2018年8月16日
パナソニックが米テスラとの協力関係を見直す。電気自動車(EV)向け電池と太陽電池の2事業で組んできたが、テスラがEVの量産で四苦八苦し、立て直しに注力するあまり、共同で設立した米国の太陽電池工場での作業が停滞。太陽電池の部材を独占供給する契約を切り替え、米国内の他社への提供を決めた。テスラのEVを巡る誤算の影響が広がってきた。
両社は2017年10月、資金を出し合って米ニューヨーク州に太陽電池生産のバッファロー工場を稼働させた。EV用電池でも提携関係にあり、10年にはパナソニックがテスラに3000万ドルを出資。14年には米ネバダ州に大規模電池工場(ギガファクトリー)を建設することで合意した。パナソニックは同工場に約2000億円を投じる計画で、追加投資も検討している。
今回問題になっているのは、バッファロー工場で生産する太陽電池だ。パナソニックは今秋にもテスラ以外への供給を始める。両社はこのほど独占供給契約を見直した。
同工場でパナソニックは薄いシリコンに回路を作り発電能力を持たせた「セル」と呼ぶ中核部材を生産している。テスラはそのセルを独占的に引き受け、複数枚組み合わせて屋根と一体化した意匠性の高い太陽光パネル「ソーラールーフ」を組み立てるというのが当初の計画だった。だが、蜜月時代は短かった。
原因はテスラのEV事業のつまずきだ。テスラは量産が遅れている新型EV「モデル3」に人材や資金を集中。ソーラールーフの生産に手が回らず、パナソニックのセル生産も停滞していた。同社は19年までにバッファロー工場へ300億円強を投じて生産能力を高める予定だったが、その計画も大幅に遅れるとみられる。
一方、米国が太陽電池へのセーフガード(緊急輸入制限)を設けた追い風も受け、米国内で生産するパナソニックのセルへの引き合いは強い。「多くのパネルメーカーがうちのセルに関心を示している」(パナソニック幹部)といい、テスラ以外の米メーカーへのセルの供給に踏み切ることを決断した。
パナソニック幹部は「テスラからの要求があればセル供給や投資を戻せるように準備はしている」と語るが、先行きは見えない。
パナソニックがテスラへの独占供給を見直す背景には、国内事業の厳しさがある。再生エネルギーの買い取り価格引き下げによる国内市場の縮小で同社の太陽電池事業は赤字が続く。テスラとの協業で当初は18年度の太陽光事業の黒字化を目指していたが、19年度以降にずれ込むのが確実な情勢だ。早期の黒字化のためには「脱・テスラ依存」は避けては通れない。
パナソニックは17年度末にパネル生産の滋賀工場(大津市)を閉鎖した。従来は自社で材料から最終製品のパネルまで一貫で生産していたが、同工場の閉鎖に伴いこの方針を転換。島根県やマレーシアにある工場で生産するセルを海外パネルメーカーに供給することを決めた。セルは東南アジアのメーカーを中心に5社前後への供給が決まっており、今秋にも納入を始める。
パナソニックの推定で太陽電池の20年度の世界市場は17年度2割強増の125ギガワットに拡大する見通し。だが、テスラは6月には太陽光発電システムの販売で提携関係にあった米ホームセンター大手、ホーム・デポとの契約を更新しない方針も示した。家庭向け製品についてはテスラの店舗とオンライン販売に絞った。
太陽電池に限らず、EV用電池での協業でも不透明さがある。テスラは中国にEVの開発・生産拠点を建設する計画を進めている。上海市に検討する新工場では電池と車両を一貫生産する方針だ。パナソニックは「上海での電池生産も検討したい」(幹部)とするが、テスラの財務状況を冷静に見極める構えだ。急速に力をつける車載電池のライバル寧徳時代新能源科技(CATL)などが両社の関係に影を落とす可能性も否定できない。
イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)のシナリオの崩れが多方面に波及する中、同氏やテスラを成長の原動力として織り込んでいたパナソニックの計算にも狂いが生じつつある。EV向け電池での協業関係も安泰と言い切れず、パナソニックや関連企業は固唾をのんで見守っている。
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