2018年8月7日
再生可能エネルギーなどの拡大を追い風に、蓄電池ビジネスが活況になってきた。大和ハウス工業などが出資する蓄電池スタートアップのエリーパワー(東京・品川)は滋賀県に新工場を設け、蓄電池の生産能力を3倍程度引き上げる。投じるのは約200億円。蓄電池はパナソニックや京セラが注力しているが、スタートアップも大型投資に踏み出し、競争がさらに熱を帯びてきた。
エリーパワーは住宅用蓄電池大手。蓄電池システムメーカーの多くは電池を外部から調達するが、電機大手の技術者らを採用し、電池を内製する体制を築き上げた。大和ハウス工業や東レ、大日本印刷などが株主に並び、蓄電池技術への期待の大きさを物語る。
滋賀県に工場用地を取得し、2021年の稼働を目指す。増産するのは太陽光で発電した電気などを蓄える住宅用のリチウムイオン電池。これまで川崎市の2つの工場で生産してきたが、新工場で生産を増やし、製造コストを3分の1程度に抑えたい考え。17年度に1万台の蓄電システムを販売しており、19年度には5万台の販売を目指す。
蓄電池の需要は国内外で高まっている。理由の1つは再生可能エネルギーの広がりだ。太陽光や風力発電は発電量が天候に左右されやすい。蓄電池を使えば1日を通して電気を使いやすくなる。エネルギー基本計画では、再エネの発電比率を16年度の約15%から30年度に22~24%にする目標を掲げる。発電事業者向けの蓄電システムの普及が重要視されている。
2つめの理由は、国内の住宅用太陽光発電を巡る動きだ。住宅用太陽光発電の余剰電力買い取り制度は19年で開始から10年がたつ。売電価格が大幅に下がる家庭が出てくるため、売電目的から自宅使用に移行が進むとみられている。エリーパワーなどのメーカーは自宅使用に必要な住宅用蓄電池の需要が広がるとみて、掘り起こしに動く。
国内ではパナソニックなどが生産し、神奈川県藤沢市のスマートシティー(環境配慮型都市)の戸建て住宅に設置するなどしている。京セラやオムロンも家庭用蓄電システムを販売している。積水化学工業は約40億円を投じ、住宅向けのフィルム型リチウムイオン電池を約6倍に増やす。
そして理由の3つめが各国の環境規制強化を受けた電気自動車(EV)市場の広がりだ。エリーパワーは新工場で、四輪車のエンジンの始動を助ける蓄電池を量産することを検討。同社は二輪向けに蓄電池を開発・製造してきた実績があり、ガソリンエンジン車のエンジン始動を助ける電池もマツダと宇部興産と共同開発を始めている。
EVに搭載するリチウムイオン電池は、パナソニックが米テスラ向けを主に生産している。同社は兵庫県姫路市の液晶パネル工場で19年度から国内自動車メーカー向けにEV用の電池をつくる計画だ。
車載用電池を巡っては、中国勢が政府支援を受けながら急速に生産能力を引き上げている。11年創業の寧徳時代新能源科技(CATL)が17年の出荷量で首位に立ち、同3位の比亜迪(BYD)などを含む中国勢の世界シェアは6割を超える。
蓄電池生産が増えればコストも抑えられ、消費者にとって買いやすくなる可能性がある。ただ、かつて世界シェア上位を占めた国内太陽光パネルメーカーは、安価な中国製品に国内市場を奪われ苦戦。付加価値を高めつつ、低価格も目指す難しい戦略が求められそうだ。
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