2017年10月30日
中国の太陽光パネル大手が日本市場に相次ぎ進出している。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)の見直しで、メガソーラー(大規模太陽光発電所)向けに低価格品が求められるようになり、商機があるとみたためだ。日本のパネル各社は一段と窮地に陥り、現地企業がほぼ一掃されたドイツと同じような境遇に立たされる。
太陽光パネル世界8位の中国ライセンエネルギー(浙江省)はこのほど日本市場に参入した。都内にオフィスを構え、メガソーラーを運営する大手への営業を始めた。
なによりも強みなのは価格だ。市場では中国メーカー製パネルは日本メーカーの3分の2程度と一般的に目されている。
「日本メーカーの価格は気にしていない」。ライセンの王洪社長は日本市場での競合が中国を中心とした海外勢になるとみる。輸入にかかる費用を含めても日本勢より大幅に安いのは、圧倒的に大量生産するからだ。
寧波市などにあるライセンの組み立て工場で生産するパネルは年間450万キロワット分。基幹部品である太陽電池は内製し、日本の需要の6割に相当する量を1社で作り、コストを引き下げる。日本への輸出では年間30万~50万キロワット相当のパネルを販売する目標を掲げる。
世界最大手のジンコソーラー(上海市)や同2位トリナ・ソーラー(江蘇省)など、数年前から日本に進出する同業があるなか、「長期保証やサポート体制で違いを出していく」(ライセンの王社長)という。
安かろう悪かろうという中国製のイメージは過去のものになりつつある。世界10位のロンジ・ソーラー(陝西省)も今春、日本で営業を始めた。発電効率が従来より1割ほど高い「単結晶」と呼ぶ素材を使う高機能パネルで急成長した。
9月に初来日した李文学社長は「毎年の売上高の5%を研究開発費に充てている。技術で日本勢に負けない」と話した。日本法人の体制は5人程度だが年度内に倍増させる。2018年に日本で年間40万~50万キロワット分のパネル販売を目指す。
FITが始まった12年以降、日本で太陽光発電所が急増した。買い取り価格は5年間で約半値に下げられ足元のパネル出荷量は前年割れが続く。太陽光バブルと呼ばれた活況は見る影も無い。
さらに市場を厳しいものにするのが今月、出力2千キロワット以上のメガソーラーを対象に始まった入札制度だ。1キロワット時21円という従来価格で買うのではなく、売電価格を安く提示した発電所の案件から政府が優先的にFITの認定を与える。事業者間の競争で売電価格を低減する狙いがある。
発電事業者が安い価格を示すには、発電所をつくるコストをより安く抑えざるを得ない。そこに中国企業が入り込む余地が生まれる。
日本の太陽光発電の導入コストは欧州の2倍と言われる。高い買い取り価格に寄りかかり、複雑な流通構造や日本製パネルの積極採用など高コスト体質が続いた。だが入札制度などFIT見直しで「国産パネルを優遇する発想は今やない」(大手の発電事業者首脳)。
00年代後半まで世界の太陽光パネル市場で日本メーカーは上位を独占していた。今は中国勢にシェアを奪われ、京セラは三重県の組み立て工場を休止。昭和シェル石油系のソーラーフロンティアは国内工場を集約し、社員の1割に希望退職を募った。
ただ消費者が日本ブランドを好む住宅用は依然日本メーカーが強い。「屋根材のような建材一体型パネルなど特徴的なものしか日本製は生き残れない」(住宅メーカー幹部)との声が聞かれる。
再生エネ導入で先行するドイツ。パネル大手ソーラーワールドが今年5月に破産手続きに入った。かつて世界首位だった独Qセルズは12年に破綻し、韓国ハンファグループの傘下に入った。ドイツに工場はなく開発拠点を残すのみだ。ドイツ市場は中国製などアジアの低価格品が押さえた。世界で戦えなくなった日本製太陽光パネルはドイツと同じように自国の市場を奪われる可能性が高まっている。(大平祐嗣)
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