2026年4月4日
系統用蓄電所や再エネ併設型蓄電池、EV充電を活用したアグリゲーション、家庭用蓄電池のデマンドレスポンス(DR)など、蓄電ビジネスへの参入に関する発表が2026年3月30日から4月1日にかけて相次いだ。
不動産会社、再エネ専業、モビリティ企業、小売電気事業者、電力会社など、参入プレイヤーの顔ぶれも一段と多様化し、「系統用蓄電所を自ら持つ」だけでなく、「既存事業と蓄電を組み合わせる」、「市場運用や制御を収益機会として取り込む」といった動きが広がっており、蓄電は設備投資テーマであると同時に、新たな事業ポートフォリオの受け皿として存在感を高めている。
先日もユーラスエナジーホールディングス(東京都千代田区)の蓄電所着工について報じたが、本記事では当メディアが新たに確認した6件の事例を紹介する。
レノバ(東京都中央区)は3月31日、静岡県菊川市で開発を進める「菊川西村蓄電所」について、想定出力90MW、想定容量270MWhの「市場販売型」蓄電所として約60億円のプロジェクトファイナンス融資契約を締結したと発表した。
FITなどの価格保証に頼らず、需給調整市場や容量市場などへの参加で収益化を図る案件で、同社は国内最大規模の市場販売型と位置付ける。
運転中・建設着手を含む同社の蓄電事業は352MWに達し、2030年までに累計900MWとする中計目標の約4割に相当するという。SBI新生銀行側も同日、同案件向けのプロジェクトファイナンス組成を公表しており、蓄電事業が金融面でも大型インフラ投資として評価され始めていることがうかがえる。
ADワークスグループ(東京都千代田区、以下ADW)は3月31日、「ADW三重松阪市蓄電所(2MW/8MWh)」が本連系を完了し、稼働を開始したと発表した。
同蓄電所は電力の売買をアグリゲーターとしてデジタルグリッド(東京都港区)、O&M(運営・保守)をJESM(熊本県熊本市)が担う。開発は2011年から太陽光発電所等のエネルギー関連設備を手掛けるサステナブルホールディングス(東京都渋谷区)が、自社ブランド蓄電池「Raptor」を採用し施工した。
ADWは2025年から系統用蓄電所の開発に取り組んでおり、手掛ける蓄電所は全て出力2MW以下の高圧設備で、今回の「ADW三重松阪市蓄電所」も用地取得から12カ月、着工から約3ヵ月で稼働に至っている。今後もスピード感のある開発が可能な範囲で積極的な土地取得と設備投資で規模拡大し、JPEX卸売市場での運用から始め、一定のモニタリング期間を経て需給調整市場へと参入する予定だ。
不動産業界にとっては、土地取得力や開発推進力をそのまま蓄電所開発に転用でき、蓄電ビジネスは既存アセットとのシナジーが見えやすい新規事業だ。
日本蓄電池(東京都千代田区)も3月31日、同規模の蓄電システムについて3月27日から需給調整市場向け運用を開始したと発表した。
同社による佐賀県唐津市の「NC唐津市相知町蓄電所」の出力は1,988kW、容量は8,146kWhで、日本蓄電池が開発・運用・現場管理を担い、デジタルグリッドがアグリゲーションや市場参入支援を担う。蓄電システムはダイヘン(大阪市淀川区)、蓄電セルはCATL(中国)を採用。
同社は上記のほか、多数の蓄電所を設置・着工・運用開始しており、今後もJEPX、需給調整市場、容量市場、防災支援を連携させた地域エネルギーモデルの確立を目指していく。
イーレックスは3月30日に、アグリゲーション事業の柱として系統用蓄電池、再エネ併設型蓄電池、コーポレートPPA、DRを並べた戦略を公表し、3月31日には太陽光併設型蓄電池の第1号案件への投資決定も発表した。
西日本プラント工業(福岡県福岡市)の子会社が所有する福岡県宗像市の太陽光発電所をFITからFIPへ移行し、同敷地内に出力1,980kW、容量8,147kWhのLFP蓄電池を導入、同社が蓄電池事業者兼アグリゲーターとして運用・制御を担う。電力市場価格が安い時間帯に充電し、高い時間帯に放電して収益化を図るほか、出力制御の回避による再エネ有効活用も狙う。
系統用蓄電所の単独開発に加え、既設太陽光のFIP移行と併設蓄電池を組み合わせるモデルは、再エネ発電事業者にとって導入ハードルの低い参入パターンとして今年度も引き続き注目されそうだ。
より小さな蓄電リソースを集約するパターンの動きもある。北海道電力(北海道札幌市)は3月30日、家庭用蓄電池を遠隔制御するDRサービス「エネモチャージ 〜蓄電池ポイントサービス〜」の受付開始を発表した。
再エネが余りやすい昼間に充電し、需要の多い平日夕方などに放電する制御で需給バランスの調整に寄与し、参加者には年間1200ポイントを付与する。対象機器や遠隔制御サービス、申し込みフローも整理されており、家庭用蓄電池を系統価値を持つ分散リソースとして活用する方向が鮮明になっている。
モビリティ分野では、タクシーアプリを提供するGO(東京都港区)が2026年4月から需給調整市場に参入し、電力アグリゲーション事業を始めると3月31日に発表した。
複数拠点に点在するEV車両への充電量調整で創出した調整力を供出するもので、開始時点で230基超の充電器に接続されたEVを群制御し、MCリテールエナジー(東京都千代田区)を通じて市場へ供出する。同社はモビリティ領域で培ったAI技術や充電マネジメントの知見を電力領域に展開する。
MCリテールエナジー側の発表では、この取り組みはEVを含むネガポジリスト・パターンでの需給調整市場参入としては国内初。小売電気事業やEV関連サービスを展開してきた同社にとっては、既存の顧客接点や電力取引ノウハウに、蓄電池やEVリソースを活用した需給調整機能を重ねる形だ。
各社発表を鑑みれば、設備、用地、需要、制御、金融、顧客基盤などを持つ企業であれば、完全なゼロからではなく、自社の強みを足場に蓄電ビジネスへ参入できるケースが多いと言える。
蓄電ビジネスは、すでに補助金獲得競争だけの段階ではなく、運用ノウハウ、制御技術、金融組成、既存事業とのシナジー設計を競う段階にある。今回の発表ラッシュのように参入プレイヤーが一気に多様化しているいま、蓄電はエネルギー業界の周辺テーマではなく、既に不動産、モビリティ、再エネ、小売電気、需要家支援など隣接ビジネスを横断する事業機会として認識されていると言えそうだ。
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