2026年2月2日
公益財団法人 自然エネルギー財団(東京都港区)は1月26日、太陽光発電の設置義務化に関する研究レポート「太陽光発電の設置義務化の効果 ― 住宅に広がり、光熱費の削減に」を公表した。
同レポートでは、東京都と川崎市が2025年4月に開始した設置義務化により住宅への太陽光発電導入が加速し、光熱費削減が進んでいることなど、住宅向け太陽光発電市場に関する重要な情報が多く掲載されている。
川崎市が2025年3月から4月に実施したアンケート調査によると、市の補助金を活用して2024年度に新築住宅に太陽光発電を導入した市民約200人のうち、87%が太陽光発電に満足していることが判明した。
満足している理由として最も多かったのは「光熱費の削減」で64%を占めた。次いで「停電時の備え」が15%となり、太陽光発電が経済的なメリットと災害時のレジリエンス向上の両面で評価されていることが示された。
一方で、回答者の約3割が初期費用に対する不安を抱えていた。川崎市の補助金制度では初期費用の2割超をまかなうことができ、回答者の73%は補助金が「設置を決める後押しになった」と感じている。
東京都と川崎市の設置義務化は、新築住宅を手がけるハウスメーカーなどの事業者を主な対象としている。それぞれ以下のような条件の事業者を対象とし、新築住宅の5割程度が義務化の対象になると見込まれている。
特に分譲戸建住宅での設置が進んでいる。2023年度時点で、日本全国の新築住宅における太陽光発電の設置率は分譲戸建が12.7%に対して注文戸建が63.9%と大きな差があったが、義務化により状況が変化している。
分譲戸建住宅を中心に供給するハウスメーカーは、太陽光発電の搭載に関する規格化を進めている。屋根の形状や設置方法を新たに規格化することで、住宅1棟あたりの導入費用を1割~3割程度抑えることが可能になった。
規格化によって削減できる導入費用の内訳は、主に調達費と施工費である。ハウスメーカーは太陽光発電パネルを大量に調達してパネル1枚あたりの購入費を低減し、規格化した設計に沿って設置することで工期を短縮して人件費も抑えている。
初期費用0円モデル(オンサイトPPA)を採用するハウスメーカーが増加している。発電事業者が太陽光発電を設置して住宅のオーナーに電力を供給し、住宅のオーナーは毎月の電気料金を発電事業者に支払う仕組みだ。住宅のオーナーは初期費用を負担することなく太陽光発電を設置できる。
東京都は初期費用0円モデルで太陽光発電を設置する場合、1kWあたり10万円を発電事業者に対して助成する(設備容量が3.6kW超の場合)。事業者は電気料金などサービス利用料の低減を通じて、補助金の全額を住宅のオーナーに還元する。東京都は発電事業者に対して、住民に提供するサービスの内容や補助金の還元方法・還元額を都のウェブサイトに掲載することを義務づけている。
川崎市では「太陽光発電設備等設置費補助金」を実施しており、FIT(固定価格買取制度)を使わずに売電するか全量を自家消費した場合には1kWあたり7万円を住宅のオーナーに助成する。上限4kWまで導入すると28万円の補助金を受け取ることができる。
京都市は2012年度から、群馬県は2023年度から、大規模な新築建物の建築主を対象に太陽光発電の設置義務化を進めてきた。建物1棟あたりの設置義務量を建築主に課すことで、義務化の効果を高めている。
京都市は2022年4月に制度を改正して設置義務量を引き上げた。改正前は延床面積2000平米以上の建物1棟ごとに最低でも3kW以上の設置を義務づけていたが、改正後は延床面積に応じて目安5~38kWに引き上げた。
その結果、義務量を大幅に超過して設置する割合が顕著に増加した。改正前と比較すると、1棟あたりの設置義務量を200%超過した割合は26%から42%に、1000%超過した割合は12%から31%に増加した。近年の電気料金の高騰が設置容量を増加させる要因のひとつとなっている。
国は2つの制度を強化することで、屋根置き太陽光発電の普及を後押しする。
1つは住宅トップランナー制度の改正である。従来は年間の住宅供給数が一定以上の事業者に対して、2030年度までに新築戸建住宅の6割に太陽光発電を設置する目標を課してきた。しかし2023年度時点の設置率は36.5%にとどまっている。2026年度から制度を改正し、2027年度時点の設置率の中間目標を新たに設定する。
もう1つは省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)の改正である。改正後は、屋根置き太陽光発電の導入目標の策定を2026年度から義務づける。主に事業者の工場やオフィスビルなどの大規模な建物が対象となる。
事業者は2つの報告書を国に提出する必要がある。1つは「中長期計画書」で、屋根置き太陽光発電の設置に関する定性的な目標を記載する。もう1つは「定期報告書」で、太陽光発電の設置状況を報告する。工場などを対象に太陽光発電を設置できる屋根の面積、耐震基準、積載荷重のほか、すでに太陽光発電を設置済みの面積を記載する必要がある。
中長期計画書による設置目標の報告は2026年度から、定期報告書による設置状況の報告は2027年度から開始を予定している。
先行する自治体に続いて、仙台市も太陽光発電の設置義務化を2027年度から開始する予定だ。義務化の対象となる建物は、住宅など延床面積が2,000平米未満の中小規模の建物と、2,000平米以上の大規模な建物である。
仙台市の試算によると、設置義務化を実施することで、市内の新築住宅の6割に太陽光発電の搭載が進む見込みだ。仙台市の地球温暖化対策推進計画では、2030年度までにCO2排出量を55%以上削減することを目指す(2013年度比)。設置義務化によって、2030年度までに建物の太陽光発電は34MW増加する見込みで、義務化による導入量は目標達成に必要な導入量の5割超に相当する。
仙台市は東京都や川崎市の制度を参考にして対象を決めた。設置義務化の対象となるハウスメーカーは約40社で、そのうち約6割は先行する東京都や川崎市で義務化に対応している。
長野県でも検討が進んでおり、京都市と同じく大規模な新築建物を対象に義務化を計画している。早ければ2028年度から開始する方針だ。
各自治体で設置義務化の効果が出始めている一方で、課題もある。導入にかかる費用や制度が障壁となって、集合住宅の導入が進んでいない。
賃貸アパートや分譲マンションなどの集合住宅は、戸建住宅と比べて階数と戸数が多く、延床面積あたりの太陽光発電の設置容量が小さい。FITの買取価格が低下したことによって、導入するインセンティブが低くなった。
ただし近年は、集合住宅の課題を解決する取り組みが広がり始めている。たとえば、PCS(パワーコンディショナー)を専有部ごとに設置する「入居者売電方式」を活用するハウスメーカーが出てきた。この方式によって、各戸の住民は太陽光発電の電力を自家消費できるようになる。積水ハウスによると、一般的な賃貸アパートと比較して、年間の光熱費を約30%減らすことができる。
分譲マンションでも太陽光発電を設置する事例が増え始めている。阪急阪神不動産はマンションの屋上に設置した太陽光発電の電力を、提携する小売電気事業者に売電する。その売電収入を活用して、専有部の延床面積に応じて住宅オーナーの電気料金を削減する。太陽光発電を設置しない場合と比較すると、住宅オーナーは年間の電気料金を約4%削減できる。
自然エネルギー財団は、膨大なポテンシャルがある建築物に導入を加速させるために、全国の自治体が国と連携して設置の義務化を推進することが望まれるとしている。
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