2026年3月19日
野村證券(東京都中央区)と野村キャピタル・インベストメント(同)は3月13日、台湾の再エネ事業者HD Renewable Energy(HDRE)が札幌市で開発する系統用蓄電池プロジェクト(日本・北海道Helios 50MW蓄電所)を対象に、54億円のグリーンプロジェクトボンドの組成を支援したと発表した。
系統用蓄電池事業を裏付けとするグリーンプロジェクトボンドの組成は国内初で、電力市場収益に依存する「マーチャント型」案件を対象とした長期資金調達のモデルケースとなり得る。
系統用蓄電池事業は、太陽光や風力の導入拡大に伴い、需給調整や系統安定化の調整力として重要性が高まっている。
一方で、金融面では、収益が市場価格に連動していることやFITなどの固定収入がない点、収益源が複数市場に分散するといった構造的弱点があると指摘されている。
従来のプロジェクトファイナンス市場では、FIT太陽光など長期固定収入を持つ案件が主流であり、マーチャント型蓄電池は金融機関から「難易度の高い資産クラス」とみなされてきた。今回の案件も、卸電力市場(JEPX)・需給調整市場・容量市場での取引収益のみで成立する完全マーチャント型モデルである。
マーチャント型蓄電池事業には、事業者にとって以下のリスクがあるとされる。
・市場価格変動リスク:JEPX価格・調整力価格・容量市場収入の3要素が収益を左右する。市場制度変更や価格低下が起きると、キャッシュフローが大きく変動する
・長期ファイナンスの難易度:金融機関は通常、長期固定契約や最低収入保証などを求めるため、マーチャント案件はデット調達が困難となる
・蓄電池事業収益モデルの制度変動リスク:日本の系統用蓄電池はまだ市場形成段階で、収益スタッキングの実績不足や市場制度変更といった不確実性が大きい
野村證券と野村キャピタル・インベストメントは今回、収益変動を前提とした資金構造を組み込むことで、ボンド満期20年の長期資金調達を実現した。
格付投資情報センター(R&I/東京都千代田区)は、信用格付およびグリーンボンド格付を付与するとともに、グリーンボンド原則への適合性評価を実施している。
今回の案件は、系統用蓄電池の資金調達に関して次の3点を示唆する。
・マーチャント型でもプロジェクトボンド化が可能
・収益スタッキングを前提としたキャッシュフロー管理が不可欠
・グリーンボンド化による機関投資家資金の活用
今後、数GW規模の系統用蓄電池導入が見込まれる中、市場収益型事業を支える資金調達スキームの一例となる。
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