2018年1月31日
中国が支援する総合インフラ開発計画「中国・パキスタン経済回廊(CPEC)」のプロジェクトが相次ぎ動き出した。発電所や港湾、高速道路などを整備し、パキスタンの経済成長を後押しするのが狙い。中国の成長に陰りが見え、パキスタン自身にも対外債務増加の懸念がある中、総額630億ドルの巨大プロジェクトは成功するのか。中国の経済外交戦略・一帯一路(OBOR)の最前線となるプロジェクトに世界が注目している。
漁村から商工業拠点へ
パキスタン南西部。岩山と砂漠に囲まれた漁村グワダルが巨大商工業地帯に生まれ変わりつつある。約4.1億ドルを投資した第1期工事では総延長660メートルのコンテナターミナルが完成。オフィス棟や税関などを備えた貿易ゾーンの工事も急ピッチで進む。港湾サービス大手・中国港控(COPHC)が建設・運営に当たり、約500人の中国人労働者を含む千人以上が働く。
今後は水産加工施設や倉庫などを備えた物流センターをはじめ、湾岸高速道路や新空港、職業訓練校なども整備していく計画。「グワダル港はアフガニスタンや中央アジアを結ぶハブとなるが、単なる貿易や物流の拠点ではない。輸出加工区を備えた工業団地に二輪車や電子部品工場を誘致して一大産業拠点を目指す」と、グワダル港湾局のドスタン・カーン・ジャマルディニ会長は強調、「港は中国だけでなく欧米やアジア企業にも活用してほしい」と話す。
砂漠に眠る電力の切り札
グワダルと並ぶCPECの目玉プロジェクト、タール炭鉱開発の現場はインド国境までわずか50キロの砂漠地帯。第2鉱区の巨大な露天掘り炭鉱を開発するのは大手財閥ダウード・ハーキュリーズ傘下のエングロ電力と中国機械設備工程(CMEC)などの合弁企業だ。
炭鉱では大型ダンプトラックとパワーショベル数十台が24時間体制で掘削作業に当たる。パキスタンでは珍しい28人の女性ダンプ運転手も活躍中。
石炭は3.5キロ先で建設中のパキスタン・中国合弁の火力発電所で利用し、2019年6月の発電開始を目指す。第1期の総投資額は約30億ドル。「CPECでは最大の民間投資案件」(エングロ電力のシャムスッディン・シェイク最高経営責任者)で、当初の640メガワットから将来は11基・計3630メガワットまで拡張する計画だ。
しかしCPECには中国からの投融資が不可欠。20年から5年間で国際通貨基金(IMF)への返済やユーロボンドの償還で70億ドル以上のキャッシュが必要となるパキスタンにとっては大きな負担となりかねない。
経済・財政政策を取り仕切るミフタフ・イスマイル首相特別顧問は「国内総生産(GDP)に占める対外債務の比率は20%程度と低水準。輸出や外国投資は好調。今後6~7%の成長が持続すれば返済に問題はない」と説明する。CPECをてこに飛躍を目指すパキスタンだが、それにはまず堅実な経済政策で安定成長を確保する必要がある。
相次いだテロやガバナンス悪化で低迷していたパキスタンの経済は回復基調が鮮明だ。16年度(17年6月期)の経済成長率は5.3%と10年ぶりの高水準。同国中銀は今年度、6%近い成長を予想している。
この好調の背景にあるのが治安の回復だ。軍や治安部隊レンジャーによる掃討作戦の結果、商都カラチや中部ラホールなどの大都市では、毎月のように起きていたテロがほぼ沈静化。外国投資の流入も好調で、今年度は過去最高の50億ドル到達が期待されている。
日本企業がほぼ独占していた乗用車市場には韓国・起亜や現代自動車、ルノーなどが相次ぎ参入を表明している。
さらに高成長を狙い新興国の仲間入りを目指すパキスタンは産業インフラ整備で長年の友好国・中国の力を借りることを決断した。これまでに積み上がったCPECの総投資額630億ドルの8割近くが火力、水力、太陽光などの発電所建設に割り当てられ、残りは高速道路や鉄道の建設・改良に投資する計画。一部はすでに具体化している。
(カラチで、山田剛)
記事内容へ
2021.04.12
経済産業省 資源エネルギーは、FIT制度において認定事業者に義務付けられている発電設備への標識や柵塀などの設置について、改めて注意喚起を行た。「依然として設置義務を順守していない事業者が多数存在しており、標識・柵塀などが…続きを読む
2021.04.09
ヤンマーホールディングスおよびグループ会社のヤンマーパワーテクノロジーは、舶用水素燃料電池システムの実証試験を開始。トヨタ自動車「MIRAI」の燃料電池ユニットを搭載した船舶で、2025年の実用化に向け性能検証を進める。…続きを読む
2021.04.08
オムロン ソーシアルソリューションズ(OSS)は2021年4月から、ビルや商業施設などにおける太陽光発電の自家消費システムに向けた一体型保護継電器「K2ZC-K2RV-NPC」の販売を開始した。自家消費システム導入の低コ…続きを読む