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バイオ炭を原料に下水からリンを回収し肥料生産 フジタらの実証施設完成

2025年7月20日

大和ハウス工業(大阪府大阪市)は7月15日、同社グループのフジタ(東京都渋谷区)らが建設を進めていた、リン吸着バイオ炭によるリン回収および炭素貯留技術実証研究の実証研究施設が完成したと発表した。同施設では、木質バイオマスガス化発電の副生炭や下水汚泥炭化物を原料に製造する「リン吸着バイオ炭」を用いて、脱水ろ液からリンを回収し、安定的かつ経済的な下水汚泥資源の肥料利用を図る技術を実証する。

 

多様な活用が期待できる「リン含有バイオ炭」を生産

 

同施設は、フジタ・住友重機械エンバイロメント(東京都品川区)・東北大学・国際農林水産業研究センター・福山市共同研究体が共同開発したもので、国土交通省の2023年度「補正下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」に採択されたことを受けて実現した。

完成した実証施設は、リン回収建屋と炭化装置建屋の2棟で構成される。リン回収建屋では、製造したリン吸着バイオ炭を用いて、下水汚泥の脱水ろ液からリンを回収し、「リン含有バイオ炭」を生産する。炭化装置建屋では、汚泥炭化装置により、脱水汚泥を乾燥・炭化させ、リン吸着バイオ炭の原料としての実用性を検証する。

「リン含有バイオ炭」とは、肥料効果のほか、土壌改良や炭素貯留などの多様な機能を持つ炭のこと。汚泥処分費の縮減や土壌改良材兼肥料として活用することで収益改善などが見込まれる。また、汚泥消化設備を有さない自治体への適用が可能で、地域の未利用資源を使った新たな産業モデル創出も期待できる。

 

生産した肥料を農地に適用し、効果を検証

 

2024年度は、実証施設の整備や各装置の動作確認を実施した。2025年度は、季節変動が装置の性能や製品の品質に与える影響を評価する。また、生産した肥料を農地に適用し、作物の生育やGHG抑制効果なども検証する予定だ。

 

まずは備後圏域で展開、将来的には全国・世界での利用拡大を目指す

 

日本国内では、食料安全保障上の課題として、現在輸入に依存している肥料の国内資源への代替転換が求められている。中でも、下水資源には希少なリンが多く含まれるが、施設整備コストなどを理由に普及拡大には至っていない。

フジタらは今後、同実証研究をきっかけに派生する取り組みを、福山市を含めた備後圏域の7市2町で展開する。将来的には、成功モデルを日本全国や世界に拡大させたい考えだ。

 

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