2018年7月19日
第5次エネルギー基本計画が3日、閣議決定された。エネルギー基本計画はエネルギー需給に関する政策について、中長期的な基本方針を示したもの。「エネルギー政策基本法」に基づき少なくとも3年ごとに検討を加え、必要があれば変更。閣議決定を求めることが定められている。2014年4月11日に第4次計画を決定して以来、4年余りが経過していた。
今回の計画の注目点は「再生可能エネルギーに関しては、経済的に自立し脱炭素化した主力電源化を目指す」との一文が盛り込まれたことだ。
しかし、30年度の電源構成の比率について、水力や太陽光などの再生エネを22~24%程度にするとの従来のスタンスは継続。再生エネを主力電源とするための課題として(1)低コスト化(2)電気を電力系統に流す時に発生する「系統制約」の克服(3)不安定な太陽光発電などの出力をカバーするための「調整力」の確保――などを明記した程度で、具体的な改善策は見られなかった。
こうした内容にするなら、不安定な太陽光発電などの出力をカバーするための「調整力」として、コージェネレーション(熱電併給)の可能性により踏み込んで言及してもよかったのではないか。それが筆者の感想である。
不安定な再生エネの導入が進めば進むほど、その変動をカバーして需給バランスを均衡させるための調整力が必要になる。将来の調整力の切り札としては蓄電池が挙げられるが、足元では、燃料の投入量を変えることなどにより出力を自在にコントロールできる火力発電が現実解だと言われている。このため「再生エネ拡大には火力発電所が欠かせない」との奇妙な指摘も、ある種の説得力を持ってきた。
それが今、不安定な再生エネが出力不足に陥った際、分散型のコージェネレーションで補完するというシステムの現実味が増してきている。この場合も、再生エネを補完する1次エネルギーはガスという従来型の化石燃料であることに変わりはないが、留意すべきは電力会社の不足をガス会社が埋めるという発想がこれまで生まれてこなかったということだ。
3月、関西電力と東京ガスが共同で、横浜市港北区のスマートシティー(環境配慮型都市)開発で連携すると報じられた。関電が街区全体の電力供給・制御を請け負い、東ガスの都市ガスでつくった電気などを一括管理。入居者の光熱費負担を約3割減らすという。具体的にはガスを燃料に発電する新型エネファーム(家庭用燃料電池)を導入。余った電気を外部供給する「逆潮流」も視野に入れる。
建物の運用段階での温暖化ガス排出量を、省エネや再生エネで削減し、限りなくゼロにするという「ZEB(ゼブ=ゼロ・エネルギー・ビル)」というコンセプトでも、コージェネレーションを不安定な再生エネの調整力に位置づけるという発想は有望である。
政府は「20年までに新築公共建築物等で、30年までに新築建築物の平均でZEBの実現を目指す」としている。にもかかわらず、今回のエネルギー基本計画で「不安定な再生エネの調整力としてのガス」という明確な言及はなかった。
電力とガスが別々の企業から供給される限り、利害は確かに一致しないだろう。しかし、先進国では、1社による電気・ガスの複合サービスの提供が一般的だ。再生エネの主力電源化を目指すのだとすれば、最適な電力需給の管理システムを構築するためにも、縦割りになりがちな市場の垣根を取り払うエネルギーシステム改革のスピードを一層速めることが必須であろう。
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