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嵐山町に稼働した「自家用の水上太陽光」、アップル「再エネ100%」も追い風

2018年2月21日

埼玉県の中部にある比企郡嵐山町のため池「大沼」の水上で、出力約318kWの太陽光発電所が2017年12月に稼働を始めた(図1)。

図1●出力318kWの水上太陽光発電所
左に見えるのが太陽インキ製造の本社工場(出所:日経BP)

 嵐山町は、東松山台地や外秩父山地に囲まれ、歴史的に農業が盛んな一方、関越自動車道が通り、嵐山小川インターチェンジを有するなど、交通の便に利点があり、工場や物流施設が多く立地する。

大沼は、そのような地域を象徴する場所の一つと言える。農業用のため池である大沼の隣には、太陽ホールディングスグループの太陽インキ製造の本社工場が建っている。同社は、プリント基板で使われる絶縁材である、「ソルダーレジスト」の大手として知られる。

ソルダーレジストは、プリント基板上で導電部以外の場所を覆い、正確に絶縁する役割を担う。はんだが所定の場所以外に付着して導通し、短絡を引き起こすことを防ぐ。太陽インキ製造は、このソルダーレジストの市場シェアで世界トップの企業である。

大沼に稼働した「嵐山大沼水上太陽光発電所」は、グループ会社の太陽グリーンエナジー(嵐山町)が開発・運営している。

発電した電力は、隣接している太陽インキ製造の本社工場で自家消費されている。

発電とともに、材料の参入の可能性を探る

太陽ホールディングスでは、当初、温暖化や化石資源の枯渇対策など地球環境保全の一環として太陽光発電の検討を始めた。固定価格買取制度(FIT)のスタートによって、事業性が高まったことから、太陽光発電の開発・運営を手掛ける子会社、太陽グリーンエナジーを2014年2月に設立し、発電所の開発に取り組んできた。

太陽ホールディングスが太陽光発電に参入した目的は、地球環境保全と発電事業による収益確保のほか、もう一つある。太陽インキ製造をはじめとするグループとして、太陽光発電向けの新たな材料を事業化できないか、検証することである。

ソルダーレジストなどで培った、高分子材料の配合や分散、フォトリソグラフィ、絶縁や導電、接着、熱伝導などの要素技術を生かし、太陽電池の変換効率や耐久性の向上などに寄与できる材料への参入の可能性を探っている。

最近では、次世代型のペロブスカイト太陽電池にも着目しているという。

こうした目的から太陽光発電所の開発を目指すなか、特に配慮した点が、「自然や地域環境への負荷を極力、抑えること」(太陽グリーンエナジーの荒神文彦社長)だった。ここに来て、太陽光発電所の開発に伴い、地域住民から反対の声が出ることが目立ち始めたのも、山林などを活用し、樹木を多く伐採するような場合が多い。

そこで、同社は、ため池の水上を活用する方法に着目した。水上であれば、大規模な土木工事などをせずに開発できる。

副次的な効果として、ため池の水質の改善に寄与する場合もある。また、結晶シリコン型の太陽光パネルを水の上に設置した場合、夏季にパネルの温度上昇が抑制され、高温によるパネルの変換効率低下を防ぐ効果も期待できる。

太陽グリーンエナジーが最初に開発した太陽光発電所も、水上型だった。同じ嵐山町内にある嵐山花見台工業団地に隣接する「第3調整池」の水面を活用した「嵐山水上太陽光発電所」である(図2)。連系出力1MWで、太陽光パネルの設置容量は1.153MWとなっている。2015年10月に稼働を開始した。

図2●嵐山花見台工業団地に隣接する調整池のメガソーラー
出力は1.153MW。嵐山町から借りて設置(出所:日経BP)

 嵐山町から調整池を借り、発電設備を設置した。水面だけでなく、周囲の護岸も借りている。

この水上発電所は、FITを活用している。買取価格は36円/kWh(税抜き)で、東京電力グループに売電している。

年間発電量は、約134万kWhを見込んでいる。初期投資額は、約4億5000万円を要した。

EPC(設計・調達・施工)サービスは、三菱ケミカルエンジニアリング(東京都中央区)に委託した。

同社に決めた理由の一つは、「環境を大事にする施工を提案されたこと」(太陽グリーンエナジーの友部 大・事業推進グループ 兼 クリーンエナジー事業グループリーダー)だった。発電所の施工そのものに対する配慮だけでなく、近隣地域への配慮も含めて、他社にはない提案だったとしている。

