保量も増大する。また、再エネ固定価格買取制度(FIT)終了電源の利活用や将来のFIT制度からの自立化を見据えると、今後は太陽光発電事業者やバランシンググループ自らが、インバランスリスクを低減する目的で太陽光発電量を精度良く予測する必要がある。日射量予測技術のさらなる高精度化、特に「大外し」の低減に対するニーズが高くなっている。
【参考】
・新エネルギー・産業技術総合開発機構―日射量予測の「大外し」低減技術を開発しました
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