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<原発のない国へ>再生エネ100%達成 ポルトガルの挑戦

2018年7月24日

水力発電所のダム湖の水面に八百四十枚の青色の太陽光パネルがきらめく。ポルトガル北部、スペインとの国境に近いアルト・ラバガン・ダム。水力と太陽光発電を組み合わせた世界初の試みだ。「変電施設が一つで済む。環境への負荷を減らすことこそ、再生可能エネルギーを進める上で重要です」。ポルトガル電力のルイ・テイシェイラ執行役員が強調した。

再生エネの複合システムは二〇一六年十一月末に完成した。年間発電量は水力が約二万八千四百戸分に相当する八五・二ギガワット時、太陽光は百戸分の三百メガワット時を生み出す。仏シエル・テール社製のパネルは防水機能があり、プラスチック製のフロートは耐用年数二十年で再利用もできる。

こうした取り組みを重ねた結果、ポルトガルは今年三月、全人口千三十万人の月間消費量の100%相当を再生可能エネで生み出すことに成功した。

日本政府は四年ぶりに決定したエネルギー基本計画で、二〇三〇年度の全電力量に占める再生エネの比率目標を従来通り22~24%に据え置き再生エネ導入が急速に進む世界との差があらためて鮮明になった。四〇年までに再生エネ100%化への完全移行を目指すポルトガルの現場を歩いた。

(ポルトガル北部ポルトで、竹田佳彦)

ポルトガル北部のダム湖に設置された太陽光発電パネル=仏シエル・テール・アンテルナシオナル社提供

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◆太陽と水 組み合わせ 発電量増、世論も後押し

 水力と太陽光発電を組み合わせたポルトガル北部のアルト・ラバガン・ダムの発電設備。太陽光パネルを水面に置く効果は高い。パネルの冷却効果で、地上に比べて発電効率は4~10%上昇。湖面から水分の蒸発を抑え、水力発電の敵となる藻類の繁茂も抑えられ、「農業用地も奪わない」(仏シエル・テール社のカミーユ・マルリエールさん)。水力発電所に併設したため、太陽光用の土地開発や送電施設も必要なく、投資総額は四十五万ユーロ(約五千八百五十万円)で済んだ。

 ポルトガル電力関連会社の事業責任者ミゲル・パテナさんは「太陽光パネルのおかげで、電力需要に合わせて水力発電の放水をしなくて済む時が出てくる。その分を次回の発電に取っておくことができます」と解説する。再生可能エネルギーは天候や季節に左右されやすい。複数の発電源が補完的に働くことによって、電力をより安定的に供給できる。

 ポルトガルでは第二次大戦後間もなく原発の研究が始まった。実験施設の建設は一九五〇年代から進み、五九年には国内最大規模のウラン鉱床が見つかった。だが、アンゴラ、モザンビークなどアフリカの植民地の独立戦争に追われ、経済は疲弊。商業炉建設は進まなかった。

 長く続いた独裁政権が七四年に軍事クーデターで倒れると、二年後に初めて公表された原発建設計画に対する反対運動が一気に広がった。七九年三月の米スリーマイル島原発事故で反対運動はさらに拡大。原発はタブー視され、政府も石油や天然ガスの輸入に頼らない国産エネルギーとして、南北に長い海岸線を生かした風力や水力発電を進めてきた。

 今年三月には、国の全人口約千三十万人の月間消費量の100%相当を再生可能エネルギーで生み出すことに成功。例年は風力が24%、水力が25%程度だが、四倍近い降水量をもたらした暴風雨がそれぞれ42%、55%に押し上げた。年間日照時間が日本の約二千時間程度に比べて格段に長く、二千五百~三千時間とされる太陽光にも期待がかかる。

6月、ダム湖面の太陽光パネルを説明するミゲル・パテナさん=竹田佳彦撮影

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 非原発を求める国民の声も大きい。隣国スペインには原発計七基があり、うちポルトガル中部との国境近くにある原発には、たびたびポルトガルの市民団体が抗議に訪れる。北部の街ポルトで働くラケル・エイラスさん(27)は「事故が起きたら、スペインだけの問題じゃない」と懸念を示す。「世界で事故が起きているのに、安心なんてできない。イベリア半島から無くしてほしい」

 一方で「電気代が高い。少しでも安くなるなら原発でも構わない」との声も。リスボンの下町でクラスパウラ・フェルナンドスさん(52)は「原発を持ってないなんて知らなかった。生活が厳しいから、少しでも安くなれば」と漏らす。

 ポルトガルは二〇一一年、財政危機に陥り、欧州連合(EU)に金融支援を要請。その後、財政再建を進めて立ち直りつつあるが、家賃や光熱費、食費などが軒並み上がり、「原発なら安い」と信じる住民も多い。

 だが、ポルトガル電力のテイシェイラさんは「原発は高い」と言い切る。「建設や解体、極めて長期間になる放射性廃棄物の管理など、維持費は膨らみ続ける。原発を放棄した選択は正しかったのです」

 

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