また、発電設備については、国産品を指定した。当時はまだ、水上の太陽光発電所の施工例が少なく、設備面で不安もあったからという。

太陽光パネルは京セラ製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。いずれも、三菱ケミカルエンジニアリングの提案による。

水上に太陽光パネルや接続箱を浮かべる部材であるフロートは、フランスのシエル・テール・インターナショナル製を採用した。当時、実績があったのは、ほぼ同社だけだったためだった。

第3調整池の水上メガソーラー(大規模太陽光発電所)では、東隣を走る道路を通る高圧配電線に連系している。道路は池から10mほど高い場所にある。

PCSや連系設備の設置方法がユニークで、この道路から池に降りるような形状の護岸に、ステージのように張り出した台を設け、その上にPCSと連系設備を置いている(図3)。

図3●護岸に張り出した台にPCSや連系設備を置いた
嵐山花見台工業団地の隣の調整池のメガソーラー(出所:日経BP)
 また、水上メガソーラーの開設にあわせて、工業団地内の管理センターに、蓄電池を併設した太陽光発電設備を寄付した。管理センターは、災害時には約150人を収容できる避難所となる場所で、停電時の自立電源として運用できる。

クリーンルームが自家消費の負荷に

次に開発したのが、大沼の「嵐山大沼水上太陽光発電所」(図4)だった。大沼も、第3調整池と同じように、嵐山町から借りて、発電設備を設置した。

図4●右上が太陽インキ製造の本社工場
FITを活用せず、自家消費する(出所:太陽グリーンエナジー)

 こちらは、FITを活用せず、隣の太陽インキ製造の本社工場で自家消費している。発電設備の導入には、環境省系の「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」を活用した。「平成29年度 再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業」の対象に採択された。

工場や事業所などの施設に大規模な太陽光発電設備を設置し、自家消費する場合、一般的に問題となるのが、休業日に電気が余ることである。

土日や祝日などの休業日に、敷地内の多くの設備が止まるような施設の場合、日中の負荷が小さく、太陽光の発電電力をすべて使い切れないことになる。この問題を解消するために、土日祝日のみ、送電線を逆潮流させるといった対策が必要になる。

太陽インキ製造の本社工場の場合、製造しているソルダーレジストなどは、24時間・365日でのクリーンルームの稼働と温度管理が必要なため、休業日における余剰電力の問題は発生しない。

ソルダーレジストなどは、クラス10万のクリーンルーム内で製造・管理され、クリーンルーム内は常に23℃に保たれている。

このため休業日にも空調負荷があり、太陽光発電出力の318kWを大きく超える。年間で見ても、大沼の太陽光発電電力として見込んでいる年約33万3000Whで賄えるのは、工場内の電力需要の約5%にとどまるという。

EPCサービスは、最初の水上太陽光発電所と同様、三菱ケミカルエンジニアリングに委託した。PCSとフロートも、同じようにTMEIC製とシエル・テール製を採用した(図5)。

図5●TMEIC製のPCS(上)、シエル・テール製のフロート(下)
1カ所目と同じメーカーを採用(出所:日経BP)
 太陽光パネルのみ、前回と異なり、中国JAソーラー製を採用した。性能や耐久性、価格とのバランスなどが利点だったという。最初の案件を開発した後、水上向けのパネルを各社が相次いで製品化するなど、開発環境が整ってきたことが背景にある。

電子部品・材料分野に浸透する「再エネ100%」化

工場内や隣接地に太陽光発電設備を設置する際には、施工の際に、工場の協力をどこまで得られるかも課題になる。

一般的に、企業は、本業の運営業務に支障を及ぼすような工事は望まない。そこで、工場内への搬送や施工従事者の通行、施工作業の制約などが課されることになる。屋根上への太陽光発電設備の後付けなどでは、こうした調整に手間がかかる例も多い。

ソルダーレジスト工場に隣接する大沼への設置工事では、逆に、とても協力的だったという(図6)。

図6●施工中の様子
全社的な協力を得て順調に進んだ(出所:太陽グリーンエナジー)

