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一変した卸電力市場、電気事業者の切実な願い

2018年4月9日

 2月までの厳しさが一転し、3月の卸電力市場は穏やかさを取り戻した。取引量も急増し、その姿は自由化が目指す本来の市場のあり方を指し示す。市場の健全さが高まれば、需要家は自由化のメリットを最大限に享受できる。

 2018年3月、日本卸電力取引所(JEPX)における前日スポット価格は前月から一変した。それまでの厳しい展開が嘘だったかのように、電力市場価格は低位で安定した(グラフ1)。

3月は一転して穏やかに
グラフ1●2~3月の東京・関西の価格の推移(出所:日経エネルギーNext電力研究会)
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2月は30数年ぶりという寒さを各地で記録した。これに、一部の旧一般電気事業者の「燃料制約」(LNG調達量不足)や「大型電源の事故停止」が重なり、電力価格の高騰が続いた。冬の電力価格は、オフィス需要が高まる時間帯(7~10時)や夕方の電灯需要が高まる時間帯(17~21時)に20円/kWhを超える高値が恒常化した。1月下旬から2月上旬にかけて30~50円/kWh台という超高値も出現した。

だが、3月は2月までと打って変わって、気温が例年より高めに推移した。下旬にかけて、3月としては観測史上の最高気温を、全国の2割以上の地点で記録。下旬にかけて晴天が続いたことで太陽光による発電が増えたことも、限界費用の安い電源の売り入札を促した。大型電源の脱落はなく、むしろ関西電力・大飯原子力発電所や九州電力・玄海原子力発電所の再稼働が価格の低位安定にも貢献したと思われる。

こうした状況を踏まえて、JEPXにおける売買入札量や約定量などの推移を総括しておきたい。

グラフ2はJEPXにおける前日スポット市場の売り入札量だ。

3月になって売り入札量が前年比3倍近くまで上昇しているのが分かる(前年同日比。曜日の調整はしていない)。タイミングによっては、5倍近くの日もあった。一方で、買い入札量の方は着実に増加し、足元で2.5倍近くに増加している(グラフ3)。

3月の売り玉は前年の3倍
グラフ2●スポット市場の売り入札量の推移(出所:日経エネルギーNext電力研究会)
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足元は買いも前年の2.5倍
グラフ3●スポット市場の買い入札量の推移(出所:日経エネルギーNext電力研究会)
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約定量も3月になって増加のペースを上げ、3月30日渡しはついに3.5憶kWh/日を超えた。前年比で4倍を超え、日によっては6倍近い(グラフ4)。

1日の約定量が3.5億kWhまで増加
グラフ4●スポット市場の約定量の推移(出所:日経エネルギーNext電力研究会)

 天候などに起因する今冬の高値の諸要因が剥落したら、2018年度に市場が向かうべき方向感がよりクリアに見えてきたのではないか。

いわゆる人為的なオペレーションの結果である燃料制約や電源脱落が無ければ、ありのままの電力需給の姿が浮かび上がる。電力需給には純粋な経済活動、あるいは人口減少や東日本大震災以降に顕著になった節電志向などの需要動向の実態も反映される。そうした自然な環境下における適正な電力価格こそ、需要家が本来享受すべきメリットだ。

足元の売り入札量や買い入札量の増加は、17年度に大手電力が自主的取組として始めたグロスビディング(自社需要向け電力の一部を市場を介した自己売買で受け渡すこと)の影響を無視できないのではないかという見方もあろう。目標達成に向けた年度末の駆け込みが生じている可能性はある。

ただ、グロスビディングは限界費用ベースで売買両建て入札を行っている限り、市場価格への影響は中立と考えていい。その意味で、この3月の価格水準は、グロスビディングという特殊要因の影響と考える必要はないだろう。

一方で、1時間前市場の出来栄えはどうか。グラフ5は、1時間前市場の約定量推移を示している。まだまだ約定量は少ない。前年と比べて足元は減少しているくらいだ。

活性化の課題残る1時間前市場
グラフ5●1時間前市場の約定量推移(出所:日経エネルギーNext電力研究会)

停止火力が増え続けている

2020年には、一般送配電事業者が最終的な需給調整に必要な電源を市場機能を使って調達する需給調整市場が立ち上がる。需給調整市場の直前まで開いている1時間前市場はその橋渡し役として位置づけられることになる。小売事業者や発電事業者にとってはこれまで以上に、とりわけ需給逼迫時には1時間前市場での取引が大きな意味を持つことになるだろう。

1時間前市場の活性化は大きなテーマだ。電力・ガス取引監視等委員会などの当局には、その時に向けて、1時間前市場の育成を意識した、より積極的な玉出しのルール化や監視を望みたい。

もう1つの着目すべき足元の変化は、停止火力残高の推移だ。ここでいう停止火力残高とは、停止している火力発電所の出力の合計だ。グラフ6は、2016年度、2017年度、および2018年度の初期の停止火力残高をJEPX発表のデータからエリア(電力会社)ごとに積み上げた。

これを見ると、4~5月の電力需要の端境期(減少期)における停止火力残高は、年々増加している。JEPXの売買入札量が足元で伸びている中で、停止する電源が増えている状況はしっかり認識する必要がある。

増える停止火力
グラフ6●停止中の火力発電設備量の推移(出所:日経エネルギーNext電力研究会)

 グロスビディングは、大手電力の発電部門から小売部門に渡す電力量の一定割合について、JEPXを通じて両建てで約定させる行為である。発電部門から小売部門に市場を介して電力を渡す取り組みが始まったのだから、売買入札量が増えたのは自然の流れだ。今後も増えていく余地がある。

ただし、本コラムでも既に取り上げたとおり、新電力に顧客を奪われるのに伴い、大手電力がバランス停止(1週間単位の停止)させてしまう電源や、長期停止させてしまう電源が増加していることも忘れてはならない。足元の停止火力残高は計画停止(定期点検など)によるものも多いし、原子力再稼働に合わせて調整されている電源もあるだろう。しかし、東京や中部といった需要が旺盛なエリアで停止火力残高の増加が顕著なのは注意を要する。

電力自由化が進展する中で、停止火力の再稼働は喫緊の課題だ。

電力は経済活動や生活を支える血液である。需要家の購入先が大手電力から新電力に切り替わる中、大手電力が保有する電源が市場を介してうまく新電力にシフトしなければ、電力の“循環”に支障が生じる。大手電力の需要(顧客)が減ったからといって、全体の電力需要がそこまで減るわけではないのだ。

望まれる市場化の流れの後押し

政策・監視当局は、足元の市場の動きをよく観察し、タイムリーに施策や対策を打つ必要がある。

実需給の1日前に電力を売買するスポット市場だけでは、売り手も買い手も、価格や量の長期的な見通しを持ちにくい。売り手(大手電力)から見れば電源を稼働させるか、停止させるかの判断が難しい面もあるだろう。

現在、自然発生的に徐々に始まっている大手電力の発電部門と新電力との間の相対取引や、使い勝手などからこれまであまり顧みられてこなかった先渡市場の活性化は、スポット取引が活発化してきた今だからこそ市場関係者のニーズも切実なものになっている。

資源エネルギー庁は競争促進の観点から、ベースロード電源市場など新たな市場の設計に力を入れている。しかし、成長し始めた本来的な市場化の流れを推し進めることの方がより自然であり、より本質的だ。かつての総括原価方式に戻れない以上、スポット市場に加えて先渡市場や相対取引といった既にある基本的な市場取引の拡大を後押しする政策こそ、大手か新電力かを問わず、電気事業者が切望していることではないだろうか。

 

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