 その原因として、全社的な取り組みという位置付けのほか、電子部品・材料分野の経営環境の変化が大きいとしている。

ソルダーレジストなどの顧客は、プリント基板メーカーなどである。その先の最終的な顧客は、電子機器メーカーとなり、プリント基板は電子機器に組み込まれる。

電子機器メーカーなど、部品・材料メーカーの最終的な顧客となる企業では、自社の事業活動のあらゆる局面で化石燃料の利用を減らし、再生可能エネルギーの活用を増やそうとする動きが加速している。また、事業活動における「再エネ比率」を国際的なNPO(非営利組織)が評価・公表する動きも活発化している。

よく知られているのは、米アップルの取り組みである。自社の事業活動だけでなく、サプライヤーの事業活動にも「再エネ100%」に近づけることを求めている(サプライヤーに再エネ100%化を求める関連記事日本への要望の関連記事)。

こうした企業の場合、今後、納入製品やサービスの品質、信頼性、価格などが拮抗している場合には、サプライヤーの事業活動における「再エネ比率」が採否に影響する可能性も出てきた。

電子部品・材料分野では、この動きが間近に感じられる状況にあるとしている。

例えば、プリント基板の大手であるイビデンが、「アップル向けのプリント基板や半導体パッケージ製品の製造を100%再エネ発電電力で賄う」ことをアップルに公約している(アップルの発表の関連記事イビデンの関連コラム)。

サプライチェーンにおける再エネ比率の向上を求めるアップルに対して、イビデンをはじめとする納入企業にとっては、再エネの導入に積極的な有力材料メーカーの存在は、アピール材料になるだろう。

アップルだけでなく、世界的な大手企業全般に、こうした動きは広まりつつある(米国の大手企業の関連コラムリコーの関連記事積水ハウスの関連記事)。このような動きは、部品・材料メーカーにも広がってきている。

こうした経営環境の変化もあって、太陽インキ製造の本社工場の駐車場のうち、大沼に近い側の一部を資材置き場や施工者用の駐車スペースとして活用するなど、施工に際して摩擦が起きるどころか、積極的に協力してもらえたという。

自社グループで独自に取り組んできた再エネの導入に、本業の業界動向がうまく合ってきた状況にあるとしている。

嵐山町で水上太陽光発電所を運営する中で、とくに大きな問題は起きていないようだ。

2018年に入って、関東では例年以上の雪が数回、降っている。2月初旬の降雪では、太陽インキ製造の工場内でも約20cmの積雪を記録した。

しかし、水上に浮かぶ太陽光パネルには、雪が積もった翌日、すぐに溶けたり落ちたりして、発電は通常通りを維持できたという。

水面は、地面ほど冷えることがない。これによって、寒冷期の太陽光パネルの表面は、地上に比べると暖かい環境にあり、そのために融雪が早いのではないかと推測している。

●発電所の概要
発電所名 嵐山水上太陽光発電所
所在地 埼玉県比企郡嵐山町「第3調整池」(嵐山花見台工業団地に隣接)
発電事業者 太陽グリーンエナジー(埼玉県比企郡嵐山町)
面積 約1万3300m2
連系出力 1MW
太陽光パネル出力 約1.153MW
年間予想発電量 約134万kWh
初期投資 約4億5000万円
EPC(設計・調達・施工)サービス 三菱ケミカルエンジニアリング
太陽光パネル 京セラ製
パワーコンディショナー(PCS) 東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(出力500kW機)
フロート シエル・テール・インターナショナル製
稼働開始時期 2015年10月
売電価格(税抜き) 36円/kWh
売電先 東京電力グループ
●発電所の概要
発電所名 嵐山大沼水上太陽光発電所
所在地 嵐山町大字平澤字北山「大沼」(太陽インキ製造・本社工場の隣接地)
発電事業者 太陽グリーンエナジー
PCS出力 300kW
太陽光パネル出力 約318kW
年間予想発電量 約33万300kWh
初期投資 約8600万円
EPCサービス 三菱ケミカルエンジニアリング
太陽光パネル JAソーラー製
PCS TMEIC製(出力100kW機)
フロート シエル・テール・インターナショナル製
稼働開始時期 2017年12月
送電先 太陽インキ製造・本社工場(自家消費)

 

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